ふたりでその「エッチな話」でもしていれば?
背中に鈍痛が走った。
「朝です。起きなさい。いつまで寝ている気ですか」
カスミさんが寝ていた俺の背中を思いっきり蹴ったのだ。ですます調で話す割にはやることが荒っぽい。俺はこの人に相当嫌われているようだ。
「……まだ、暗いですけど?」
「客分扱いは昨日まで。今日からきっちり働いて貰います」
俺はサヨリさんの家で厄介になることになった。カスミさんは激しく反対したが「これも何かの縁だ。世話をしてやってくれ」とサヨリさんが説得してくれたのだ。台所横の半ば物置と化していた三畳間が俺の部屋。日は全く当たらないが、公園の小さな道具小屋と比べれば天国。なんてたって布団付き。最悪ってわけでもない。
で、そのカスミさんに今たたき起こされたところ。
用意された作務衣に着替え顔を洗う。水は井戸水だった。山の中腹で井戸って掘れるものなのだろうか。電気は通っている。冷蔵庫はあるけどテレビはない。パソコンはあるけど電話はない。このアンバランスな感じはなんなんだろう。パソコンの回線を辿ってみたところ、どうやら電気線に相乗りしたシステムらしい。速度はテキストデータのやり取りがやっとの程度。
連れてこられたのは野菜畑だった。
「雑草と虫を全て取り除きます。ナメクジも」
俺の父はサラリーマンだが、クラスには農家が多く農作業の話は良く聞く。俺も遊びがてら何回か手伝ったことがある。手伝って気が付いたのは、この地域においてゴールデンウイークに遊びに行く人間はひとりもいないこと。ゴールデンウイークは「田植えウイーク」なのだ。ここはそんな土地柄。
雑草を取っていてハタと気が付く。
「農薬は使っているんですか?」
「ここで農薬は使っていません。病気が出たときは別ですが」
「除虫除草はどうしているんです?」
「だから毎朝こうやって取るのです」
これを毎朝ひとりでやっているのか。
無農薬農業は理想だが現実的ではない。減農薬が精々だと聞いたことがある。掛かる手間が膨大で採算が取れないのだ。家庭菜園も同じで、ちょっとサボると葉野菜はたちまち虫食いだらけになるし、病気にもかかりやすい。
「昨日、一昨日と、誰かのせいで邪魔が入り、仕事がおろそかになってしまいました。入念に行ってください」
「肥料はどうしているんですか?」
「鶏糞です。風下に……」
コケコッコーと聞こえた。風下に鶏小屋があるらしい。
「自給自足ですか?」
「まさか」
収穫した野菜や卵を街のスーパーマーケットで委託販売してもらい、その売り上げでコメや日用品を買うという。かといって別に貧乏しているわけではない。収穫のないときは現金で買うという。きっと占いが収入源なのだろう。しばらくの間、黙々と作業に没頭する。空がだいぶん明るくなってきた。
ふと昨日のことが気になり、俺は手を動かしながらカスミさんに尋ねた。
「あの」
「なんです」
「昨日、俺にナイフ、向けましたよね」
「あれはナイフではありません。クナイです」
「俺にクナイを向けましたよね」
「それがなにか」
「サヨリさんが止めなかったら、あのあと俺、どうなっていたんでしょう?」
「さぁ」
「さぁって。本気じゃなかったんですよね?」
カスミさんが作業の手を止め言った。
「屍を埋めるには土を三尺も掘らねばなりません。なぜか知っていますか?」
「……いいえ」
「浅いとケモノが腐敗臭を嗅ぎつけ、掘り返すからです。仕事が減り助かりました」
冗談としては零点、脅しとしては百点。しばらくの間、俺はこの人と生活を共にしなければならないのか。やっぱり最悪だ。
突如カスミさんが「あ!」と声を上げ立ち上がった。
「どうしました? ムカデでもいました?」
「大変なことを失念していました」
「なんです?」
「結界がなくなったからにはケモノたちがこの畑にもやって来ます。早急に柵を作らねば。鶏小屋も補強しないと、オオカミやキツネの餌場になってしまう」
