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シャ・ノワールと騒乱の聖歌  作者: 蒔田 椎太
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29.執政会議④

先程からフォルテウスの即興に近いものになっているため、前段階での打ち合わせも何もない。

レオナード達は何を聞かれるのか?という不安げな顔で王子殿のもとに集まる。


「私は彼らから様々な話を聞くのが好きでしてね。その中に非常に興味深くて忘れられない話があるのですよ。さぁ、あの三年生の夏休みに、東の地で体験した事を皆さんにお話してくれ。」


なるほど、きっちり頭の回る王子だ。やはり次期国王となると頭の回転が違うようだ。

そんな王子殿を他所に、三人は困ったように顔を見合わせている。恐らくどの話をすれば良いのか分かっていないのだろう。


『エレン達が襲われた火球魔法を使うゴブリン達が居ただろう。その話だよ。』


俺の助け舟に、三人の顔があぁ!という風に納得した。


「僭越ながら私が…、私ども三人ともう二人の級友とで、昨年の夏に東の地に卒業旅行に赴いた時の話で御座います。」


アーノルドが畏まって喋り出す。イネスの鋭い視線がその背中に突き刺さっているがこれは無視して貰おう。


「東の辺境に差し掛かった頃、一つの村が火事になっているようでしたので、慌てて駆け付けた所、すでに村人の姿は無く、村は荒れ果てた状態でした。そこで遭遇したのです。」


そこでアーノルドはわざとらしく言葉を切って周りを見渡す。


「火球の魔法を操るゴブリンに。」

「なんだと!?そんな馬鹿な!?」


これに即座に反応したのは聖騎士団長だ。アーノルドはかぶりを振る。


「本当にそれは火球の魔法だったの?魔法を操るゴブリンなど聞いた事がないわ。」

「間違いありません。私自身が対峙しましたから。」

「…。」


ペトロネラ長官の疑問にエレンが冷たい声で答える。親子仲が悪化しているのは周知の事実なのか、しばし殺伐とした空気が流れる。


「し、しかし詭弁では無いのかね?後になって嘘でした。作り話でした、では済まされんぞ君達?」


聖騎士団長が脅すような言葉をレオナード達に向かって放つが、当の三人は落ち着いたものだ。


「ではそちらでも確認してみてはいかがでしょうか?」

「どうやってだ?」


落ち着きを払ったレオナードの態度。何故かと言うと、俺が念話でレオナードに指示を出しているからだ。


「私ども以外に火球を操るゴブリンを見た人が居ます。それも聖騎士団の方ですよ。」

「な…、それはもしや…。」


青褪める聖騎士団長にレオナードは鷹揚に頷いた。


「聖騎士セミラミス殿ですよ。彼女がその火球を操るゴブリンを撃退したのですから。」


その場が一気に騒ついた。勇者達を率いて魔王を倒し、そして教会に対する反逆罪で囚われた聖騎士セミラミスのその名前に。


「彼女は現在、背信罪に問われていて幽閉の身だ…。」

「それであれば尚更好都合ではないですか?幽閉の身で我々と口裏を合わせる事など出来ないのですから。」

「…。」


閉口する聖騎士団長。隣のベルトン卿は笑顔こそ崩さないものの、その瞳に険しい光が見え隠れする。


「しかし民衆の感情はどうなさるおつもりですか?あの火事で亡くなった人間もいるのですよ?」

「だからといって早計にアルボレス共和国が黒幕と断定するのは良くないと思います。まずはきちんと証拠を検証し、事実を突き止める事が先決かと思いますが、如何か?」


ベルトン卿の言葉に即応するフォルテウス。どちらも譲る気は無さそうだ。


「所で件のゴブリンどもはどうやって王都に侵入してきたのだ?調べはついているのですかな?」


話が平行線を辿りそうな気配がしてきた所で、おもむろにブノワ長官が口を開いた。


「どうやら地下下水道を通って来た模様です。城壁の外と繋がる水門に壊されたような箇所が見つかっております。近々、軍を動員して地下下水道の大規模な探索を行う予定であります。」


これに答えたのはグラート将軍だ。


「中から誰かが手引きしたかどうか?これについてはいかがですか?」

「そこまではさすがに分かりかねますが…。」

「恐らく居ると思われます。中から手引きした者が。」


ブノワ長官の重ねての質問に、困った顔のグラート将軍。そこに意外な所から助け舟が出た。ペトロネラ長官だ。


「ゴブリンというのは基本的に臆病な生き物です。人里を襲う場合は大方が家畜を襲うか、農作物を盗むためです。単体では非力ですから、王都の様な厳重な警備の場所には普通、近づこうともしないでしょう。」

「しかし今回だけでは無く、数年前にもありましたな?ゴブリンの王都侵入事件が…。」


反論してきた聖騎士団長に向かってペトロネラ長官は、あぁ、といったような顔をする。


「あの一件の調べはついています。」

「ほう…?それでその内容とは?」


ペトロネラ長官は両肘を円卓に突いて、じっと聖騎士団長を見つめた。居心地の悪そうな、刺すような視線だ。


「言えません。国家機密に関わることなので。」









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