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シャ・ノワールと騒乱の聖歌  作者: 蒔田 椎太
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26.執政会議①

その日、親衛隊の隊服に身を包んだレオナードの肩の上に堂々と座って、俺は会議室の扉をくぐった。

首元は、フォルテウスが手ずから巻いてくれた、白に金の刺繍の入ったリボンに飾られている。

ちなみにエレンの腕の中には、同じく白いリボンで首元を飾った美しい毛並みの猫が抱き抱えられている。炎が踊るような鮮やかな紅が、同じように踊るエレンの赤い髪と相まって、炎の精霊のよう。エレンの使い魔のルビィだ。

亡き皇后、つまりフォルテウスとその弟、クリストファーの母親が無類の猫好きだったということもあり、王宮の至る所で猫が生活しているが、執政会議に出席した猫は恐らく俺たちが初めてだろう。

狭い会議室に大きな円卓。レオナード達の席は当然無く、フォルテウスの背後の壁際に纏まって並び立つ。


「皆の者、良く集まってくれた。それではこれより執政会議に入る。ブノワ、いつも通り進行は任せるぞ。」

「畏まりました。」


最も奥に座る国王のその言葉に、その横に立つブノワ長官が恭しく答える。

形式やらなにやらをやたらと気にする奴だと思ったが、なるほど、国王の側仕えであればそれも仕方ないのだろう。為政者に誤った情報を与えれば、それだけで国が転覆しかねない。


「議題がいくつかありますが…、本日の火急の議題としては、《今後のアルボレス共和国への対応》となります。異議のある方はいらっしゃいますか?」


単刀直入にそう言って、居並ぶ面々を見渡すブノワ長官。誰一人、異議を唱える者は居なかった。


「いらっしゃらない。という事ですな。それではまずこの議題を頂いた聖神教会の方から議題提起をお願い出来ますか?」

「では私から…。」


そう言って立ち上がったのはベルトン卿…の隣に座った聖騎士風の男だった。鎧がカチャリと小さな音を立てる。


「まず前もってお伝えしている通り、魔物からの庇護を訴える民衆の声が教会宛に連日のように押し寄せております。この由々しき事態をまずはご理解頂き…。」


この男、どこかで見た覚えがあるのだが…、どこだったかが思い出せない。


「怯える民衆を護り、救う事こそが我ら聖騎士団の務めと思い日夜過ごしている所存であります。先日の火事騒動の折も、民衆を!王都を守れ!と勇猛果敢に打って出て、魔物どもを退治し…。」


片手は円卓に、反対の手は握り拳にして熱弁している男だが、どこで見たのか…、それがどうしても思い出せずに俺は話が頭に入って来ない。


「あっ!あの時の中隊長だ!」


同じ事を考えていたのか、アーノルドがポンと手を打った。隣でレオナードがああっ!という顔をする。

話を中断された中隊長殿がそんな二人を睨みつける。


「…おひさしぶりかですな、ラングラン殿にブランシュ殿。その節は…お世話になり申した。私は現在、聖騎士団団長を務めさせて頂いております。」

「…これは、失礼を致しました。」


慇懃に頭を下げるアーノルド。それを見て中隊長…、いや団長殿はフンと鼻を鳴らす。


「そう!我々聖騎士団は日夜、民衆の為に…、」

「あ〜…団長殿。前口上はそれくらいで良いので、そろそろ本題に入って頂けませんか?」

「…。」


これを良い契機と取ったか、ブノワ長官がさらりと話を遮る。

前口上と言われ、団長殿は一瞬口をポカンと開けて黙り込んだ。


「…誰なの?」


エレンが小声でアーノルドに話し掛ける。見ればロメオもイネスも、興味津々といった顔を向けていた。


「え〜と…、二年生の夏休みかな?レオの実家に遊びに行った時、旧魔王城の調査に聖騎士団の中隊が来たんだ。その時の隊長さん。」

「えっ!?旧魔王城ってレオの実家の近くなの!?」

「…アル…、それ、一応機密事項なんだけど…。」


驚くエレンに呆れるレオナード、そしてしまった!という顔のアーノルド。


『…まぁ、もう時効じゃないか?』


俺は取り敢えずそう言っておいた。

その時、咳払いが一つ聞こえてくる。聖騎士団長のものだ。


「え〜、我々聖騎士団としては無辜の民を守る準備はいつでも出来ております。後は国としてかの魔物の国にどう対処なさるのかをお伺いしたいのです。」


そう言って着席する団長。初めからそれだけ言えば良いものを…。

一瞬の沈黙の後に、口を開いたのは意外にもブノワ長官だった。


「貴殿はアルボレス共和国を魔物の国、と断じたがその証左はどこに?」

「なっ!明白な事実ではありませんか!」


この一言に目を白黒させたのは団長殿だ。となりのベルトン卿は未だに涼しい顔で座っている。


「エルフやドワーフが支配する国ですぞ!まともなわけがない!」

「彼らは人間と共生していると言っていましたが…。」

「そんなのは嘘に決まっている!先日の使者の中に人間の姿は無かったと聞きます!人間種はきっと奴隷か何かにされているに違いない!もしそうだとすれば、神の名の下に彼らを解放せねば!」


激昂する団長殿に、ブノワ長官はやれやれ、と頭を振る。


「我々が接した御三方はとても穏やかで礼儀正しい方々でしたぞ。団長殿が仰る明白な事実、は完全に憶測ではありませんか?」

「何をおっしゃる!?ドワーフとやらは知りませんがエルフは完全に魔物でしょう!」


そう言って団長はチラリと隣のベルトン卿を見る。逆にベルトン卿は団長殿を見つめ返すと、コクリと頷いた。


「皆さんはお忘れですか?こちらのベルトン卿が、なぜ脚を悪くなさったかを?」


そこで言葉を切って周りを見渡した後、団長殿は重々しく口を開いた。


「卿は若き日に洗礼と布教の為に訪れた辺境の村で、エルフの盗賊団に襲われたのですぞ…。」











今回、会議や会談ばっかりやな。笑

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