食害は農家にとって深刻だ。特に近年シカ、サル、イノシシたちは人間を恐れなくなってしまった。少々脅そうが構わず畑や街中にやってくる。しかし今たしかオオカミって言ったよな? 絶滅したはずのニホンオオカミ? この世界にはまだいるのか。
「彰人。大工仕事はできますか?」
「学校で小さな本棚を作ったことはありますが」
「本棚? まぁいい、ないよりマシです。木材は蔵か母屋の屋根裏にあったはず」
大急ぎで畑の手入れを済ませ、ニワトリに餌と水をやり母屋へ戻った。
「自分は蔵の中を捜します。彰人は母屋の屋根裏を捜してください。なにぶん古い家です。静かに歩くこと。階下にホコリが落ちます」
裏の土間が天井まで吹き抜けになっており、掛かった梯子から屋根裏に登ることが出来た。暗くほこり臭いがけっこう広い。中央は立って歩くことができた。巨大な梁が目につく。
床に年代物の行李や木箱が並んでいた。あれは掛け軸入れ? 茶器の箱? 木製のラジオや蓄音機まである。「お宝鑑定団」に出せば凄いことになるんじゃないか? しかし材木なんかひとつも見当たらない。
奥に光りが見えた。近づいてみると電灯ではなく、小さな格子窓から漏れる出る朝日だった。なんともなしに覗いてみると、遠くに小さな滝と池が木々の間に見えた。あれが俺の落ちた滝か。小さいとはいえ高さは5メートル以上ありそうだ。サヨリさんに当たっていたら大けがをさせていたかも知れない。それにあんな遠くから俺を運んでくれたんだ。あとで今一度お礼を言っておこう……などと考えていると、池の畔に白い着物を着た女の人が現れた。
サヨリさんである。Tシャツなんて話にならないほど着物がよく似合う。箱庭のように美しい風景にたたずむ着物姿の美女。まるで一枚の絵画のよう。そのサヨリさんがスルスルと帯を解いた。心拍が跳ね上がる。今から沐浴?見てはいけない。覗きは痴漢行為、痴漢行為は犯罪……わかっているのに目を離すことが出来ない!
サヨリさんが着物の前をはだけた。けど背中をこちらに向けている。
肩が露わになった。けど木の枝に隠れよく見えない。
ほんの少しこっちを向いてくれたなら……。
「彰人!」
心臓が口から飛び出るかと思った。階下からのカスミさんの呼声だ。
「は、はい?」
「蔵に木材がありました。そこはもういいから、下りてきなさい」
覗きを咎められたのかと思った。もしそうだったら今頃命はなかっただろう。蔵の床下に大量の材木があった。板材、角材各種揃っている。
「こんな山奥にどうやって運んだんですか?」
「さあ。この屋敷は自分が来る前に建てられたものですから」
カスミさんの見た目は精々十七、八。ここで生まれ育ったとしてもたかが知れる年月。この屋敷の歴史についてはカスミさんも知らないのだろう。
「自分はこれから朝食の準備をします。彰人は蔵にある大工道具一式を運び出してください。材木の搬出は朝食のあとにします」
囲炉裏のある居間で、ようやくありつく玄米と一汁一菜の質素な朝食。卓袱台やテーブルはなく温泉旅館のような膳が並ぶ。これが日本元来の食事スタイルだという。
「そーかぁ。たしかに結界がなければケモノたちがやってくるわなぁ。わしも気付かなんだ。イノシシの群れに襲われれば、あの小さな畑など一晩で消えてなくなるものなぁ」
サヨリさんが巾着ナスの浅漬けを食べながら言う。衣服はいつものTシャツとジーンズ姿。胸には「明鏡止水」の文字。
「サヨリさん」
「なんだ」
「なぜ結界を作れなくなったんですか?」
「わしが歳だからだ」
「歳? 若そうに見えますが……幾つなんですか?」
「幾つに見える?」
ウザ。合コンじゃあるまいし。
「二十五、六才でしょうか」
「あははは。おまえといい、タヌキ娘といい、世辞が美味いのぉ」
またはぐらかす。
昨日から大体こんな調子だ。自身のことを何も話そうとしない。姫巫女伝説についてもわからず仕舞い。俺は話題を変えた。
「カスミさんって忍者っぽいですけど、忍者なんですか? 俺、昨日、殺されかけたような気がするんですか」
やや皮肉を込め聞いてみる。サヨリさんが笑った。
「カスミ。忍者とバレておるぞ。忍者失格だな」
バレている?
