そりゃ、あんだけおいたしてればねぇ
この世界でも令和がスタートした。ただし、史実より32年も遅い、2051年から。
晶仁帝の孫である、悠仁が後を継いだ。
晶仁帝の治世は父である寛仁帝には届かない物の歴代第二位となる61年にも及んだ。
「息子より長生きする羽目になるのはなかなかに辛い物があるね。」
「故に私が、昨年践祚し、今年即位したわけです。私はおじいさまの孫であり、三人目の息子として扱っていただきたいです。」
「…この話はやめよう。」
「そうですね。」
帝都の松代にある皇居宮殿で二人が和んでいたところへ
[おいでですか?]
「今度は何をさせるつもりですか?」
[まずは悠仁陛下のご即位にお祝いを。
それで、そのお祝いに、この目録を。]
「……本気ですか?」
そこに書かれていた物を見た祖父と孫は呆れつつ素っ頓狂の頭領に問う。
[明日あたり和歌浦につくんじゃないでしょうか?
今日沖ノ鳥島新島に有る転界点を通過したのを確認しました。新島基地で調整を行い、一番遅い戦艦の航海巡航で和歌浦を目指すそうですから最短20時間はかかると考えられます。]
「現在の海軍艦艇全てを置き換え、更に予備としての部品を積んだお国の船を含めた数が、紀伊半島沖に集結ですか。」
苦笑いする悠仁。それに対面する素っ頓狂の頭領は急に無表情になり、
「併せてこちらも。熱田、伊勢、そして、諏訪に保管を。」
一振りの太刀、見たことのない金属で作られた金属鏡。そして、うっすらと、真円を形作る二つの内片割れの輪郭のような物が見える勾玉。
「これはまた。本物の天照。いや。別天津神の正体と言うべきですかね。三種の神器を再造くださるとは。」
[因みにその天叢雲剣は天皇家の男子にのみ。八尺瓊勾玉は天皇家直系の女子にのみ真価を発揮可能なよう設定済みです。]
先の転移の際に失われた皇室が持つ三種の神器。これを晶仁が遥夢に話したところ、[じゃあ、職人の手が空いたら作ってきますねぇ。]と、軽い口調で返した。
さて、今回はロンドンで開催となった、NG8(かつての地球国家が全部引っ越してきたこともあり、地球のG8もOG8として開催されている。)だが、顔ぶれが、前回と変わっている。というのも、列強5位が6位の国を、隣国通しだったこと、民族や、宗教的にも相通ずる部分があったこともあり、円満に吸収。
これにより7位と8位が繰り上がり、開いた8位に東方世界からコロンバス合衆国が招待され、ランドベル大統領が演説ぶっこいた。
そして、このNG8とOG8でお馬鹿が蓋をしていた西方世界への探査をしようという話になったが、日本にはそれ以前のことが降りかかった。
「今更かい。」
「今更ですね」
「今更こんなイベント、ありがたくもなんともないわ。そもそも、旧ベーリング海峡をよく抜けて来られたな。」
数百隻もの戦列艦が、北から列島に迫っているという話を聞いて閣僚皆さん一気に老ける思い。
「ムー政府から続報。海洋警察の停戦命令に従わなかったため警告の後、巡視艦による威嚇射撃を実行。外すはずが、向こうからあたりに来て、あっけなく沈没。その後対象船団は、巡視艦の制圧砲撃で全て沈没したとのことです。海上保安庁の制圧砲撃巡視船からも同様の報告。
ムー政府より、船団は北方世界の地域列強―帝国の模様とのことです。」
「戦列艦で、超弩級戦艦や大型空母を第一線はきつくなったという理由だけで、海洋警察にあっさり渡せるだけの余裕ぶっこける先進国にけんか売れると考えるその皇帝陛下のご高説を聞いてみたいもんだ。」
首相の言葉に頷く閣僚。
数日後、前回よりも大規模な船団がやってきたらしいが、今度はロシアの水雷戦隊8隻に挽きつぶされたそうな。
そもそもなぜそこを抜けようとしているかと言えば、おそらくとムーが付け加えた上で、世界魔導逓信に載った、ムーの声明を信じず、日本を自分の物にして移動しようとしているんじゃ無いかと言った上で、すでに、ロシアと合同で懲罰軍を差し向けましたと、ムーの皇族でもある、サーナが笑顔で告げたため、皇居で開かれていた御前会議の出席者は頭痛が痛い状態となった。
更に数日後、ロシアからでっかい木箱が届いた。
ロシア皇帝が、直筆で「懲罰軍が捕らえた珍獣です。是非とも日本の皆さんにも見て欲しいので。」
と書いた外板を外せば、毛布とロシアンシルクの布にくるまれた、大きな檻が出てきた。
布を外すと、豪奢な服を纏いでっぷりと太った男が4人と中年女が2人。
外板の裏側には、懲罰軍のムー側司令官が日本政府に当てた、馬鹿皇帝と、正室と側室。そしてその子供3人を捕らえたので、立場を分からせるために送ると書かれていた。
