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俺の妹と女友達が残念すぎる!  作者: 志賀一人
男子高校生でなろうの読み専をしているけれど、年下のクラスメイトで人気なろう作家の女の子が妹になるらしい。
6/6

5.つまるところ、“朝比奈陽葵”はガチオタである。

 果たして俺は、ここまで二次元に溢れた空間を、今まで見たことがあっただろうか?


 いや、ない。


 俺だって、自身をそこそこコアなアニメファンであると自負している。それでも、部屋に置かれているのは多数のラノベや漫画、ギャルゲーぐらいなもんだ。資金面の問題もあって、アニメBlu-rayBOXは数作品分しか持ってないし、あとはフィギアとかをちょっと買っているくらいである。


 ……だが、なんだこの溢れかえる二次元グッズは。俺の部屋にあるモノは大体置かれているし、それに加えて多種多様なグッズが部屋に散乱している。ただお世辞にも綺麗な部屋とは言えない。女子の部屋に幻想を持っちゃいかんな、うむ。

 更には前述の通り部屋の主が女子であることもあって、少女漫画や逆ハーレムラノベなど、俺には到底知りえないジャンルの作品も見受けられた。しかもその保有者が学校一二を争う美少女――

 ――朝比奈ときたもんだ。

 確かに彼女がアニメファンであることは全クラスメイトが周知している事実だが、流石にここまでとは驚かずにはいられない。


「なんて言うか、すげぇなこれ。ちょっと尊敬するわ……」


 部屋に設置されているソファーに腰かけている俺は、辺りを見回しながらそう感嘆した。

 俺の真横にいる(※ちなみに割と近い)朝比奈は、自慢げに語りだす。


「えへへ、ありがとっ! 結構そろえるの大変だったんだー」

「大変っていうか、よくこんなに買えるくらい金持ってんな。もしかして朝比奈ン家って金持ちなのか?」

「ん~、そういうわけではなくてだね…… ほら、さっき言ったでしょ、これ書いたのあたしだって」


 事実確認をした朝比奈は同時に某薄い本を取り出す。男が目の前にいる状況でそういうことをするのは、いささかいただけないなぁ……


「まぁ、そうだな」

「でね、これをコミケとかで売ってるんだ。ほら、同人誌ってやつ。それで稼いだお金で色々買ってるわけだよ」

「成程な……」


 確かにイラストはかなり上出来だ。内容が内容なのであまりじっくりと眺めることはできないが、それでも美しい絵だと断言できるほどには上手い。ぶっちゃけプロデビューしていてもおかしくないレベル。素人が多い同人誌界隈なら大成していてもなんら不思議ではない。だからこそ、俺は問う。


「それなら新人賞とか応募したりしねぇの? 朝比奈なら下手したら大賞取ってもおかしくないと思うが」


 商業誌での連載が決まり順調にアニメ化なんか成功すれば、お小遣いの足しどころか一生分の金を稼げるかも知れないというのに。


「へぇ~そんなのあるんだっ! あたしも何か出してみよっかな。何か賞がある時は、あたしに教えてくれてもいい? 奏太くん」


 そうしてはにかみ笑顔を俺に向けてくる朝比奈。そうか、知らなかったのか。それなら仕方ないな。でもほら、『現役美少女JKエ〇漫画家』として売り出せば、人気出るんじゃないですかね、えぇ。


「ま、いいけど…… それなら自分の作品とか誰にも見せたことないのか?」


 俺の場合、昔『勇者颯太郎の冒険』とかいうクソつまらん小説を書き終えたときは、誰かに読んでもらいたくてすぐさまなろうに投稿したし。結局16pt止まりだったんだけどな。一人5:5評価してくれた人がいたので、気にしない方向でいこう。


 だが、よく考えたら朝比奈が誰にも見せたことがない、というのも理解できる。何せ18禁漫画なんだもんな、そりゃ誰にも見せらんねぇわ…… むしろ俺に見られても平然としている今の状況の方がおかしいんだし。


「ん~、一応見せたことあるっていうか今見せてるっていうか……」

「えぇ!? 見せたことあんの?」


 お前あれだろ、羞恥心ない天然系ビッチって奴だろ。ビッチは男の敵なので悔い改めて、どうぞ。


「いや、何で聞いた本人が驚いてるの……?」

「や、逆にこれ誰に見せたの? お前のダチもしかして変態?」

「あ~……ううん、違うよ。流石にあたしでも、これはちょっと見せらんないしさ…… だからほら、これだよ」


 そう言い終わるや否や、何故か朝比奈はデスク用チェアに座り、正面に設置してあるPCを起動させる。一体何を見せる気なんだ……?


