広田正人、異世界へ行く。
「正人ー‼︎ 起きなさーい‼︎ 学校遅れるわよー‼︎」
「はーーい、今行くーー。」
-平凡で、安全で、退屈な世界がはじまった-
俺は広田正人。18歳高3。バリバリの受験生だ。好きな食べ物はオムライス。
彼女はもちろんいない。
受験勉強に追われる日々の中、俺を救ってくれる唯一の物は
異世界美少女ハーレム系アニメ
こいつが俺の癒しだ。1日1話癒しを頂いている。
つまり俺は
「異世界に召喚されたいと願う日々を生きる
不運な高校3年生」
というわけだ。
あーあ、受験生じゃなくて勇者になりたいなぁ…。
[8時。。やべ、遅刻する‼︎]
「いってきまーす‼︎」
いつも通り、1日が過ぎる、はずだった。。
-トラべール‼︎-
[なんだ。。いきなり。。意識が遠のく。。。]
……………………
「ハッ‼︎」
ここは…急に景色がかわって中世ヨーロッパ風の街…
まさか…
いや…まさかな…
ありえないから…俺…落ち着け…
でも俺は確かに玄関を出たはずなのに…今いるのは別の場所…
…………。
「異世界だ‼︎ ついに…願いが叶った‼︎召喚されたんだ‼︎」
[周りには俺を召喚した術師は見当たらないな…
ま、いっか‼︎]
???-よし、彼を異世界に召喚することに成功した
わ‼︎ これで世界を救える‼︎
でも…”あれだけ”は禁止だからね‼︎
元受験生は満面の笑みを浮かべながら夢の異世界での第一歩をふみだした。この世界がどんなに辛い世界かも知らずに…
[アニメのお決まりとしては…ヒロイン‼︎
街を散策しよう‼︎ ]
みた感じ、人族以外にも獣人族とかエルフとかアニメと同じ感じだ…素晴らしい。素晴らしすぎるぞ‼︎
1時間程だろうか、街を歩きまくったが何も起きない。まさか…なにもないまま過ごすのか…
諦めかけたヒロトの前に希望の風が吹いた。
銀髪ミディアムの女「あのぉ、すいません、クルド教会がどこにあるかおしえてもらえますか⁇まだこの街に来たばかりで…」
[美少女エルフキタァァァァァァ‼︎ 大きなターコイズブルーの目に尖った耳‼︎スタイル抜群で…見た感じ冒険者だな…間違いない。俺のヒロインだ‼︎とりあえずかっこよく振舞わなきゃ…]
ついさっき召喚された受験生はダサい髪をなびかせて言った。
ヒロト「クルド教会⁇ふっ、この街のことなら任せてくれ。付いて来な。」
[決まったぁぁぁ‼︎…のか⁇…いやキモいな。さらば我が異世界生活、さらば我がヒロイン…泣]
女「本当ですか‼︎是非お願いします‼︎
あ、私はエマです‼︎18歳‼︎駆け出し冒険者です‼︎よろしくおねがいします‼︎」
[えぇ子やぁぁぁ泣よし‼︎イケるぞ…イケるぞ俺‼︎]
ヒロト「俺はヒロト、同じく18歳だ。えっと…俺も駆け出し冒険者だ…敬語はいらん…よろしくな。」
エマ「同い年なのね‼︎私も敬語嫌だったの笑よろしくね‼︎」
ヒロト「…。」
エマ「…ヒロト⁇」
[クルド教会どこだぁぁぁぁぁぁぁぁ…まったくわからん…この街の名前すら知らないのに…俺の馬鹿やろう‼︎どうしよう…とりあえず適当にあっち行ってみよ]
ヒロト「こ…こっちだ。」
エマ「うん‼︎」
元受験生は自信ありげに美しいエルフを引き連れている。
もちろん彼自身、どこに向かっているかは謎である。
10分ほど軽口を叩きながら歩いたところで二人は大柄な男に路地裏に引き込まれる白髪の浮浪者のような老人を見つける。
エマ「あのお爺さん…大丈夫かな…何かあったのかしら…」
ヒロト「…。」
[...関わらないが吉‼︎]
ヒロト「エマ…先を急ごう…日が暮れてしまう。」
エマ「でも…心配だわ…」
ヒロト「…。きっと大丈夫さ。さぁ、いko...」
老人「そこの兄さんや、助けておくれぇ。」
エマ「ヒロト…」
ヒロト「…。」
[くそじじぃぃ‼︎助けなきゃいけなくなっちゃったよ‼︎
ちっ、仕方ない…‼︎どうにでもなれ‼︎」
ヒロト「エマ、少し待っていろ。すぐ終わらせる。」
エマ「ヒロト…気をつけてね…‼︎」