「あの、冗談で言ったつもりだったんだけど、この世界、忍者がいるんですか?」
「おまえの世界にはおらんのか?」
「いませんよ!」
カスミさんが朝食をかき込みながら言った。
「忍者という言葉は、近代の時代小説家が創造したものです。正しくは忍び。それに現代における呼び名は、所属する機関によって異なります」
「どう言う意味でしょう」
「軍人、諜報員、警護官と言った具合です」
就職先によって変わると言うこと? てことは……。
「専門学校的なものがあるんですか、忍者の?」
「学校と言うよりも徒弟制度に近い。訓練は厳しく脱落者も多い。そのかわり免許皆伝を得られれば就職率は十割。食いはぐれる心配はありません」
ここは忍者が職業として成立している世界なのだ。
それにしても忍者の名前がカスミって。まんまじゃん。
「カスミさんはサヨリさんの警護官?」
「さっさと食べなさい。仕事は山積みです」
材木を畑に運び込み、必要な長さに切り出す。気温が上がり汗まみれである。小川で手ぬぐいを濡らし上半身を拭う。一宿一飯の恩義は返さなければならないが、なんという重労働だろう。これからこの材木で柵を作るのか。
「お昼にしましょう」
カスミさんがオニギリの入った包みを俺に渡してくれた。
「サヨリさんは?」
「姫巫女様は一日二食しか召し上がりません。三食喰らうは我らのような卑しい人間だけです」
随分な卑下の仕方だな。サヨリさんってそんなに高貴なお方なのか。
「それと姫巫女様をさん付けで呼ぶのはよしなさい。姫巫女様かサヨリヒメ様にしなさい」
ヒメ? サヨリ、ヒメ? いくらなんでもヒメはないだろう。恥ずかしすぎてとてもじゃないが口に出来ない。
梅干し入りのオニギリは、朝食とは打って変わり塩分高めだった。労働者向け設定? でも汗を掻いた身体にはこれが堪らなく美味い。
そこに「おーい」と手を振り現れたのは制服姿の茉菜だった。短縮授業が終わり、その足でここにやって来たらしい。男をひとり連れている。髪型が違うけど、制服のデザインが微妙に違うけど、見覚えのあるその顔は……。
「溝口!」
それは悪友だった。一昨日別れたばかりなのに、なんて懐かしいんだろう。
だが溝口はしばし俺の顔を眺めたあと、茉菜に向かって言った。
「あいつ、初対面なのに俺の名前を一発で言い当てたぞ」
溝口は既に一通りの説明を茉菜から受けていた。ここに来るまで全く信じていなかったらしいが、目の前に広がる畑を見て考えを変えつつあるようだ。さすがにご神体たる山の中に、畑があるとは思っても見なかったのだ。
「で、他には?」
溝口が俺を質問攻めにする。一昨日の茉菜の繰り返しだ。
「SF漫画を描きたいって言ってた」
「それは結構色んな人に言っているよ。もっと僕しか知らないようなことでさ。悪友なんだろ?」
「DVDやBlu─rayってある?」
「なんだい、それは?」
「映像が収録されたCD、ディスク」
「ああ、CVD、コンパクトビデオディスクか。もちろんあるよ」
「それのエッチな……いや、スケベなやつの隠し場所と好きな女優のタイプ。これでどうだ?」
溝口と茉菜の顔色が変わった。
「溝口くん、そんなもの見るの?」
茉菜が軽蔑の眼差しを溝口に向ける。
「い、いや。そんなものはない。断じてない!」
おや? 溝口が動揺している。これは面白い。
「顔は子供、身体は大人。脱いだ時のギャップが堪らないって言ってたよな」
「ち、違う! そんなことひと言も言ってない!」
茉菜が立ち上がり冷ややかに言った。
「わたし、姫巫女様のところに行ってくる。ふたりでその『エッチな話』でもしていれば?」
茉菜は思いのほか潔癖症のようだ。「もしも女に生まれたなら設定」の俺は「エッチなことに寛容な女」であるはずなんだが。
「誤解だ宮路、こいつが言っていることは嘘だ! てか『エッチ』ってなんだよ?」
茉菜は溝口を無視して小道を上っていく。
溝口が俺に向かって言った。
「なんてことを言ってくれるんだ。初めてできた彼女なのに!」
え?