 しばらく経った後、朝比奈はこちらに振り返った。どうも、何かブラウザページを開いたようだ。朝比奈が目でこちらに近づくよう促したので、俺はPCの画面がはっきり見える位置まで移動する。思いのほか朝比奈の体と俺の体が接近し、ちょっと動揺したのは内緒。


「あー…… これは――」

「このラノベ作家になろう(・・・・・・・・・)ってサイトに小説、投稿してるんだ」

「へぇ~お前小説も書いてるん――っていやいやいや、嘘だろ!?」

「えっ、そんなに驚くことだった!?」


 確かにマンガも小説もオールマイティに書ける才能も驚いたというか感心したが……


「あ、朝比奈がヒマワリさん(・・・・・・)だったのかよ!!」


 恐らく凄い形相になってたであろう俺は、朝比奈を指さしながら驚愕した。一方急に大声を出された朝比奈は困惑し、おろおろしている。萌えポイント高いですね、それ。




 ――――――――――――――――――――――――




「ほへぇ~、あたしの小説読んでくれてたんだ。ありがとっ!」


 自分の一ファンに出会えたことがよほど嬉しかったのか、満面の笑みで感謝してくれた。つっても別に感謝されるようなことやったわけではないんだがな。


 俺は朝比奈に、自分が『学園アイドル』のファンであり、毎日更新を楽しみにしている旨を伝えた。

 一方朝比奈も、ネット上における俺の存在は知っているようだった。確か初レビューを書いたのが俺だったはずなので、一応記憶に留めておいてくれたのだろう。喜んでくれていたのなら、俺としても幸いだ。


「いや、まぁその、どういたしまして?」


 こう、素直に感謝されるとどう返答したらいいものか結構悩む。あと、気恥ずかしい。これには共感できる人もいるんじゃないだろうか。いない? いないか。


 俺にしては珍しく、お互い無言であることを居心地悪く感じてしまい、適当に話を切り出す。くっ、俺のぼっちレベルもまだまだだな、もっとレベル上げしないと……


「でも、ほんと、お前の書く小説って面白いよな」

「ん~、そこまで、とは思わないけど……」


 朝比奈は朝比奈で面と向かって褒められるとき恥ずかしいのか、照れ笑いを浮かべながら謙遜する。お互い赤面とかどこの告白シーンだよ。と、告白シーンといえば。


「いやいや、あの告白シーンとかマジ萌えたぞ。普段通りのツンデレながらも、こう必死に想いを伝えようとしている所とか本と最高だったし」

「おっ、奏太くん分かってるじゃないかっ! ここ、割と工夫したところなんだよ。こう、いかにキャラ崩壊させず、かつ可愛い告白をさせるかというのをだねっ……」

「ほ~、やっぱり工夫してたんだな。お前の熱意、すげぇ伝わってたぞ。てか朝比奈って告白シーン描くの上手いよな。他のサブヒロインの告白も、それぞれ個性あり、萌えありーって感じの告白になってたし」

「えへへ、そんなに褒められると照れるじゃんっ!」


 朝比奈ははにかみんだように笑いながら、照れ隠しなのか俺の肩を叩いてくる。おい、痛い痛い痛い――こともないか。全然軽いし。むしろ気持ちいい? や、それだと俺、ただのドM変態野郎じゃねぇか。


「でも、ちゃんと伝わってるなら安心かな。あたしはさ、やっぱり告白シーンって、恋愛ものとしては一番重要なとこだと思ってるし。頑張ったとこちゃんと評価してもらえると、やっぱり嬉しいってゆーか!」

