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馬鹿の結末

豪州大陸南方6000km 地域列強サンダルタン王国沿岸。

例の調子こいてNG8第2位の英国領を強襲占領して、それに勢いづいて隣国侵攻したまあ馬鹿である。

まあ、強襲占領していた部隊は真っ先に通信設備を破壊され、その上でなぶり殺しにされたので、まだ、この占領と侵攻が、NG8にばれそうだと言うことぐらいしかこの国の上層部は認識していない。

「あーあ。暇だなあ。なんで俺、見張りやってるんだ?」

しりません。

「しるかよ。だいたい、おまえが、アリもしない列強上位の南進を進言するからだろう。おかげで俺まで見張り番だよ。」

「だいたい8大列強は全部鉄でできた船で戦ってるていうのに。いくら地域列強と呼ばれてちやほやされたって、こんな木造船じゃあ意味がないよ。」

「俺にぼやくな。ったく。おまえの責任だからおまえに後は任せた。俺は寝る。」

この同僚も大概である。

「あーあ。こんな平和ぼけしてて良いのかねえ。」

彼が帆船のマスト上にある見張り台でぼやいた直後、北の水平線で何かが光った。

見間違いかと思ったが、上司がちょっとしたことでも報告しないと烈火のごとく起こる人物だったので、足下に置いていた望遠鏡をとろうとして見張り台の中に体を納めたのがよかったのだろうか。

「あった。ってあれ?俺落ちてる?」

見張り台と一緒に着水した彼ことサンダルン王国海洋騎士団准小隊長のオットー・ハリマルク青年。

まじめに不真面目を標榜する彼は、見張りにつく際に見張り台の入り口を閉じていたおかげで、見張り台が船となり、助かった。

「つー。見張り台が救命ボートってのは笑えない冗談だよ。なあ、…起きろねぼすけ。」

寝ている同僚をたたき起こしって、よくもまあ、寝ていられるよなあ。

「交代か?」

「敵襲だと思う。見ろよ。船が跡形もない。いや艦隊が跡形もない。まあ、ご都合よく艦隊には俺たち二人しか居なかったけどな。」

「俺の刺繍。」

誤字ではなくこの同僚君本当に刺繍という高尚な趣味を持っており、その腕前は王宮に献上しても申し分ないとまで言われるレベルだった。

「お?…。おお。おい相棒、これ。」

オットー青年が相棒こと同僚のユシュア青年に差し出した木箱。それを開けたユシュア青年は驚きつつも信仰する神に祈りを捧げた。

そこに船が波を切って走る音が聞こえてきた。


「前方500に生存者とおぼしき男性二名。確保します。」

大日本帝国海軍駆逐艦浦風は、同行するかの国の艦隊が砲撃した後、連合艦隊旗艦長門から生存者救出の任を受け、敵木造船の残骸が散らばる水域にさしかかっていた。

「でっけー。」

オットー、ユシュア両青年は、自分たちのすぐそば。とはいえ安全のため数十mは離れているが。停止した、巨大な金属船を見上げ、放心していた。

『お二人のうち、けがを負った方、体のどこかに強い痛みがある方はいらっしゃいますか?』

流暢なサンダルン地方共通言語。両青年が首を横に振ると。艦隊に積まれていた上陸用小型船と比べ倍程度の大きさの船がやってきて二人を優しく迎え入れると、目の前のでかい船へ誘った。

そして、

「「…でけえ。」」

もっとでかい船がそばに来ていたことに初めて気づき言葉を失ったのだった。


「じゃあとっとと、事を進めますか。」

帝国陸軍野本中将率いる、サンダルン地方侵攻部隊は、海軍の手厚い艦砲射撃に守られ、なんと、王都のすぐ近くまで安全に進むことができてしまった。

「最大射程距離2000kmか。」

王都は大混乱だった。が、おおむね、また王家がやらかしたのだろうと言うことで収まりつつあった。それだけ信用がなかった。いや。ある意味では信用されているのか。

「あの報道からわずか5日で、ここまで来られるとは。騎士団は何をしておったのだ。」

「近づこうにも、あのようにあやつらの周りには弾丸がまるで壁のごとく降り注いでおり斥候が粉みじんになって帰ってこないため状況がわからず攻めあぐねているようです。」

宰相の答えに、ぎりりと歯ぎしりしているところへ皆様おなじみスタングレネードが放り込まれまして、あっさりお馬鹿の頭領二人は捕らえられたのでありました。

ところで、なぜ彼らがこうもあっさり帝国陸軍に捕まったかと言いますと、なんとまあ、お城で働く者達からもこの二人信用なく家族にすら見捨てられている始末。

二人を捕らえに来たと言ったら自国人では王や宰相は不可侵故に捕らえることはできないという法があるが、異国人なら自国の法は関係ないかと言うことであっさりと騒ぎになることもなく通されたという何ともざるなお国なのであります。

因みにもう一人のお馬鹿こと大将軍は西の隣国へ攻め込んでいたところをこれまた信用がなかったようでありまして。

後ろから通された帝国陸軍の女性兵にフライパンで全身をしこたま殴りつけられ、その際に、男としての機能を完全に喪失してしまったようであります。

その後まるで原始人が捕らえた獲物を運んでいるポンチ絵みたいな格好で、東の陸軍駐屯地まで運ばれた後、そのままの格好で、王都までトラックに乗せられ運搬された上で、国王や、宰相とともに、

「私は愚か者です大いに罵ってください。」

と書かれた札とともに一人一本丸太に後ろ手でくくりつけられ、王都の広場にさらされたのであります。

さらされた直後からそこは連日大いに賑わいまして、三馬鹿は大いにプライドを傷つけられたのです。


そろそろ戻すか。


その後だが、3馬鹿のあとをそれぞれの子供が後を継いだら、あの親からどうやったら、こんな子が生まれるのかと言わんばかりに聡明で、隣国への謝罪と、王太子と、宰相嫡男(ともに新がつくが)の隣国と日本英国への留学という名の謝罪を含めた人質としてという人事に隣国も英国も溜飲を下げたが、日本はこの二人よりも先に救助した2人の青年を留学させてほしいと告げたという。


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