新たに即位したばかりの悠仁帝は、この馬鹿面を先帝に倣い自分が世間に発信した。これを見た国民は怒りよりも呆れが先に来たという。
6人の言い分はもう鉄板な事ばかりなので省くが、どうするかを検討した結果、ムーにぶん投げることにした。
「疲れました。」
千代田区宮城で、肩をもみほぐしながらぼやく悠仁帝。
「おじいさまが築いた国はこれほどなのですね。」
[晶仁帝の代でできたわけではないです。ここまで国を発展させたのはそうですね聖勤帝の御代から朱雀帝の御代にかけての1万年。特に桓武帝からの最後の100年はすごかったですよ。
あ、ロシアンシルクはこちらで丁寧にクリーニングしときましたから。
それにしてもお国のアリューシャン艦隊がしずーかなのは不気味ですねぇ。]
日本には北から第4艦隊、第5艦隊、第1艦隊、第2艦隊、第3艦隊、第6艦隊が配置されており、それぞれ、アリューシャン艦隊(第4艦隊)、オホーツク艦隊(第5艦隊)、本土艦隊(第1,第2艦隊)、南洋艦隊(第3,第6艦隊)の愛称がつけられ、有事には本土艦隊と南洋艦隊は一つの連合艦隊を形成する。
ちなみに前章で登場した艦隊は第6艦隊に属する。
「第4艦隊は北方調査で出航中です。」
「例のお馬鹿をそそのかしたのはガキ大将だったと。」
「おおかた日本憎しでしょうね。逆恨みもいいところですよ。それにしても、国としてやっていけないほどのダメージと書類回収した上で党中央は軒並み処したんですが。」
NG8とOG8(全部合わせると16だが3カ国が二股しているため)合わせてG13の席上で各国の代表がため息交じりに話し合う。
日本代表の安達総理は、頼れる仲間である、英国のローリング首相やロシアのイワノフ宰相、ムーのローガ第4皇子に助けを求める視線を向けたところ、英露から「いっそのこと、あの国の国土消すか?」とオブザーバーである暇人代表、銀色オッドアイに話を投げる。「………。」
沈黙を返すおっどあい。
「いや、反応してくれよ。」
「…投下許可を確認。領域指定、起爆時間指定、浸食対象指定を完了。蝕弾頭を投下します。…弾頭臨界を確認。起爆します。浸食完了まで15分。」
「「は?」」
いきなり、起爆しますと言われたら誰だってそんな反応を返すだろう。
「すでに会議開始前、日本の第4艦隊が帰投したときには投下が決まっていましたが、ここは皆さんの意見も聞いとこうということになりましたのでただいまのタイミングとなりました。」
暇人どもが差し向けた観測機が、映像を送ってくる。
それは国の外周から起きた。最初から無かったかのように、どんどんと消えていく。
木が、家畜が、人が、建物がどんどんと。人を含めた動物は何が起きたかわからないまま、存在が消え去った。ん?チベット?独立国ですが何か?台湾?最初から日本の領土なので一緒に転移しましたよ。トルキスタンも独立国。
そんなガキ大将の領域が消えていき、残されたのは首都である都市だけ。
「最終臨界は今から1095日後です。彼らが最後の千日をどう過ごすかを見守るとしましょうか。」
うっすらと笑みを貼り付けた無表情で、なにやらすごいことを宣うこの銀色美人。
このガキ大将が無くなると地球から転移した国の最西端はけんかしてるのか仲良しこよししてるのかわからないが、日本が大嫌いということは一致している半島…あ、もう島になるのか。あそこだけになる。この半島、資源を全て、ガキ大将から融通してもらっていたから、どうなることやら。
「あ、日英露を始め、他国籍の方は現在、元を問わず国籍国に転送しました。そうしないと、姉がうなされるので。」
嘘である。姉こと、銀色民族衣装は「転送?識別面倒だし、大使館が確認しているやつだけ送ったら後はひと思いにやりんさいよ。好きでここに居るんでしょう?」
と宣うレベル。はっきり言って暇人連中がいなきゃどうでもいいという考えである。
「5秒前、2,1,弾頭最終臨界。起爆します。」
この1時間後4千年と歴史しか誇る物がなくなりかけていた暇人連中曰く田舎のガキ大将は名実ともに過去となった。
腰巾着の半島は島となりライフラインはどうしようと考え、30年前に恥をかかせて手を切った、おいらがヒーローにすり寄った。
G13はこれにあきれ、完全な手切れ金として、一定期間は持つ量の資源を送り、その後王国がEEZの外側に行き来不可能の結界を張った。
だれも腰巾着なんて眼中に無かった。
お久しぶりです。
昨年はリアルのお仕事上でいろいろあり結局2年以上ですか。
そのうち、セルフで「筆者失踪」タグつけるかもしれませんが、私のスタイル上半年以上空くのはざらなのでよろしくお願いします。




