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シャ・ノワールと騒乱の聖歌  作者: 蒔田 椎太
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27.執政会議②

驚愕、その感情が俺の中へと流れ込んでくる。もちろんレオナードの感情だ。

落ち着け。と俺が言う間も無く、ブノワ長官が話し出す。


「それだけでエルフ全体を悪と決めつけるのはいかがなものかと。人間とて全てが善き人ではない。」

「であればアルボレス国の全てが善、とも言い切れませんな。いや…、善悪の議論は水掛け論になりがちです。このあたりにしましょう。」


余裕綽々といった態度でベルトン卿が口を開く。

今のやり取りに何か思うところがあったのか、レオナードの感情はモヤモヤを残しつつ沈静化したようだ。


「ふむ…。ベルトン卿の仰る通り、感情的な善悪では話は進みません。この場は執政会議。大切なのは国益に繋がるかどうか。皆様はどうお考えかな?」


ブノワ長官があっさりと話題の方向転換を図る。なるほど、国王の側仕えに選ばれるだけの事はあるようだ。


「アルボレス共和国とは、国交を結ぶべきかと存じますぞ。」

「なっ!?正気ですか!?セルジオ将軍!?」


そしてまたもや意外だったのは、セルジオ将軍が国交賛成派に回った事だった。

もちろん、これに驚いたのは聖騎士団長だ。


「正気も何も。貴公は彼らの技術を目の当たりにされておらぬから感じぬかもしれませぬが…。驚異的な技術力ですぞ?国交を結べば確実に国益に繋がる!」


両手を広げて大仰に語るセルジオ将軍。なかなか様になっているのが癪に触る。


「ぎ、技術力など神の威光の前には…。」

「では問う。貴公は神の威光で馬車を一日に百マイル走らせる事ができますかな?」

「…。」


その答えは否。今のこの国の技術では不可能だ。それを分かっているからこそ、聖騎士団長は口を噤むしかない。


「その技術の恩恵を受けられるだけでも大いなる利益ですぞ!私も、有能な部下がいれば、もっと彼の国の御三方と交流を深めたかったものですな!」


再び芝居がかったような大仰な仕草のセルジオ将軍。

それに頭を掻いて困ったように笑うのはグラート将軍だ。後ろのゴドールの顔が怖い。

あの日、仕事を全てゴドールに押し付けて、お茶会に参加した事がバレてしまっているようだ。



「…そんなに優れた技術力なのか?」



ここに来て初めて、国王が口を開いた。

その一言に、一気に場の空気が緊張する。


「はい…。確かに素晴らしいものでございました。詳細は彼らと最も密に接した、フォルテウス皇太子殿下と王室親衛隊の面々がご存知かと…。」


ブノワ長官が恭しくそう告げる。フォルテウスとレオナード達の体が一瞬、硬直するのを感じる。


「茶番はもう良い。そろそろ本題に入ろうではないか。彼の国は、我が国にとって益となるか?」


一言で言えば、誰もが一瞬たじろぐ程の、恐ろしいまでの重圧…。


暫しの間、沈黙がその場を支配する。


「…確実に、益となるかと…。」


口を開いたのは、フォルテウスの背後に控える、ダラス先生だった。


「ふむ。その故は?」


静かにダラス先生に問いかける国王。


「私どもは先日、彼の国の使者、御三方を南の港までお送りいたしました。馬車の技術は風聞に違わず、素晴らしいものでした。実際に私が馬車を駆りました故、間違い御座いません。それに…。」


そこでダラス先生は少し間を開ける。国王もその他の重鎮達も、黙って耳を傾けている。


「彼らが所有する船は、我らの船の倍近い大きさでした。」

「船か…。川を行く小舟程度しか知らんから何とも言い難いな…。」


口を挟んだのはグラート将軍だ。その問いにダラス先生は頷くとロメオを呼び寄せる。当のロメオは少し緊張した面持ちで前へと進み出た。


「皆様ご存知の通り、彼はポルティージョ家の人間です。内陸に住む我々よりも遥かに海や船の知識を持っております。」


なるほど、確かにその通りだ。パンはパン屋に。と言うわけか。


「あの大きさの船は、現在の我々の技術で造船可能ですか?」

「恐れながら…、不可能かと思われます。」


不敬とも取られかねない真っ向からの否定。だが誰も騒ぎ立てる者は居なかった。


「私が実際に見たわけでは無いのですが、私の父と兄の話では、あの船は木材と金属、両方を用いて作られた船の様です。」

「金属?鉄で出来た船ということか?そんなもん、重くて沈んでしまうのではないのか?」


眉を顰めたのはセルジオ将軍だ。それに対してロメオは首を振る。


「金属の種類によります。それに薄く加工した金属板はきちんと水に浮きます。」

「つまり、その加工技術が現在の我が国には無い。ということか?」

「左様であります。」


国王の一言に、ロメオが姿勢を正して答える。その返答に、当の王はしばし考える素振りを見せた。


「では国王陛下はこちらはご存知ですか?」


その時、意外な所から声が上がった。その声の元はなんと、ベルトン卿だったのだ。そしてその手の上に乗せられていたのは…。


「チャッカー…。」


レオナードが小さく呟いた。






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