1、日常の崩壊
「ん~今日も楽しかった~」
「ふふ、でも、ほどほどにしとけよ?なんていっても私たちは大学受験を間近に控えた受験生なんだからな」
「うっ…」
「あはは、安心しなよ、いざとなったら俺が教えてあげるから」
「わ~!神だ!」
とある休日の夕方、夕闇の帳に包まれつつある町を私たちは談笑しながら歩いていた。
私、雪乃螢はもう少しで大学受験の高校3年生。
髪も目もいじったことがないし、勉強は中の下、運動はあんまり得意じゃない。
趣味はゲームの要するにどこにでもいる、フッツ―の凡人高校生である。
「もう、あんまり雪のことを甘やかすんじゃないぞ。」
そしてこのハキハキ物を言うポニーテールの女性は四神葵
小学校の頃からの親友で、剣術道場の一人娘であり師範代でもある。
いつも竹刀ケースを背負ってるんだけど、それがないと落ち着かないとか。
……実は竹刀ケースの中の竹刀には真剣が隠されてるんだ…………3人だけの秘密だけど
ってか、どこで手に入れたんだろ……?
しかも運動神経抜群で頭もいい、いっつも試験が10番以内に入ってるんだ。
涼しげな目元と、すらりとしたプロポーションで怜悧な印象の葵ちゃんはなぜか男子より女子に人気があるんだけどなんでだろ……
「甘やかしてなんかないよ、葵」
で、この無駄に背の高いちょっと中性的な青年は日向怜
こっちは保育所の頃からの親友で、ハーフなんだって。
緩いウェーブのかかった淡い金髪に空色の瞳、真っ白な肌。
それで、頭がメチャメチャよくて、いっつも1番なんだ~……うらやましいなぁ
運動もすごいし……
イケメンで、みんなからキャーキャー言われてる。優しいしね。
つくづくなんでこの二人と友達なんだろうって思うな……
「だがな……」
「そうだよ、いいじゃんか~」
さらに言い募る葵ちゃんに対して、私がひーちゃんの加勢に入ると、葵ちゃんは
「……雪がそう言うなら…………」
と、しぶしぶ頷き、頭を撫でてきた。
「あはは、葵は相変わらず螢に甘いなぁ」
「……可愛いは正義だ」
「?」
意味不明だ……
なんて、そんなよくわからない話をしながら歩いていた。
――その時
ゴッ
突然周りが真っ暗になった。
……!!!違う、これは周りのものが消えたんだ!
それに気づいたとき、私たちはすでに底なしの暗闇の中に落ちている最中だった。
「雪!怜!」
「葵!俺は大丈夫だ。螢!」
「葵ちゃん!ひーちゃん!助けて!」
それぞれがそれぞれに手を伸ばす。
あと、3センチ
……2センチ
…………1センチ
―――三人の指先が触れ合った。
そう思ったとき、私の意識は途切れた。