ヒロトは震える足を必死に前に進め、路地裏へと入って行き、老人から金を巻き上げる男二人にこう言った。
-薄暗い路地裏にて-
ヒロト「そのじいさんを離せ。くそ筋肉野郎。」
[泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣泣]
男「あぁ⁇てめぇ誰だ⁇」
ヒロト「俺はヒロト。冒険者だ。今すぐに消えろ。見逃してやる。」
男「調子に乗ったガキにはお仕置きが必要だな…痛い目に合わせてやる…」
ヒロト「…。かかってこい。」
男「おらぁぁぁぁ‼︎」
[さらばだ、エマ。恨むぞ、じじい。]
???「ウインドプレス‼︎」
男「ぐわぁぁぁぁ‼︎」
ヒロト「…ッ‼︎…今のは…魔法…⁇男が倒れてる…なんで…ってエマ?!」
エマ「殴られそうだったのになんでなにもしなかったのよ⁇‼︎ ビックリしたわ‼︎」
ヒロト「それは…き…君が来るとわかっていたからさ...。」
エマ「...。」
ヒロト「…。」
エマ「本当に‼︎⁇ スゴイわ‼︎ そんな強者だったのね‼︎」
ヒロト「ふっ。」
[危ねぇぇ‼︎ エマすげぇ天然だな…なんとか誤魔化せた…でも…少し騙すのが申し訳ないな…いい子なのに…]
エマが関心していると老人がヨボヨボと近づいてきた。
老人「助かりました。わたくしはクルド教会の神父をやらして頂いております、ピウロと申します。是非お礼をさせてください。」
エマ「クルド教会のピウロさん⁇‼︎ 私、ちょうどあなたに会いに行く途中だったんです‼︎」
ヒロト「え?」
エマ「ヒロト、おじいさんがピウロさんだと知っていて助けに行ったのね‼︎ スゴイわ‼︎」
ヒロト「…まぁな。」
[俺はとことん愚か者だ…泣]
ピウロは二人に教会でお礼がしたいというのでヒロトとエマはピウロに連れられクルド教会へ向かった。
奇跡的にヒロトが向かっていた方向は正しかった。
-女神の降りる場所クルド教会にて-
[うわぁ、天井高‼︎ 少し古いけど、the教会って感じだなぁ]
ピウロ「改めてお礼を、ありがとうございました。お返しに何かさせて下さい。」
ヒロト「そんな、お返しなど要りませんよ。」
[俺なんもしてないし…]
エマ「そうですよ‼︎私たちはただ助けたくて助けただけですから‼︎」
ピウロ「そうですか…ではせめて教会に泊まっていって下さい。もう外は暗くなりますから。」
空はいつのまにか深い桃色に染まり、街には疲れ切ったベテラン冒険者達が腹を鳴らしてやって来る。
エマ「どうする?ヒロト?私は宿が無いから是非泊まらしてもらいたいのだけど…」
[これはチャンス‼︎エマと二人きりでお泊りできるぞ‼︎
うまくいけばムフフな展開が…」
ヒロト「そうだね、泊まろうか。(キリッ)」
こうしてヒロトとエマはピウロと他の弟子達と夕食を終え、情趣ある教会の一室で一晩を過ごすことになった。
-木造建築の情趣ある部屋にて-
ピウロ「この空き部屋をお使いください。では、」
部屋にはベッドが1つと窓があるだけで他にはなにもなかった。
ピウロは部屋に二人を案内すると優しい笑みを浮かべながら自室へと帰っていった。
エマ「ベッド…1つしかないね…」
ヒロト「…。」
[ラッキー‼︎さすがは異世界だ‼︎これで俺はエマと二人で…おねんね…]
ヒロト「仕方ない。二人で使おう。(キリッ)」
エマ「そうだね…/」
少しの沈黙のあと二人はベッドに座った。
すると元気なエマとは違った雰囲気で言った。
エマ「私ね…実は魔王討伐を王都から命じられた予言のパーティのうちの一人なの…」
[やっぱりこの世界には魔王がいるのか…そしてエマはキーパーソン…とりあえず話を聞くか…]
ヒロト「そうなのか...」
エマ「私は選ばれし4人のうちの魔法使いで、まだ他のメンバーは見つかっていないの…」
ヒロト「他の3人はどんな役職なんだ⁇」
エマ「それぞれ戦士、召喚士、そして勇者よ...」
[勇者‼︎ 俺なのか⁇‼︎ 俺が勇者なのか⁇‼︎ でも…1ミリも強くなってないしなぁ…中身はただの受験生なんだよなぁ…]
