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\ 自称 / 世界で一番愛らしい弟子っ!  作者: 二木弓いうる
~チョコレート・クライシス編~
13/251

弟子、痴女に舐められる(物理)

気にはなったが、強がったピーリカは女から顔を背ける。


「しなくていいです。別に師匠の事などどうでも良いですからね」

「でもピーリカ嬢、このまま師匠に彼女出来たら嫌なんじゃない?」

「どうでもいいですけど……他の女が現れたらわたしは見捨てられてしまうのですか? それはちょっと困るですよ」

「絶対大丈夫とは言い切れないかなー」

「そんな……」


明らかに気を落とすピーリカを前に、女はある事を思いついた。


「ピーリカ嬢、良い事教えてあげよっか。男をドキドキさせる方法」

「男を……」


ピーリカはピピルピから男をメロメロにする魔法を騙され教わった事ももう忘れている。

女は両手でピールサインを作って。


「うん。師匠さん相手でもイけると思うよぉ」

「だ、だめです。わたし今ニャンニャンジャラシー探すのに忙しいんです。それにわたしは別に師匠の事なんてどうとも思ってませんもん」

「ニャンニャンジャラシー? あー、なんかそんなような名前の草、うちの庭に生えてたわ」

「……ほんとですか?」

「うん。なんかこう、先がフワフワしてるやつっしょ?」

「そうです。よこせです!」

「いいよー。んじゃ今からうち行こっか。ついでだから、やっぱり男をドキドキさせる方法聞いて行けばぁ?」

「……そうですね。ついでですね。話聞くだけですからね!」


騙されているピーリカは大人しく女について行く。



 ピピルピの家と似て、両隣がホテルになっている女の家。ただ城の形ではなく、縦長のホテルだったためピーリカはさほど興味を示さない。

小さな庭には、確かにニャンニャンジャラシーらしき白い植物が生えていた。


「これです!」

「いいよ、勝手に生えたやつだし。好きなだけ持ってて」

「ほう。貴様いい奴ですね。礼を言ってやるですよ」

「嬉しみー。んでもさぁ、その前に家ん中入って。お話ししよーよ」

「話聞くだけならお外でも出来るでしょう」

「オシャレにするんだから鏡の前の方が良いんだよぉ」

「……オシャレ?」


いくら口や態度が悪くても、根は女の子のピーリカ。ステキなワードに、心が揺れ動く。


「そそ。それもドキドキさせる方法の一つね。別に見た目が全てじゃないけど、着飾るのって悪い事じゃないじゃん?」

「そう、ですね。試してみる価値はあります」


家の中に招かれ、ピーリカは女の部屋へと入る。


ベッドもクッションも、クローゼットにドレッサー、全てがピンク色。女は壁に立てかけれたスタンドミラーの前にピーリカを立たせた。


「んじゃ、まずお洋服着替えよっか。うちのお古だけど、ピーリカ嬢ならサイズぴったりだと思うよぉ」


クローゼットを漁り、子供用の洋服を出してきた女。ピンク色のワンピースを見せる。


「これとかどう?」

「ほう、悪くないですね」

「着てみなよぉ。はい、バンザーイ」

「自分で着れます。脱がそうとするなです!」


ピーリカは怒りながら黒いワンピースを脱ぐ。一瞬白のキャミソールとお子様ぱんつ姿になり、その上にピンク色のワンピースを着る。

ミラーに映る自身を見て、ピーリカは満足気な表情になった。


「やはり美少女は何着ても似合いますね。いつもの黒いワンピースも悪くないですけど、わたしにはこういった服も似合うのですよ。師匠もママも、汚すから黒着とけだなんて。そんなの決めつけなのです」


