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シャ・ノワールと騒乱の聖歌  作者: 蒔田 椎太
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21.潜入③


「その拘束具には私の探知魔法がかかってましてね。無理に壊されたり外されると分かる仕組みになっているんですよ。」


部屋の入り口から姿を現したのは、腰が深く曲がった奇妙な風体の男だ。

薄汚れた白衣を身に纏い。白髪混じりの髪は不揃いでざんばらだ。

妙に大きく見開いた右目と、眠たそうに細められた左目が、余計にその風体を奇妙なものにしている。


「…あいつは…。」


パズが怯えた声を出す。それだけでパズにこんな酷い仕打ちをしたのが誰なのか、一目瞭然だった。


「頭だけ浮いているとは…。いや、衣服に魔法がかかっているのかな?どちらにしろなかなか面白い魔法ですね。実に興味深い。いや、是非解剖してみたいものだ!」


何が面白いのか、奇妙な風体の男はそういってキヒキヒと奇妙な笑い声をあげる。

その間に人相の悪い男どもが、物騒な物をそれぞれ手に持って部屋へと入ってくる。


「その太っちょさんは中々、結界魔法がお上手でしてな。全身にぴったりと結界魔法を張り巡らせたのですよ。指先の結界を壊すだけでどれだけ苦労したことか…。」


ため息をつきつつ、首を振る奇妙な男。まるで自分の苦労を分かってくれ、と言わんばかりの態度だ。

その間にレオナードは黙って残りの金具を壊していった。


「結界が無ければ、そのふくよかなお腹を開く事もできたんですけどねぇ…。」


そう言いつつ、再びキヒキヒと妙な笑い声をあげる男。


『何が可笑しいのか…、俺には全く理解が出来ないんだが…。』

「同感だな…。」


アーノルドがそう言ってマントを脱ぎ捨て、腰から剣を抜き放つ。


「一日のうちにこんなに何度も怒りを感じたのは初めてだよ…。」

(はらわた)が煮え繰り返る、ってこういう事よね…。」


パズを拘束していた脚の金具を外すために屈んでいたレオナードが、マントを外して立ち上がるのと同時に、同じように留め金を外されたエレンのマントが床へとさりと落ちた。


ゾワリ


そうとしか表現しようが無かった。部屋の中に溢れ出た殺気によって、俺は全身の毛が逆立つ。


『お前たち…。』

「みんな、落ち着いて。こんな下らない奴らのためにみんなの手を汚すことなんて無いよ。きっちり役人に突き出してやろうよ。」


俺がたしなめるより早く、パズが三人へと声を掛けた。


「…お前ら、本当に命拾いしたよ…。俺は人生で初めて、こんなに人を殺してやりたいと思っているんだからな…。」

「心の底から、アルに同意するよ…。」


そう言うと同時に、レオナードとアーノルドが疾風の様に駆け出す。そして部屋の中に炎の鳥が舞い踊りだした。


「なんと…!?」


奇妙な男が驚愕する。部屋の中は阿鼻叫喚で満たされていった。

あるものは腹を強打され、あるものは横っ面に剣の腹を受け、またあるものは両脚を炎の鳥に焼かれ…。

二呼吸もしないうちに十人以上の荒くれどもが床の上に這いつくばっていた。


「ひいいいぃぃっ!こんなんに付き合ってられるか!」


残った何人かの男どもが階段へと殺到するが、先回りした炎の鳥が、壁よろしく入り口を塞ぐ。


「…ねぇ、逃げられると思っているの?」


静か過ぎて逆に狂気を感じるエレンの声。

怒りが度を越すと静かになる人間がいるが、どうやらエレンはその類のようだ。

そうこうするうちに残りの連中もレオナードとアーノルドに昏倒させられ、残りは例の奇妙な男一人になった。


「爺さん、残りはあんた一人だ。」

「儂は爺さんではないぞ?」

「なんだ、婆さんだったのか?まぁ、どっちでもいいや。」

「儂はどっちでもないわい。」


キヒキヒと笑ってそう言う奇妙な男?女?に流石のアーノルドも困惑気味だ。


「まさか、お主らがここまで強いとはな…。流石に予想外だわい。これ以上、ここに居ても儂には何の益も無さそうじゃ。退散させて貰うよ。」

「させないわよ。」


襲いかかってきたエレンの火の鳥を、その奇妙な存在は躊躇なく手で叩き落とした。

腕が焼け爛れるが、男は表情一つ崩さない。


「こりゃもう使えんな。」


そう言っておもむろに反対の手で焼け爛れた腕を掴むと、そのまま根元から引きちぎった。


「「「なっ!?」」」


これには流石に驚かされた。更に驚いた事に、血が一滴も流れ出ない。


「じゃあな。」


レオナード達の驚いた表情に、さも可笑しそうにキヒキヒ笑いつつ、そいつは引きちぎった腕を投げ捨てると、地面を蹴ってそのまま両足と片手で天井に張り付いた。

関節が完全におかしい方向へ曲がっている。


「くっ!!」


エレンが大急ぎで炎の鳥を放つが、そいつはあっという間に天井を伝うと、隅にあった通気口の様な細い穴の中へと吸い込まれていく。

去年の冬に南方で見た、タコとかいう海の生き物にそっくりだった…。


「…何だったんだあれ…?」


男どもの呻き声の中、すっかり毒気を抜かれたレオナードが、みんなを代表するようにそう呟いた。










前回がヘビ女。今回がタコ男…。我ながらセンスが無い…。

パズ救出ミッション、一旦終了です。

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