エマ「私…不安で…本当に私みたいな駆け出し魔法使いでいいのかな、予言はあってるのかなって…だから大神父として有名なクルド教会のピウロさんに洗練をしてもらおうと思ったの…」
ヒロト「なるほどな…」
エマ「私不安で不安で仕方なくて…」
昼間の元気なエマとは別人のようだ。
ヒロト「ほ…他の3人が誰だか分からないのか?」
エマ「予言者が他の3人を示す前に病で亡くなってしまって私が残り3人をこの予言石を使って見つけ出さなければいけないの…」
そう言ってエマはカバンから赤、緑、黄色の透き通った石を取り出した。赤が戦士、緑が召喚士、黄色が勇者を示すらしく、選ばれしものが近くにいると明るく輝き、その者に触れると砕けるらしい。
エマ「黄色の予言石が街に入ってヒロトと出会う少し前から光りはじめたからこの街に勇者がいると思うんだけれど…簡単には見つからないわ…」
ヒロト「勇者ねぇ…」
そう言ってヒロトは黄色の予言石を手にした。
ヒロト「へぇ…これが…あれっ……ヒビが入ってる…」
エマ「え、ヒビなんてなかったと思うけど…」
-パリンッ‼︎-
黄色の予言石はヒロトの手の上で突然砕け散った。
2人はただ破片を見つめている。
ヒロト「俺が…」
エマ「ヒロトが…」
ヒロト&エマ「勇者‼︎」
エマ「私…最初に会った時からあなたが勇者かも…そうだったらいいな…ってずっと思っていたの‼︎ よかった、ヒロトが勇者で…」
そう言ってエマは不安から解放されたのか、堪えていた涙を流しはじめた。
[俺が勇者…冷静に考えると無理ゲーだろ…きっと予言石が間違ってる…だって俺はさっきまでただのつまらない受験生だったんだから…」
ヒロト「エマ…俺本当は強くないし…強がってただけなんだ…本当は街に来たばかりなんだ…黙っててごめん…」
[ただのアニメ好きな受験生なんだよ‼︎]
エマ「…知ってたよ。」
ヒロト「え、」
エマ「これでも魔法使いだよ?人の魔力くらい分かるよ笑」
ヒロト「じゃあどうして…」
エマ「かっこいいって思ったから。」
ヒロト「…」
エマ「本当は全然強くないのにピウロさんを助けようとしたり、全然街に詳しくないのに私を案内しようとしたり…。」
ヒロト「街に詳しくないのもバレてた…泣」
エマ「あんな不安そうに歩くんだもん。笑」
エマ「でも…私強い人はたくさんみたことあったけどヒロトみたいな人は初めてで、なんだがいいなって思ったの。教会にも辿り着けたし…運命なのかなって。」
エマ「私はあなたを信じる。これからも私と一緒に勇者として魔王討伐に協力してほしい。手伝ってくれる⁇勇者ヒロト。」
[俺は…エマを…助けたい…こんな俺を信じてくれるエマを…‼︎]
ヒロト「もちろんだ。よろしくな 魔法使いエマ‼︎」
こうして俺は勇者になった。
パーティメンバーになったからだろうか、2人はリラックスした様子で楽しくおしゃべりをした。ヒロトがオムライスが好きなこと。この世界にオムライスが無いこと。ヒロトのカッコつけた話し方はいつのまにか消えていた。
そしてついに、ヒロトの待ち望んだ時がやってきた。
ヒロト「もう寝ようか…明日に備えて。」
エマ「一緒に寝るしかないよね…//」
ヒロト「…そうだね…//」
エマ「変なことしないでね‼︎...//」
エマが寝ているベッドに近づき…
ヒロト「では…失礼しまッ.....」
[ついに…‼︎美少女と‼︎一緒におねんねだ‼︎ あんなことや こんなことを…‼︎ 異世界万歳‼︎]
⁇?-ヒロト‼︎やましいことをしたらダメ‼︎
元の世界に戻され…-
[あれ…意識が遠のく…良いとこなのに…]
「ハッ‼︎」
[あれ、エマがいない…てかここ俺の部屋のベッドだ…確か俺はエマと一緒に寝ようとしてたはず…]
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」
こうして、勇者ヒロトの異世界生活が幕を開けた。