乃愛×真白 ~のあまし~
人間の女の子って怖いというお話です。
今日は、乃愛ちゃんが私の家に遊びに来る。
最近分かったことだけど、乃愛ちゃんの家は私の家と近いらしく、最寄り駅も一緒なのだ。
水曜の今日は、授業が4限で終わるから、遊ぶ時間は沢山ある。
私は乃愛ちゃんに手を引かれ電車に乗り、数駅先の自宅の最寄り駅で降り、そのまま手を引かれて私の家まで帰ってくる。
乃愛ちゃんは、既に私の家には何回も来ている常連だった。
私の部屋は、元ドラゴンだったせいか、そこまで女子っぽい部屋ではないと思う。
部屋には今まで様々な大会で取ったトロフィが飾られていたり、漫画やゲームが置いてある。
どっちかというと、男っぽいのかもしれない。
まあ男の部屋とか、お父さんの部屋しか知らないけど。
「何回来ても、真白ちゃんの家も部屋も広いね!」
「そうだねぇ。両親には感謝しないとだよ。」
「あと、真白ちゃんの部屋は良い匂いがするよねっ!」
「そう?特に何もしてないんだけど。」
「うん!真白ちゃんの匂いがする!」
「ホントに?」
魔法で消臭した方が良いか…?
「うん!甘い匂いで、安心する感じ。」
「そっか。」
「私はこの匂い好きだよ。ずっとここにいたいぐらい。」
「あははっ、それは無理だよ。あ、でも、お泊まり会とかしたら、1日ぐらいならいられるよ。」
「お泊まり会?」
「そう。乃愛ちゃんが私の家に泊まりに来て、一緒にご飯食べたり、寝たりするの。」
「いいね!じゃあ今日泊まってく!」
「それはちょっと…明日も学校だしね。またお母さんに話しておくから、明日学校で決めよ?」
「うぅ…わかった!私もママに言っとく!」
「うん、お願いね。それで…今日は何する?あ、宿題先に終わらせよっか。」
「そうしよ!真白ちゃんとやると、宿題がすぐ終わるもんね!」
「乃愛ちゃんが真面目に頑張るからだよ。じゃあ始めよう!」
「え、真白ちゃんもう宿題終わったの?」
「うん、簡単だったし。」
「すごーい!私も頑張るね!」
「うん、頑張ってね。」
「さて、宿題も終わったけど、何しようか?」
「まだ3時だし、2時間は遊べるね!」
「そうだね。うーん…何したい?」
「えっと…じゃあお話しよっ!」
「お話?」
「そう!」
「何を喋ろう?」
「あ、私が話すね。
あのね、昨日お姉ちゃんが読んでた雑誌を、私も一緒に読んでたの。じゃあ、皆幼稚園の頃にはチューしたことがあるんだって!」
「へぇ、そんな早いんだ。」
最近の子どもはませてるねぇ。
「でねっ、学校で桐ちゃんに聞いてみたら、桐ちゃんも幼稚園の時に友達とチューしたことがあるんだって!」
「へぇ、桐ちゃん凄いね。」
「だからね、私もチューしてみたいの!」
「…急がなくても良いんじゃない?」
「んーん、したいの!」
「そ、そっか。」
「だから真白ちゃん、チューしよっ!」
「あー、やっぱりそういう流れか…。
えっと、チューはあんまり女の子同士じゃしないんだよ?」
「でも、お姉ちゃんは毎日彼女とチューしてるって言ってたよ?」
「…なるほど。」
真白ちゃんのお姉さんって、うちの学校の卒業生で、そのままエスカレーター式で中学にいった人だよね?中学も女子校だし…お姉さん、妹に何を教えているんですか…。
別に、異世界にもそういう人はいたし、私も何回か告白されたけどさぁ…。
おかしいって否定するわけじゃないけど、小学生の妹に教えるのはやめようよ…。
「えーっと、チューってね、本当に好きな人で、恋人とするものなんだよ?乃愛ちゃんのお姉さんも、多分彼女さんとチューしてるんじゃないかな?」
「あ、うん。お姉ちゃんも彼女とって言ってたよ。」
「でしょ?だから、乃愛ちゃんも恋人が出来てからで良いと思うなぁ。」
「でもぉ…あ、良いこと思いついた!」
「そっ、そっかぁ。よかったねぇ。」
うわぁ、嫌な予感しかしねぇ…。
「真白ちゃん、私の彼女になって!」
デスヨネー。
「え、えっと、恋人はそんな簡単に作らない方が良いよ?本当に好きな人となるものだから。」
「でも私、真白ちゃんのこと大好きだよ?」
首をかしげながら言うのってかわいいね。
「あ、えっと、好きって言っても、友達としてでしょ?」
「んー?好きだよ?」
「えっと、好きって言ってもね、友達としてと、恋愛対象としての好きがあるんだよ。」
「それってどう違うの?」
「え、えっと、恋愛対象としてっていうのは、チューしたり、一緒に住んだり、結婚してもいいって思えるって事だよ?」
「私、真白ちゃんと結婚するよ?」
「…ん?今なんて言った?」
「えっと、私、真白ちゃんと結婚するって言ったよ?」
「ほう…。」
人間の女の子怖い。いつの間にか結婚するのが決まってたんだけど。
「で、でも、私そんなの初めて聞いたよ?」
「え、この間言ったよ?じゃあ、真白ちゃんも、うんって返事したし。」
「…え?嘘でしょ?」
「忘れたの?先週家に来たときに、うんって言ってくれたじゃん。」
先週…あ、夜更かししてゲームしたせいで眠たかった日のことか。
あの日は凄く眠たかったのに、どうしても家に来たいって乃愛ちゃんが言ったから、結局遊びに来たんだよね。
その時に確か数分だけ、うとうとしてた時があったはず。
…え、あの数分のうちにそんな大事な話してたの?しかも、私も返事したの?
