残された国は そして日本は
「大統領、日本大使と英国大使から両国元首の親書が届けられました。」
アメリカ大統領のロナルド・トムソンの元に届けられた二通の手紙。
今は無き超大国3国のうち二国から届いた物だという。
「確か三帝五王は中国、朝鮮とは、完全に縁を切ったのだったな。」
「はい。」
遠い目をして窓の外を眺める大統領と補佐官。
日英を初めとした十数カ国が転移した後の世界は大きく地理的にも政治的にも様変わりしていた。
「欧州は中心となる国家が消えEUが瓦解しかけている様子だな。」
おいらがヒーローは、一切眼中にないが、田舎のガキ大将は、俺は強いと言わんばかりに、拡大しようとしたら金無くなった。
「それにしても…えらい太平洋がすっきりしたな。」
「そりゃ北太平洋の島々は日本領でしたし、南太平洋は英国領でしたしねえ。」
大きく面積を減じた、ユーラシア、北アメリカ大陸。そして、ロシアの転移によって、名実ともに島…じゃなかった大陸とこしょうされるにふさわしい状態となった欧州。が、この世界の中心であった。
その中でもアメリカは、我々の知るアメリカからアラスカとハワイを含む太平洋上の領土を減じた形ながら、人口、都市数は倍であり、さらに、この世界で唯一転移した国家と通信する権限を有していた。
インターネット上でこのニュースが流れたとき、世界中の人々は、「日本は本来の世界に帰ったんだ。」と自分に言い聞かせるような書き込みをする物も居れば、「もう、あのすばらしい国へ行くことができないなんて。」と嘆く者も居た。ただ、日々アメリカを通じて世界に流れる転移した国家からの転移先の情報は、下手なファンタジー小説よりも面白く、人々を魅了した。
日本が消え去った後で、鯨の仲間が全て消え去ったことに世界中の動物愛護団体は首を傾げたが、それ以上に世界に衝撃を与えたのはスズキの仲間の魚が北東太平洋と北大西洋以外の海から消え去った上、田舎のガキ大将周辺の海が真っ赤に。紅海なんて蒼いと言えるほど鮮やかにもうまっ赤っかに染まったことだろう。
西暦2023年 日本 帝都信州
転移から2年。国内情勢や共に転移した国々との調整などが落ち着いた日本は、いよいよ、この世界の探査に打って出た。
「まあ、気にはなっていたが、これが、あのオカルトとか都市伝説で有名なムー大陸とはな。」
現代文化に内閣で最も精通している副総理兼財務大臣の麻生慎太郎が閣議でつぶやく。
「麻生さん、そのムー大陸というのはどういう物ですか?」
他の閣僚からの問いに麻生が説明すると。
「もしかすると過去、我が国と国交があった可能性が。」
「しかし我が国成立の1万年前に消えたとなると。」
「あの国に聞けば良いんじゃないか?」
「「それだ!!」」
善光寺近くにある、彼の国の大使館に使者が訪れた。
「松本に資料がありますよ。それと、もっと詳しく知るものがあと3時間ぐらいで松本に来ます。」
彼の国の大使が言う松本とは、松本の遥か上空にある彼の国の軍事基地のことである。
松代 皇居
「わざわざここまでお疲れ様でした。」
「松本で思いっきり、こちらの閣僚の皆さんからムー大陸に関しての質問攻めに遭いましたからね。」
若干笑ったような声音で無表情に語る彼の国の宰相。
「ムー大陸について私にも教えて戴けませんか?」
晶仁帝に請われて松本で話したことを話す。
そのころ
日本に囲い込まれるように存在する大陸の西の港から日本から見れば数十年前レベルの汽船が何隻か出航した。