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シャ・ノワールと騒乱の聖歌  作者: 蒔田 椎太
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30.執政会議⑤

「なっ…。」


驚きの声を漏らす聖騎士団長。だがもっと衝撃を受けているのは俺達の方だ。

『あの一件』とは確実に、レオナード達が一年生の時の夏休みに巻き込まれたゴブリン王都侵入事件の事だろう。あれが国家機密に関わる事件とはどういう事だ?

レオナードの動揺がひしひしと伝わって来る。見ればアーノルドも険しい表情だ。


「陛下もご存知の事です。今回の一件とは無関係ですから忘れて下さい。」

「…し、承知致しました…。」


国王とペトロネラ長官に睨まれて冷や汗を滲ませている聖騎士団長。


『蛇に睨まれた蛙だな。』


俺はポソリと呟いたが、そんな軽い冗談はこの重い空気の中で霧散していった。


「話を戻しましょう…。今、長官からお話があった通り、ゴブリンが自らの意思で王都に侵入してくる可能性は低い、と言うことですな?」

「とすれば…、誰かに操られていたか、それとも何か特別な理由があるか…?いずれにせよ第三者の関与があるはず。」

「御二方の仰る通りですわ。」


脱線しかけた話の流れをすかさず元に戻すブノワ長官に、その話を継ぐ王子殿。そしてその二人に鷹揚に頷くペトロネラ長官。なかなか尊大な態度を取りがちな女性だが、誰もたしなめない所を見ると、それに見合うだけの実力があるのだろう。


「先程、地下下水道の大規模な探索を予定している、と仰ってましたが、王都に不慣れな人間がその地下下水道からゴブリンを手引きする事は可能でしょうか?」

「ほぼ、不可能でしょうな。方向感覚も狂うような迷宮じみた場所です。慣れている人間でもどうか…。」


ブノワ長官の問いにグラート将軍が答えた。その答えにフォルテウスが満足そうに頷く。

暗にアルボレス共和国の人間に、手引きをする事は不可能だ、と示しているのだ。


「最も可能性があるのはアクセルマンの嫡子を誘拐した主犯だという奇妙な老人ですかな?親衛隊の面々が撃退したという…。」

「お恥ずかしながら、取り逃がしただけにございます。」


グラート将軍の言葉にアーノルドが恭しく答える。

確かにあの蛸男?ならそれも可能かもしれない。根城に使っていたあの貧民街の建物は地下下水道に繋がっていたようだし。


「報告にあった軟体動物のような奇妙な男か…。」

「先日の競技大会に闖入してきた煙使いの蛇女と同類かと存じます。」


ポツリと呟く国王に苦々しい顔のフォルテウス。

今でこそ、他のアルボレス共和国の話題や火事騒動のお陰で影が薄くなっているが、ひと時前までは王都中、その話で持ちきりだったのだ。何せ、何百、何千という観衆と各学園の生徒がその場面を目撃している。


「とすれば《裏世界》の連中と言うことだな…。」


王の一言に重たい空気が会議室を満たす。

さすがに一国の主人ともなれば、自国に潜む闇の存在も掴んではいるようだ。


「陛下、恐れながらその《裏世界》とアルボレスが繋がっている可能性はございませんでしょうか?もしくはアルボレスという国自体が架空の存在であるとか…。」


食い下がる聖騎士団長に場の空気が一気に白けた。隣のベルトン卿ですら憐れむような視線を投げている。


「凄まじい技術を見せつけ、あまつさえ巨大な船まで用意してそんな茶番を打つ理由がどこにありますかな?我々、親衛隊が信用ならないと言うのであれば、南の地に赴いてご自分で直接聞いて回ってみてはどうですか、団長殿?現地の民も皆、巨大な船を見ておりますからな。」

「…失言でした、お許し下さい。」


呆れたようなダラス先生の言葉に、聖騎士団長は歯軋りをしながら謝罪を口にする。

そこでふむ…、と国王が小さく頷いた。全員の視線がそこに集まる。


「こうなってしまってはアルボレス共和国と今すぐに国交を結ぶのは不可能だろう。だが…、」


その言葉に一瞬、喜色を見せたのは聖騎士団長だ。だがすぐにそれも消えて無くなることになる。


「彼の国を敵に回すにも不利益な点が多過ぎるようだ。今しばらく様子見をするしかあるまい。それに、聖騎士団長殿。」


突然、国王に呼ばれて驚きつつ応答する団長。声が若干上ずっている。


「至急、セミラミスを我が元に連れて参れ。先程の王室親衛隊の話が真かどうか確かめねばならん。魔法を操るゴブリンが存在するとすれば、それこそ国の脅威になりかねん。」

「か、畏まりました。ご下命、謹んで賜ります。」


恭しく頭を下げる団長に、鷹揚に頷く国王。


「皆の者、ご苦労であった。今日はこれにて閉会としよう。フォルテウス、汝だけ残るが良い。」

「畏まりました。皆も下がって私の部屋で寛いでいてくれ。」

「仰せのままに。」


王子殿の言葉にダラス先生が恭しく答えた。

国王の言葉に退席の挨拶を残して席を立ち上がっていく面々。

ベルトン卿の顔に一瞬、忌々しげな表情が浮かんだのを俺は見逃さなかった。だがそれも、すぐに薄い笑顔の仮面の奥へと隠されてしまった。











お仕事の兼ね合いで5日から一週間ほど更新が滞りそうです。申し訳ありません…m(_ _)m

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