「おまえら付き合っているのか?」
「そうだよ、期末試験終わった日に告白したばかりだよ!」
「えー!」
溝口と俺が付き合っている?
キショ! あり得ないだろ!
いや、あり得るのか? だって俺と茉菜は別人、別人、別人……。別人?
わかっているのに身体が拒絶する。なにこの感情? いかん、なんだか気持ちが悪くなってきた。吐きそう……。最悪。
「待ってくれ宮路!」
溝口が茉菜の後を追っていった。
「彰人」
振り返るとそこにはカスミさん。
「あ。はい」
「昼休みは終わりです。柵作りを再開します。予め言っておきますが、鶏小屋の補強も今日中に終わらせます。覚悟してかかってください」
木槌の音が森に鳴り響く。
カスミさんが不機嫌だ。振るう木槌にその気持ちが露わになっている。杭を支える俺はおっかなくてしょうがない。
「あの、少し休みませんか」
「必要ありません」
「手が滑ったら危ないですし」
「そのような間違いはわたしにありません。よしんばあったとしてもここには人がいない。誰の迷惑にもなりません」
いや、俺がいるんですけど。
カスミさんは茉菜と溝口がここにやって来たことが面白くない。けどカスミさんは文句が言えない。また遊びに来るよう言ったのはサヨリさんなのだ。サヨリさんは茉菜を甚く気に入ったようで、茉菜の「友達を連れてきてもいいですか」との問いにも笑顔で承諾した。それを苦々しく見つめていたカスミさんの表情が忘れられない。これもやっぱり俺のせい?
休むことなく次々に杭を打ち込んでいく。小柄だがさすがは忍者、もの凄いパワーと体力だ。汗もあまり掻いている様子がない。
「カスミさん」
「なんです」
「タフですね」
「たふ?」
「あ、いや、体力がありますね」
「鍛えていますから。かつて一流の忍びは、江戸と京の間を三日で駆けたといいます。これに比べればたいしたことありません」
一日百六十キロメートル走る? マジか?
「オリンピックで金メダル取れるんじゃないですか?」
「競技ではドイツ人に敵いません。底力が違う。連中は十里を一時足らずで走ります」
……単位がわからない。今どきなんで尺貫法? それになんでドイツ人? そう言えば茉菜もスマホをドイツ製かと聞いていたな。
あっという間に杭が畑の周りを囲った。あとはこれに板を打ち付けていくのだ。
そこにサヨリさんが盆を手にやって来た。
「おお。随分と捗ったな。茶にしよう。茉菜が土産に焼きプディングを持ってきてくれたのだ。少し休め」
「姫巫女様! そのようなことはわたくしがいたしますのに!」
カスミさんが手にしていた木槌を放り投げ、サヨリさんに駈け寄る。木槌が俺の足元にドスンと落ちた。
アブねぇっ! 今のワザとだろ!
