なんかよ―分からん
「国交を結ぶという表現より再会に期して国交も再開するという表現の方が良いと思いますよ。」
日本の外務大臣の言葉に涙を流す女性。
「一万二千年の長きにわたり別たれていた両国のきずなが。いえ。長きにわたり離ればなれとなっていた姉妹が今この世界で再開し、再び。」
数日前横浜に入港した一隻の汽船と横須賀に迎え入れられたそれを守るように来た護衛艦。
「我が国からは技術を輸出し。」
「そして我が国からは観光資源と、魔法鉱石をということですね。」
そこまで言ったところで、にわかに女性側の顔が暗くなる。というか黒くなる。
「とまあ、ここからは先達として、この世界の列強として君臨してきた者として情報を無償譲渡しましょう。」
「よろしいのですか?」
「もちろんです。
我が国の北と西を囲むかのようにかつての神話に記された島々が現れ、そしてそこに住まう人々の名を聞いたとき我が皇帝陛下の意は決していました。
かつての姉妹である、大和と共に、この世界で生きていくために、可能な限りの情報を渡そうと。
日ムー友好条約締結は、貴国が、この地に転移してからの我が国の悲願でありましたが、お願いをするに当たり、可能な限り失礼の無いレベルの船を見繕うのに2年はかかってしまいました。」
日本に囲まれるように浮かぶ巨大大陸は全て、ムーという単一国家であるという話を聞いても日本側の外相は驚かなかった。むしろ目を輝かせていた。
『麻生△www』
それが、彼の内心だと後に語った。
「いえいえ。おかげで、国内情勢を落ち着けることができました。ところでもしや、貴国では魔法文明が最高に達し、それを元に機械文明にシフトしている最中なのですかな?」
「ご明察の通りです。」
「なるほど。故に魔導エンジンを使用した汽船などと言うなかなかにいびつな取り合わせなのですね。」
彼の言葉に首を傾げるムー人女性。
「なにかおかしなことでも?」
「いえ、燃費効率が悪いだろうなと思いまして。」
「よくご存じで。そうなのです。」
いやー困ったどうしようという顔のムー人女性。
「どうぞお入りください。」
[本当に入ってよろしいのですか?岸畑外相。]
入ってきたのは、あの素っ頓狂の頭領。
「…一体。」
「私よりもあなたの方が身分としては近しいのです。陛下、こちらはムー帝国外務大臣で現皇帝陛下の第3皇女、―殿下です。」
[そうですか。ハウズ・ムー・タルカス・デ・サ・カスクジ・サーナ・イ・ムー・ダク。ミ・エル・ソウリス・エル・サンカルイハス・デ・サ・クストシア・エル・キーク。フェドレウス・ハードルナース・ホルト・ハルナ・リールシェル・ランゲルハンス・ラーニャラムージャ・テルス・キーク・ソウラ・ラルストムージャ、タ・メスタ。アグ・ヤクサ。(初めまして、ムー帝国第三皇女サーナ・イ・ムー殿下…名乗りに関しては省略…以後よろしく。)]
「神の言葉。大和の発展の裏には神がついておられると、神秘省の長官が話していましたが誠だったとは。」
再び感動し、今度は直立不動のまま動かなくなるムー人女性ことムーの外相。
「いきなり古語はまずいのでは?」
[ナド?…話戻しません?確か、魔導エンジンを使った汽船の燃費効率が悪いという話だったと聞いていますが。あ、どうも。]
強引に話を戻され困惑気味の岸畑。だが、さりげなく椅子を引く当たり、紳士である。
[魔導エンジンは基本的に木造船など精々重くても千トンレベルの軽い物を動かすための物です。
ですが、あの船は3万トン。護衛艦も最も軽くて2千トン有りました。
魔導エンジンは、最大出力で大体100トンの物を16ノットで2万km動かすことができます。
おそらく貴国の技術者はその考えを元に出力を強化した物を皇族専用船に4機。護衛艦で2機積んだのでしょうが。
これだとどんなにがんばっても一つの燃料鉱石が破滅するまで、10ノットで512kmが良いところでしょう。
これに関する解決策は既に日本が持っています。日本の船舶用機械補助式魔導術式エンジンは15万トン級艦艇を、満載状態でえっと…巡航40ノットで38万kmの燃費を誇ります。さいていでもです。日本は既にこの技術を2百年前から運用しており今では同サイズのエンジンで皇族専用船なら20ノットで12万km。護衛艦に至っては30ノットで20万kmはでますね。
今日は、何故か、それを、それを総務省と、国軍省から持ってけってお使いみたく渡されたので、とにかく渡しておきます。それと、日本と国交再開したら自動的に我が国とも国交締結となるのでご了承を。]
それだけ言うと彼女は部屋から出て行った。