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3、月光狼との出会い

「あの」

「……お前は」

「え?」


突然立ち上がった狼に驚いて声を掛けるけど、それを遮られて何かを呟いた狼に私はポカンとしていた。


「お前はどこから来た」

「へ?え、あ……」


口ごもる私に狼は、はぁ……とわかりやすくため息を吐くと、

「まぁいい、礼はする。」

といった。


「あ!そうだ!傷は!?」

はっと思い出して詰め寄ると狼はうざったそうに尻尾で私を押し留めると、泉の中に飛び込んだ。


「ええー!?」

あまりのことに叫んでいると、

「うるさい。少しは静かにできないのか」と泉から上がってきた狼に窘められてしまった。


軽く身震いをして水気を飛ばすと、その美しい毛並みに私は今度こそ本当に見とれた。

血が落ちて、綺麗になった毛並みはいつの間にか昇っていた月光に反射して、静かな紫銀の輝きを放っていた。


「……その様子だと、本当に我のことを知らぬのか……と、いうよりも、そもそもが違う世界の住人ようだな。

礼だ、教えてやろう。ここは、魔法の世界、エルフィール。

そして我は、《月光狼ルナ・ルプス》。その最後の生き残り。」


「なんで月光狼ルナ・ルプスはそんなに有名なの?」

彼の目に映った昏い影に私は気づかぬふりをして、質問を重ねた。


「……この世界には、人間だけではない知的生命体が多数いて、そのそれぞれが独特の文化を持ち、魔法を発展させてきた。我らの種族も最古の種族として、数は少ないながらも知恵と強力な魔力でもってそれなりの地位にいた。

だが……」


そこで彼は一度言葉を切った。


「人間の嫉妬とはげに恐ろしきものだ。

人間は我らに怯え、強力な魔法を編み出し、突然我らの群れを襲った。」


「な、なんで……?」

言葉が出なかった。


「簡単なことさ。人間は、自分と違うものを恐れる。そして、それを支配下に置きたがる。

……もともと我の種族は排他的な傾向があって、あまり多種族と交流を持っていなかったのもあるがな。

そんな我らを人間は自分たちを襲うのではないかとありもしない不安に駆られ、疑心暗鬼になり、消そうと考えたのだよ。

まぁ、どうやら他種族に人間の力を見せつけて、支配下に置きたいというのもあったらしいがな。」


自嘲めいた口調でそう言うと、目を丸くしている私を見て苦笑に変わった。


「そんな顔をするな……お前は優しいんだな」

そう言って狼はペロリと私の頬を舐めた。


思いがけない行動に目を丸くしていると

「さて、それよりお前にこの世界の説明をしなければな。」

と言って、横に座り込むと説明を始めた。(でも、おっきいから目線は同じくらい)


「この世界では、イメージがすべてを決める。つまり、イメージ力が強いほど使える魔法が強くなるってことだ。だが、ある程度の魔力は必要だし、イメージ力と同じくらい魔力の質が重要になってくる。とりあえず、ここまでわかったか?」

「う、うん。」

「で、見たところお前は全てにおいて人間としては異常に高い。あと、お前のその姿……」

「姿?」

「ああ、それはもともとのお前の姿か?」

「ううん。本当の私は髪も目も黒くて、多分この姿よりもちっちゃいよ。」

「なるほどな。」

なにか納得したように頷くと説明を始めてくれた。

「その紅を含んだ銀の髪と、雷好虫の光のようなその瞳。それは、この世界に伝わる伝説の光の巫女の姿。この世界の危機を救う……」

「えっ?!」


もう訳がわからないよ~!

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