サヨリさんの後ろに茉菜と溝口が続くのが見えた。
わっ! 手、繋いでいるっ? もう仲直り? キショ! マジキショ!
あれが俺? なんかイヤ。生理的にイヤ!
茉菜によると姫巫女は、日露戦争における伝説的英雄で、日本史史上最強のヒロインとして国民的人気を誇るらしい。神剣の一振りで千人のロシア兵をなぎ払い、神通力で神風を起こし何隻もの敵艦を沈めたという。過去何回も映像化され、戦艦三笠の艦首で仁王立ちする巫女姿が定番というが、誰がどう考えてもこんな荒唐無稽な話が史実であるはずがない。
ところがこの姫巫女伝説を史実と信じる日本人は少なくないという。と言うのも百十数年も昔の話なのに、どのような経緯でロシアに勝ったのか、未だ詳細が明らかにされていないという。姫巫女伝説を信奉する人たちは、これを政府と軍が姫巫女を隠している証拠と考えているのだ。かく言う溝口も姫巫女伝説の信奉者である。溝口、UFOとか超能力とか大好きだものなぁ。
今日、茉菜が溝口を連れてきたのも、溝口に事の真偽を確かめさせるためらしい。溝口は俺たちが杭を打っている間、持てる知識を動員してサヨリさんを質問攻めにしたようだ。しかしうまくはぐらかされ、話はいつの間にか茉菜と溝口の恋愛相談にすり替わり、ふたりはその内容に満足して、ここにお茶しに来たのだ。けど、焼きプリンで緑茶って。
その緑茶をすすりながら溝口は言った。
「SFにおいてパラレルワールドに移行する、最も端的な要因はタイムトラベルだ」
歴史を改変した結果発生する世界がパラレルワールド、という事らしい。
「タイムパラドックスの解として、パラレルワールド設定は大変都合が良いんだ。超弦論で説明できるし、単純に面白いって言うのもあるしね」
「けど彰人くんはタイムトラベルをしていないよ」
おお。茉菜さんが俺を「彰人くん」と呼んだ! 大出世ではないか!
「うん。問題はそこだ。今回のケースでは彰人くんがこの世界に出現した原因がわからない。原因がわからない以上、タイムトラベル物のように歴史を修正するとか、積極的な方法で元の世界に戻る努力ができない」
こっちはこっちで親友に「彰人くん」と呼ばれるとは。
やっぱりへこむなぁ。
「もっともタイムトラベル物であったとしても、歴史を修正して元の世界に戻るっていうチャレンジもあまりお勧めできない」
「ん? それはどうして」
「パラレルワールドがキミの世界と僕たちの世界の二つしかないのならそれで構わない。だが実際には幾つあるのかわからないからだ。十個なのか千個なのか百万個なのか。下手に帰還の努力をすると、日本が存在しない世界に迷い込むかもしれない。そうなったら最悪だと思わないか?」
「日本がないってどう言うこと?」
「知っての通り、日露戦争では一時、対馬・福岡がロシア軍に占領された。東郷元帥閣下や姫巫女様獅子奮迅の活躍がなければ、今頃我が神州日本はソビエトユニオンの一自治区になっていたかも知れない。そう言う可能性の話だよ。シベリアで強制労働の上、毎日ボルシチとピロシキでは嫌だろ?」
知っての通り、じゃねーし!
日露戦争ってそんな戦争だったけ? 神州日本? ソビエトユニオン? 知らなかった方が幸せな気がしてきた。
「じゃ、俺って、元の世界には戻れないってことかよ」
サヨリさんが食べ終わった瓶入りプリンの、わずかに残ったカラメルを小さな木製スプーンでかき集めながら言った。
「結論を急くな。まもなく姉上も来られよう」
このあと溝口と茉菜も柵作りと鶏小屋の補強作業に加わり、日が落ちる前に作業は終了した。