「だよなだよな、分かるぞーその気持ち。俺も昔は書いてたんだけどな、その時毎日感想くれる人がいてさ。それ、ほんと救いになってたわ」

「へぇ~奏太くんも書いてたんだ! どんなの? 見して見してっ!」


 いや、あれはダメだ。あの小説を他人に読ませるわけにはいかない。完全に黒歴史と化してるからな。


「ほら、あれだ。今度な、今度」

「えぇ~それ絶対見せてくれないパターンじゃんっ! 読ませてよぉ、奏太ぁ~」

「ダメだダメだ。それよりほら、朝比奈ってもしかしてエロアニメ先生好きか?」

「え?何で?」


 すぐにでも話題をそらすべくどうでもいい質問をした俺に、朝比奈は首を少し傾げさせて、さらに質問で返してくる。


「あぁ、設定とか雰囲気というか、そういうのがちょっと似てた気がしたからな。いや、別にパクリって言うわけじゃないんだが…… ほら、ヒロインがイラストレーターの妹ってとことか一緒だろ?」

「ほうほう、よくわかったね奏太っ!」


 そう演技口調で返答した朝比奈は、エア眼鏡をくいっとさせる。や、何かっこつけてるんスかね。


「うん、確かに好きだし、参考にしたよ。だって狭霧さぎりちゃんめちゃ可愛いんだもん! あんなの見たら感化されても仕方ないって!」

「ほうほう、お前もそう思うか。引きこもり作家の兄を甲斐甲斐しく世話してるところとかマジ尊すぎてヤバいし。何よりあの台詞――」

「そうそう、あの――」


「兄さんを世話するのは仕事の為なんだから、勘違いしないでね!って台詞が!」

「……好きだよ、兄さんって呟くところが!」


「「うん?」」


 あれあれあれぇ、一体これはどういうことかなぁ~? 同じオタク趣味の者としては、分からず屋は成敗する義務があるのからね、うん。ここはちゃんと言ってやらないと……(使命感)


「いやいやいや、あんなぼそぼそって言うとこのどこが良いんだよ! あれじゃあ主人公が難聴系じゃなかったとしても聞きとれねぇよ」

「のんのん、わかってないのはそっちの方だよっ! 確かにツンデレはすごく可愛いと思うけど、それにしたって『勘違いしないでよね』とかベタ過ぎだし! だからこそ、やっぱりツンデレならではの告白こそ、最高の萌えだとあたしは思うのですっ!」

「いーや、真のツンデレたるもの容易に告白しちゃダメなんだよ。それに、王道が一番とも言うだろ?」

「まぁそれはそうだけどさ。でも王道って言ったら――」


 そして、俺達の会話はなろうについての話題からアニメに関する話題へとシフトし、それはやがて『妹だけいたらいい』や著者が同一である『俺は男友達がいない』など、取り上げられるアニメも多種多様な変化を遂げていく。

 二人とも完全に深夜テンションに陥ってしまったのか、話し合いはこれでもかというほどに盛り上がった。時に共感し、時にぶつかり合い、中にはバトル漫画かよってレベルで激しい闘いを繰り広げることもあった。(※もちろん話し合いで、だが)


 しかしやはり最強の敵は睡魔だったようで、二人は絶望的な抵抗を試みるも、結局徐々に意識を失っていき――




 ――――――――――――――――――――――――




 小鳥のさえずりが聞こえる。閉じた瞼の中には、東側の窓から差し込む日光がうっすらとだが侵入してきていた。


 朝だ。父さんに叩き起こされることのない、気持ちの良い朝だ。そう、これこそ俺の求めていたものっ……


 と、思っていた時期もあったのだが……


 何だ、少し重いぞ。何かが俺の上にし掛かっている。ったく、棚から物が落ちてきたりしたのか? 長い間棚の整理なんてしてないからな。完全に物がタワー状態になってたし、いい加減耐え切れなくなったんだろうか。


 ま、いいだろう。邪魔な物はどけるまでだ。

 と、俺は思いっ切り持ち上げようとし――俺の手は何か柔らかな物体をつかんだ。ん?なんだこれ。あまり大きくはないようだが、二つ……あるのか? いや、繋がってる……? でもここは柔らかくないな。骨っぽいというか――ん? 骨?

 上にのしかかる不行き届きな物体が一体何者なのか確かめるため、俺はそこら中をまさぐる。しかし、それが何なのか理解した時、俺は悲鳴にも近い声を上げてしまった。


「あ、朝比奈ぁ!?」


 俺は飛び起き、辺りを確認する。すると成程、ここは俺の部屋ではない。そういえば、昨夜は二人でアレコレしてたな…… そうか、俺、あのまま寝てしまったのか……

 先程何を触っていたのかは――うむ、考えてはいけない。あれは新たな黒歴史として記憶の奥底に封印しておこう。

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