御上対御上対御上
「「……あのー。」」
「「……すいません。我々も何がなにやら。」」
扶桑皇国南洋トレーラー諸島最大の島にある5階建ての鉄筋コンクリートと煉瓦造りの建物で大和民族2国家同士の会合がもたれた。
のは良いのだが。
「おい。なんで陛下がこちらにおられる。」
「申し訳ありません。大本営に問い合わせても、何もわからず。」
と、慌てる扶桑側と、
「なんかすごい雅ーな人来たぞ。」
「どうする。こっちはどんなに爵位高くても伯爵だぞ。」
と、見当違いな話し合いをする日本側とおもしろい状態だった。
そんな両勢力の間でスゴイしてやったりな表情のまだ幼さが残る若い女性が一人満足げに座っていた。
「申し訳ございません。陛下が、参加なされるという連絡を受けておらず、陛下のご観覧に見合う会場を用意するに至らず、不徳の致すところでございます。」
藤堂中将が頭を下げられたお方は、
「大日本及びムー大陸連合帝国海軍東方探査特別艦隊諸氏にご案内します。こちらにおわします御方は、我が扶桑皇国元首、当代天皇裕子陛下にあらせられます。」
日本軍の面々見事に椅子からずり落ち、立っている者はずっこけた。
[「あははははははは。」全員大阪出身というわけじゃ無いのに見事なずっこけデスネ。]
私と陛下以外には内藤准将しか女性が居ないはずの空間に、別の女性の声が響く。
「何やつぞあるか?」
陛下が問うも、扶桑側はわからずという顔。
「…もしかしたらあっちならわかるかな。」
内藤准将がつぶやくと日本側の代表に一声かけて中座する。
その後、すぐに戻ってきた内藤准将の後ろにいたのは、確か須藤少将だったか。
少将はそのまま日本側の代表から軽い説明を受けると、部屋の中を見回して、ある一点を見つめてため息をついた。
「統帥。そこで何をなされておられたのですか?」
[山本からなにやらおもしろい会談があると聞いたので、うまくやれば国内でかなりだぶついてる金全部片付くかなと思って、聞いてました。そしたら、新喜劇顔負けの見事なずっこけを現職軍人の皆さんがかましてくれたものだからおもしろくて。]
「そうでしたか。ひとまず降りてきてください。」
少将の目線がゆっくりと下がり、止まると少将の正面にとても美しい女性が現れる。
「ご列席各位にご紹介いたします。こちらは、当国全軍を指揮する、最高司令官にして当国国家元首、第三代主師国主国王。ハルナ・リールシェル・ランゲルハンス…なんですか。」
[どうせなら、自分で名乗らせてください。]
「それもそうですね。では陛下お願いします。」
陛下と呼ばれた女性が優雅に礼をする。
[エー。ご紹介にあずかりまして、まあ紹介の通りなんですが、せっかくなら名前一通り聞いてもらいたいと思いまして。―王国軍最高司令官総帥兼国家元首第三代主師国主国王をつとめております、フェドレウス・ハードルナース・ホルト・ハルナ・リールシェル・ランゲルハンス・ラーニャラムージャ・テルス・キーク・ソウラ・ラルストムージャです。以後お見知りおきを。ところで、少将は気づいてましたか?]
「ええ。もう呼ばれなくても部屋に駆け込もうと思うぐらいに。」
場を置いてけぼりにして二人の会話は続く。が、
「ひとまず、扶桑と王国が元首来ていて日本は軍の艦隊司令が最高位というのは、不公平ですね。呼びますか。」
[じゃあ、かけますね。]
「そんな理由で呼ばれたのですか。」
[だって不公平じゃ無いですか。]
たったそれだけの理由で、他国の国家元首に電話をかけ呼び出し、強制的に連れてきて、この程度の文句で済む影響力を持つのは彼女だけだ
[ジャ、自己紹介をお願いします。]
「ふぁ?!」
[ふぁ?じゃなしに自己紹介。]
何も前振りなしに自己紹介しろと言われたら誰だってそうなる。
「まあ、あなた方の無茶ぶりはいつものことですが。後でお話があります。」
[東方世界に関しては今の今まで何も知りませんでしたよ。]
「そうですか。では。
扶桑皇国の方々にはお初にお目にかかります。
大日本及びムー大陸連合帝国元首の晶仁です。よろしくお願い申し上げます。」
晶仁の柔らかな物腰に扶桑の面々は多少戸惑った様子である。
[これで役者は強制的にそろえましたね。じゃあ、僕は端っこで見物させていただきます。]
そんなわけで会談が始まった。
この会談で、日本の扶桑対央領の戦争への参戦が決まった。
併せて、官民合わせた技術提供が決定した。
次回、私は語らない。何せ地理についてはとんと疎くて。