ジッとピーリカを見つめる女。惚けた様子で、口からよだれが垂れている。


「愚民? 何ですその顔」


ピーリカは名前を知らない相手を大体愚民と呼ぶ。女はハッとした表情をして口元を拭きながら返事をした。


「あぁいや、女児のストリップ最高、じゃなくて。他のも着てみてほしいなって。これとかどう? 美少女のピーリカ嬢なら絶対似合うよ!」

「わたしに似合わない服などありません。美少女ですから」


誤魔化されているピーリカはヒョウ柄のキャミソールを渡される。ピンク色のワンピースを脱ぎ、キャミソールの上にヒョウ柄のキャミソールを着る。


「ものは悪くないですが、下着のキャミソールが見えてしまっていますね。これはちょっとおかしい気がします。間にTシャツが欲しいです。ないですか」

「ないねぇ。もう素肌にヒョウ柄キャミで良いんじゃないかな。いっそ脱ぎなよ。全部。ぱんつも」

「じゃあこの服着ない!」


ピーリカはヒョウ柄のキャミソールを脱ぎ、怒りと共に床に叩きつけた。流石に騙されなかったようだ。

女は逃がさないと言わんばかりに、次の服を出してくる。


「あぁごめんねピーリカ嬢。じゃあこっち。これならその上から着れるし、重ね着の必要ナッシング」


ピーリカは頬を膨らませながらも、女が持つ服をジッと見つめた。


「少し子供っぽいのでは?」


子供が何を言っているのだろうか。そう思いながらも女は首を横に振る。


「かわいいじゃん。ピーリカ嬢はただでさえかわいいんだから、これ着たら最強だよぉ」

「最強かわいいですか。じゃあ」


ピーリカは女から服を受け取る。フワフワしたピンク色の、フード付きつなぎ服。足を入れ、両腕を通す。腹部から胸元についているボタンを留めて、耳付きのフードをかぶる。

ミラーの前に現れた、一匹のうさぎ。

女はピーリカに抱きついた。


「はぁ~~、持って帰りたい。あっ、もうここ家だわ。持って帰ってるようなもんだわ」

「離せです!」

「このままぬいぐるみとして暮らさない?」

「帰る!」


ピーリカはフードを外し、着ぐるみを脱いだ。元の黒いワンピースを手に取ったピーリカを女は必死になって引き留める。


「あぁ待って待って。んじゃ最後に、とっておきの着てみてよ!」

「今度は何ですか。猫ですか、犬ですか。もう着ません。早く帰って師匠のお世話しなきゃなのです」

「ほら!」


ピーリカはため息を吐いて、女の手元を見た。だがその手には、何もない。


「……何です?」

「……えっ、まさかピーリカ嬢、これが見えない? これ美少女にしか見えないドレス。うちが着れてたのに、まさか超美少女のピーリカ嬢が見えずに着れないなんて事ないよね?」

「……貸してみなさい」


ピーリカは騙されている。


ドレスを受け取ったふりをするピーリカだが、そもそも見えないし、持った実感すらない。何となくワンピースの要領で着てみたものの、やっぱり何もないように思える。ただそれは自分が美少女ではないと言われているようで、認めたくもない。


「どうです?」

「すっごい似合う」

「もう少し褒めてください。ドレスのどんな所がわたしに似合うのか」

「えっ、んー。まず黄色じゃん? ピーリカ嬢明るい色も似合うよね」


ピーリカはどう自分の姿を見ても、白いキャミソールにぱんつ姿だ。黄色のドレスなんて見えなかった。


「……他には?」

「袖の長いドレスからちょこんと出ているおててがラブリー。あとあんよも」


肩も二の腕も、太ももさえ見えている。ちょこんどころか、がっつり出てる。

どうしても見えないが、やはり認めたくないようで。


「ふむ、まぁ悪くないかもしれませんね!」


堂々と下着姿でミラーの前に立つ。

女は己の欲のため平然と嘘をつく。


「うんうん。あ、そだ。せっかくだから髪もイジろ。ピーリカ嬢いっつも降ろしてるじゃん。たまには結んでみようよ。そのドレスも髪結んだ方が似合うかもだしぃ」

「ほ、ほう。まぁ少し試してみるのも悪くないかもしれませんね」


否定してしまえばドレスが見えていないと感づかれてしまうかもしれない。そう思ったピーリカは大人しく女の言う事を聞く。

女はピーリカをドレッサーの前の椅子へと座らせた。ブラシで梳かし、髪ゴムで括られる。


「ほら、かぁわいい」


ツインテールにされたピーリカ。ドレスは見えなかったが、これは見えた。

かわいい、かわいすぎる。なんて可愛いんだ。まるで天使だ。

たっぷり自画自賛しながらピーリカは鏡を見つめた。


「まぁ悪くはないですね。でも他に似合う髪型もあるかもしれません。特別です。貴様にわたしの髪をアレンジする権利を与えます」

「やったー、うち色に染めたろーっと」


ほどいては結び、ほどいては結び。

ポニーテール、三つ編み、お団子頭。

ピーリカは色々な髪型を試した。そしてその度にうっとり。


「どれもこれも似合いますね、流石わたし」

「うんうん。鬼かわすぎて……食べちゃいたいよねぇ」


女は目の前にあるピーリカのうなじをペロっと舐めた。生暖かい舌の感触に驚いたピーリカは、急いで鏡の前から離れる。


「ひょあぁああああ!」

「逃げないでよピーリカ嬢。もっとすごい事しよーよォ」

「嫌です! くそぅ、痴女と違って服着てたから油断してたです」

「うち、この下ノーパンだけど?」

「貴様も痴女か!」

「だってどうせ脱ぐのに面倒じゃん」

「面倒でもパンツは履けです。常識です。恥ずかしくないんですか!」

「全然」

「頭おかしいです。もういい、もうニャンニャンジャラシー貰って帰るですよ。貴様なんぞ用済みです!」

「ひっどい。でも分かってるかんね。実を言うと心の中ではうちの事めっちゃ好きっしょ?」

「好きじゃないです!」


髪を解いたピーリカは、黒いワンピースを小脇に抱え外に飛び出した。空はすっかり暗くなっていたが、隣のホテルがやたらと明るかったおかげで周囲を見渡す事が出来た。

庭に生えていたニャンニャンジャラシーを摘んだピーリカは魔法の呪文を唱え、誰のものだか分からないほうきを召喚する。右手に草を持ったまま、ふわりと空に浮かぶ。

流石に飛ばれてしまっては追いかけるのも大変だ、と諦めた女は下がり眉になりながらも笑顔で手を振った。


「あーあ、残念。また来てねー」

「来ません!」


逃げたピーリカは、空を飛びながら黒いワンピースを着る。


「モコモコしないし、やっぱりドレスなんて嘘だったのですよ。それにもし本物だったとしても、美少女ではない師匠にはきっと見えなかったのです。あやうく師匠に下着を見せつける所でした」


怒りながら暗くなった空を飛び続けた。

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