日夢インフラ事情 その1
ムー帝国帝都ヒラニプラ郊外 ヒラニプラ国際空港
とはいえ、三帝らが転移してくるまで軍民共に実用的な(高度1万以上を飛行可能な)飛行技術を有するのはムーだけで在ったため国際空港とは名ばかりのまあ、数年前までの羽田空港みたいな状態だった。
ここに、一機の大型機が降り立つ。
転移前に転移のことを知らされたおいらがヒーローが、餞別として贈った数百にも上る同国からじゃないと新製品が手に入らない物の一つ。ボーイング・ダグラス社製旅客機の最新型B747-800型日本特別仕様機(IHI製JF12型高効率ターボファンジェットエンジン採用)の1機である、日本政府専用機だ。
降り立ったのは大日本帝国第125代天皇晶仁その人である。皇后である美知子陛下も降り立つ。
「ようこそムーへ。」
「かようなる、盛大な歓迎に感謝いたします。」
ムーの外務大臣サーナが出迎える。彼女も皇族である、継承権は4位ながら、外交を司り、父である工程からの信任も篤い。
彼女の案内で、ヒラニプラの中央にある皇帝宮殿に魔導自動車で向かう。
その車中、晶仁が胸ポケットから取り出した物にサーナが強い興味を抱く。
日本電機株式会社製多機能電話。読者にわかりやすく言うなら、NEC製のスマートホンだ。まあ、こちらでの略称はNECではなくJECだが。
NTTCPSとKDD-AUから発売されている、大人気の端末だ。
JECは、樫尾計算機と、日立電機総合製作所、μsoftと、共同で、この端末を作り上げ、その基幹部品としてのSOCと呼ばれる部品は英国の精密電子部品メーカークアルコムが、日本の富士通と共同開発した物を、OSにはμsoftと、KDD-AU、JECが共同開発したTron-Windという物が。カメラには樫尾計算機が販売する物の技術を使用し、ここに、Sunyが、自社のCMOS関連技術を提供し、世界で最も洗練されたスマホと呼ばれ日本では愛国心も働き、当初業界の黒船となったAphoneのスマートフォンシェアを発売時の8割から0.1%にたたき落とし、後に登場した他社機種も、Tron-Windを搭載し、WindOS系スマートフォンのシェアが日本においてのみ7割という驚異的なレベルとなっていた。
まあ、そんな事置いておいて、このスマホ転移後にあの素っ頓狂集団が連れてきた企業がスゴイ機能を一個追加してくれた。非基地局依存空間内自由移動通信。ようは。基地局が整備されていないところでもばりさんで通信できる優れものである。
「なるほど。見たところ通信速度もスゴイ速そうですね。いーなぁ。私のなんて魔信電文送信するのに100文字も書いてないのに30秒ぐらいかかるんです。これってどれぐらいなんですか?」
「1000文字で1秒ぐらいですね。写真などの添付があると3秒ぐらいかかりますが、これは端末の演算によるので送信自体はこれも1.5秒ぐらいでしょう。」
サーナが取り出したのは二つ折りの携帯電話。
「日本の人がうらやましいです。これにも魔法科学が盛り込まれてるんですよね。」
「ええ。通信には空間位相変換魔法が使われていて、別位相空間に設置された超大規模基地局群に通信しているんです。」
このとき晶仁が某つぶやくサービスに投稿を行って、スマホを自在に使いこなす天皇陛下として話題となった。
『すいません。燃料補給を行ってもよろしいでしょうか?』
ムーを筆頭とするこの世界の液体魔力燃料を使用する魔導自動車の燃費効率は結構悪く日本では、1L/45kmを達成しているのに対し、最も燃費が良いとされるムーでさえ1L/6km程度なのだ。
これには低燃費自動車に乗り慣れている天皇皇后両陛下も呆けるだけ。
護衛の騎馬に囲まれ燃料スタンドで補給。
予定より10分かかって皇帝宮殿に到着した。




