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指の先から、雫が滴っていた。

作者: 白藤あさぎ

12(つき)戀紬(こいつむぎ)


夏月 6月



指の先から、雫が滴っていた。




僕はそれを止めることができずに…ただ、見ていることしかできなくて。

胸が痛かった。


  悲しいの…?


慣れない声で彼女に尋ねた。まだら模様の服、とてもよく似合ってる。

外の水音にかき消されて聞こえなかったのか、彼女は僕の問いに答えずに、肩を震わせしゃくり上げた。

透明で綺麗な雫だった。細い指の間から、抑えられずにたらたらと溢れさせて、止む気配がない。



雨が窓に当たる。水が弾ける。混じって、流れる。繋がる。流れる。流れて、広がる。



もう元には戻らない。



なのに今更。

君はそんなふうに後悔して、打ちひしがれている。


コレは、君が望んだ結果。


電気もついていない暗い部屋に、雷の光が一瞬裂け入った。水玉模様の部屋が浮かび上がる。窓はしっかり閉まっているのに、部屋の中はまだらに濡れていた。彼女は一際大きな黒い丸の上にいた。僕も同じ丸の上にいた。


あれ…?さっきよりも丸は大きくなってるみたいだ。床に着いた彼女の膝とスカートを黒く汚している。


まだ流れているのか…もう出切ったと思ったのに。

彼女が泣き止めば、コレも、雨も…流れているもの全部止むのかな。


  僕は君の笑った顔が好きだな


いつまでも顔を上げない彼女にそう言った。

まるで僕の声が聞こえてないみたい。

おかしいな…。

いい加減、こんなオトコのために涙を流すのをやめてほしいのに。


だって止めてあげられないんだ。

僕はもう、君に触れられない。

…その綺麗な白い肌を、汚したくない。


触れられないとわかっていても、手を伸ばした。


濡れた床に水音が響いた。



指の先から、雫が、滴っていた。

部 屋 の 中 に は   君 と 、 僕 と …

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