「あ、えっと…そうだった気もする…かも?」
「言ったよ。だから、高校生になったら結婚するの。女の子は16歳で結婚できるって、お姉ちゃんが言ってたし。」
「あ、でも、法律的には認められてないし…。」
「お姉ちゃんがね、そんなの関係ないって言ってた!人間はみんな幸せになる権利があるから、本人が結婚したと言ったら、もう結婚なんだって!」
「ほう…。」
1度、乃愛ちゃんのお姉さんとお話したくなってきたね。
「えっと…。」
「ねぇ真白ちゃん。チュー…しよ?」
「…ふぅ。」
なんか乃愛ちゃんから、すっごい小悪魔オーラが出てる。
女の子怖い。7歳だと思えない。私が元ドラゴンで、女じゃなかった危なかったよ?
「真白ちゃんはチューしたことあるの?」
「え?えっと…あるね。」
前世で。あの時もこんな風に、人間に変身した私のことが大好きだった女の子に言われて、そのままキスした。
いや、あの時は、ドラゴンの私がべろんべろんになるまで飲まされた後だったね。
びっくりしたよね。朝起きたら、二人とも同じベッドに寝てたんだから。
あいつは、その後も私に付きまとってきたなぁ。まあ…あれはあれで楽しかったけど。
「そうなんだ。じゃあ、私ともしよ?」
「いや、でも…。」
「だって、真白ちゃんは私と結婚するのに、私以外の人とチューしてるのおかしくない?
そういうのって浮気って言うんだよ?」
「そもそも浮気じゃないし…。」
「早くしよ?目つぶってよ。」
「え、ちょっとっ!」
乃愛ちゃんが私の足の上に座ってきて、両手で私の頬を捕まえた。
あれ?ヤバくない?
「はやくーーー!」
「いや、でもっ!」
「お姉ちゃんが、チューするときは目をつぶるのがマナーだって言ってたもん。」
「お姉さんまじ許せねぇ。」
「もーっ!もうするからね!」
ぶっちゅう!!!
「んーーーっ!」
チューされた!
思い切りチューされた!
視界いっぱいに乃愛ちゃんの顔がある。
こんなに顔が近いのは初めてかもしれない。
じゃなくって!
ちゅぽん
「んーーーー!!!」
「あ、終わっちゃった。」
「乃愛ちゃん、いつまでチューしてる気!?」
「んー?ずっと?」
「死んじゃうよ!」
「あ、そっか。」
「というか、本当にチューするなんて!」
「だって、したかったんだもん。」
「そ、その顔は卑怯だよ…。」
急に泣きそうにならないでよ…。
「だって、真白ちゃん、目つぶってくれなかったし。」
「だっ、だって、急にしてくるから。」
「真白ちゃん怒ってるし。」
「怒ってはないけどさ…。」
「真白ちゃんは、私のこと嫌い?」
「…嫌いじゃないよ?」
「じゃあ…次は真白ちゃんからチューして?」
「はぁっ!?」
「んー!」
え、乃愛ちゃん目を閉じないで?
しろってこと?
いや、自分からするのは初めてなんだけど。
そもそも、乃愛ちゃん、私の彼女じゃないし…。
うぅ…ずっと待ってるよ…。
…はぁ。
私は、軽く触れるだけのキスをしてあげた。
「もう…これで我慢して。」
「うん…ありがと。これから私は真白ちゃんの彼女だね。」
「…え?」
「だってチューしたもん。9年後には結婚できるね!」
「…うそぉ。」
改めて…人間の女の子って怖いです。
真白の前世を深く掘り下げる予定はありません。
次からもう少しスピードアップさせたいですね。
お読みいただきありがとうございました。
感想や評価、ブックマークをしていただけると私が喜びます。