2、衝撃の事実!
「ん……んぅ?」
風が吹いて来て目が覚めた私は、直前のことを思い出して飛び起きた。
「あ、葵ちゃん!?ひーちゃん!?どこっ!?」
しかし、私の目の前に広がっていたのは
「……え、草原?」
どこまでも広がる青々とした草原だった。
あたりを見回してみても、誰もいない。
「どういうこと……?」
とりあえず立ち上がってみるとフラフラとして、違和感がある。
「?いつもより地面が遠い?」
何度も躓きながら人を探して歩き続けていると泉を見つけた。
小さな林の中にあったそれは滾々と湧き出ており、澄みきっていておいしそうだ。
「のど……乾いた」
そして、泉の上に屈んだとき信じられないものを見てしまった。
「だ、だれっ?!」
水鏡のようになった泉に映っていたのは私ではない誰か
桜の花びらのような薄い紅色の銀糸の長い髪
蛍の光のような薄黄緑の瞳
やけに整った顔立ちをしていて、不思議そうにこちらを見ている。
「えっと……こんにちは?」
とりあえず水の向こうの美女に挨拶をしてみるも、相手も私とまったく同じように口を動かした。
「……まさか、これが私?!」
なにがなんだかわからなくてポカンとしていると
ガサッ
「?!」
後ろの茂みから音が聞こえて飛び上がってしまう。
そこにいたのは、
「ぐるる」
「お、狼?」
綺麗な白銀の毛並みをして、金色の瞳をした美しい狼だった。
とても大きく、体高は私の身長よりも大きかった。
「ヒャッハ―!!」
そして後ろから現れた緑色の醜い小人たちが、私と狼の周りを取り囲んだ。
そして、雄たけびをあげながら手に持った刀や棍棒で殴り掛かってくる。
「きゃ……」
しかし、
「ぐぁうっ!」
狼が吠えて爪を一振りすると、あっというまに緑色の小人たちは斃されていった
でも……
「ぐる……」バタッ
「あ!」
低く唸っていた狼はバタリと倒れ伏してしまった。
慌てて駆け寄るとお腹のところに大きな怪我があって、そこからおびただしい量の血が溢れだしていた。
「ど……どうしよう」
ここがどこかもわからないし、もちろん医学の知識なんてないし……
そのとき、
「……お前は……何者、だ」
「え?」
息も絶え絶えだが、気高い誇りを纏った声が聞こえた。
「だ、誰が……?」
あたりを見回しても自分と狼しかいない。
「まさか……ね」
しかし、選択肢は1つしかない。
「……今話しかけたのは……あなた?」
「……我の声が聞こえるのか……」
……返事が返ってきちゃった。
「聞こえるよ。……どうしたらあなたを助けられるの?」
とりあえず色々言いたいことは飲み込んで、今一番重要そうなことを聞く。
「……そんなことも知らないのか?」
ほんの少し驚いたような響きを滲ませた狼は一瞬でそれを消し去り、こういった。
「望め。何よりも強く」
「え……」
そんなこと言われてもよくわかんないんだけど……
でも、さっき助けてもらったし
ギュッと目を瞑って狼の傷が綺麗に塞がるところを想像する。そして、願う。
―この狼さんの傷を治して。私は、恩を返さなきゃいけないの
どれぐらいそうしていただろう。ふっと、膝が軽くなって目を開けると、狼が立ち上がってこちらを見ていた。