小説に縛られる
予想していた通りペースが崩れ始めた。基本的には短編しか書けない事もあって、一か月に一度の投稿ペースで数年間は続けてこれていた。守ろうと思ってやってきた事ではなかったし、思いついたら書くというやり方だったからそんなつもりもなかったものの、習慣に近いものだったので、それがあっけなく崩れた瞬間は仕方がないな程度にしか思わなかった。
仕事は年々忙しくなった。環境が大きく変わったりもした。趣味は現実逃避とまではいかないが、一つのストレス発散の作業でもあった。つまりは代替がきくという事だった。
忙しくなる中でもっと時間を取らず、その場で出来てしまう趣味に比重を置くようになった。動画の配信が出来るようになったのが一番大きかった。ずっとやってみたい事が出来てすっかりそちらにハマってしまった。より手頃な趣味で満足するようになった。
とはいえ書く事をやめはしなかった。それでも急にふと話を思いついたりする時はあって、その時はざざっと文章に起こして投稿を続けた。
ただ明らかに雑になったなとは感じている。もともと緻密なプロットを立てて書くタイプではなく、穴だらけな作品も多いがより勢いに任せて書くようになってしまったと思う。
それでも書くのはなぜなのだろう。
楽しいからか。惰性でやっているのか。別に続ける意味はない。でも一つ自分の中にやはり鎖になっているものはある。
唯一の書籍化作品。
元は完結した短編ものだった。絶対に結末が予想できない話を書いてやろう。そんな意地悪で軽はずみな気持ちで出来た話。今までで一番気軽に書いた話が皮肉にも一番ウケた。
あれ以来ずっと、あの作品を超えるものを書きたいという気持ちがあった。そんな余計な気持ちがどこかで自分の邪魔をした。
関係ない、気にするなと思いながら「あぁ、このオチじゃ弱いな」と自分の中でがっかりする。書き続ければいつかまたあんな話が書けるんじゃないか、きっとどこかでまだ自分に期待している。しかし残念ながらいまだに自分で自分を超えられていないままだ。
自分でやりたいからやっている事なのに、自分自身にどこかで縛られている。
滑稽だなと思う。そんなものなら辞めてしまえばいいのに。
でもまだ自分は辞めたいとは思わない。まだ支えがあるから。本当に辞めるのは支えが何もなくなった瞬間だ。
書く事をやめて困る人などいない。その時が来たらその時だと思う。趣味何てその程度でいいと思う。楽しくないなら辞めてしまえばいい。それだけの事だ。