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金曜の貴女に、100の花束を!

作者: アキバ サクラ
掲載日:2015/08/09



「……。」



気のせいかここ毎週金曜日は雨が降っている気がする。


そのせいか、店から見える人達はうんざりとした表情で明日を進めている。


「(なんだかなー…、)」



私的には雨というのはそんなに嫌なものには感じないな。



そんなことを思っていたらドアベルの音がした。


あ、もうこんな時間か。



「いらっしゃいませ。」



そう、金曜日には



「今日は、何がオススメですか?」



この人が来店する日だ。




「こんばんは、今日はトルコキキョウが綺麗に咲いていますよ。」


「じゃ、トルコキキョウと合うお花でひと組みください。」


「畏まりました。」



いつも決まったような会話が終わり、私は作業台へ、彼は店内を見回る。


それがいつもの決まったことだ。



職業は何かはわからないがいつみややよれたスーツ姿で来店する。


彼が来るようになったには確か3ヶ月前からだったと思うが他にも花はいろんなものがあるのにいつも同じ注文だ。


ま、何かあるのだろうとは思うが干渉してはいけないし、私的には今日はどんな花にしようか考えるのが楽しいくて密かなお楽しみにしてるんだけどね。



「さてと。」



今日はトルコキキョウが綺麗に咲いてたから淡い色の薔薇とデンファレの組み合わせでいくか。えーっと……



「すいません。」


「え、あ、はい。」



初めてかもしれない、喋りかけれたのは。



「なんでしょうか?」


手についてた葉を取り作業台から離れた。



「すいません、手を止めさせてしまって。」


「いえ、大丈夫ですよ。なにかありましたか?」


静かな雰囲気の割に低めの声は静かすぎる店内では聞きやすく、「嗚呼、この人ってこんな声してるんだ〜。」と再確認した。



「ただ意見として聞きたいのですが、小野小町って幸せだったと思いますか?」


「え?」



小野小町?小野小町ってあの世界三大美女とか言われてるとか言われてないとかの?



「どうおもいますか?」


「あ、えっと…。」



どう思いますかと言われても……。あ、そういえば。



「小野小町って好きな男性が人がいたけれど気がついてもらえなかって聞いたことあります。なのでやたらと周りからもてはやされても本当の気持ちがわかってもらえなくて幸せだったと聞かれたら私は少しそうとは言えませんね。」



確かそんなことを学生時代百人一首に授業で聞いたことがあった気がする。



「なりほど……、有難う御座います。少し気になったもので、手を止めてすいません。」


「いえ、しばらくお持ちください。」



一例して私は再び作業台に戻った。


「はぁー……。」



気がつかれないように一つ溜め息をついた。


「(なんだったんだろ、今の?)」



今までに経験のない質問で戸惑った。



その後は出来上がったお花を見せ、代金を貰い。いつものように帰っていった。



――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――




あれから一週間が経った。



「(今日も来るのかなー……。)」



あれから少し考えてみたのだが、やはり馬鹿な私には皆目見当がつかなかった。



小野小町と言われてもそんな歴史に興味を持つような人生も送っていないし。

もっと言うと暇があったら植物図鑑や色の組み合わせを見るような学生時代を送っていた、こう思うと学生時代にもっといろんなことに興味を持っておけばよかった。


「ふぅー……。」お客さんがいないことをいいことにひとつ溜め息をついた外を見ると相変わらず先週同様雨が降っていた。だが先週と違って見た感じ霧雨のようだ。



それにしてもこの時間帯ってお客さんが来なくて眠くなるんだよね、俗に言う睡魔との戦い。

ちょっとくらい……寝ちゃってもいいよね。


そう思うと隣に置いていたスマホに10分後にアラームが鳴るようにセットして眠りに就いた。



―――――……さん、



あれ?何か聞こえる。気のせいかな。



――――――て……さん、



気のせいじゃない?だけどアラームにしては変なの?そんな設定したっけ?



――――――……いさん!



ちょっと待った、この声って!



そう思うと次の声がした。



「店員さん!」


「はいっ!申し訳ありません!」



ハッとまるでヘドバンをするかのように起き上がったら目の前にはなんといつも来てくださっているというか先週少し悩むような質問をしたお客さんだ。


あれ?でも今日はよれたスーツじゃない。新品かな?そのネクタイの色好きだな。



「本当に申し訳ありません。」


ペコペコトこちらが謝っていると彼は小さな声の笑い声が聞こえた。


「あまりにも幸せそうに眠っていたので起こそうか少し迷ってしまいました。」


「……お恥ずかしいところをお見せいたしました。」


「いえ、いつもお疲れ様です。」



あー、穴があったら三日ぐらいいたい。


そんな事を思っていたら、



「今日はいつもと違うのですが今回はお金はかかってもいいので貴女が最高だと思う花束を作ってもらえますか?」


「え?……最高だと思う花束ですか?」



余りにも予想外の注文に聞き返してしまった。



「お願いします。」



深く頭を下げられてしまったので、こちらも少し吃驚してしまった。



「畏まりました。ではいつものようにお待ちください。」



そう言うとさっそく私は今日のお花を見て少し考えた。


今日はガーベラと先週同様トルコキキョウがいい感じなのでその2種類と薔薇とカスミソウでまとめてみるか。



――――――――――――――――――



「(出来た!!)」



私にしてはいい出来だと思う。


早速あのお客さんのところに届けよう。


そう思い包装とリボンの形を崩さないよう作業台を離れた。



「お客様、大変お待たせいたしました。」



届けに行き振り向いたお客さんは少しいつもとは表情が違った。待たせすぎてしまっただろうか?



「有難うございます。すいません、その前にいいですか?」


「?はい、なんでしょうか?」


なんだろうと思い聞いてみた。



「先週の質問ですが、小野小町のことです。」


「はい、」


「百夜通いって知ってますか?」



なに、それ?



「すいません、わかりません。」


そう言うと少し安心したような表情をした。


「ある偉い貴族に100日通ったら妻になりますといったらしく、だがその偉い貴族は最後の日に病になってしまい通うことができなかったらいのです。」


「そうなんですか。」



全くそんなこと知らなかった。てかなんでそんなことを?



「さすがに100日となると無理があったのですが。知らないと思うのですが今日で僕がこの店に通って“100週目”なんですよ。」


「あー……確かにそれぐらいになりますね。」


へーじゃあ誰かに告白でもするのかな?


そりゃあ毎週毎週仏花とかならよくいるけど、他で買いに来てて不思議な人だな……って思っていたけど成る程。てか、なんでご丁寧に理由も?まぁ、たまに話してくれる人はいるけど今までそんな感じはしなかったんでけどなー……。



「そういえば忘れていましたがメッセージカード必要ですか?それと花束のほうこのようなお色味とかで感じでよろしかったでしょうか?」



いつもの形式的な質問をするとクククッと喉の奥の方から小さな笑い声と共に溜め息をした。え、まさか噛んだ?



「なにか?」



気になり聞くと、



「よく、鈍感だと言われませんか?」


「え、特には?」



恐らく自分ではそう思ったことはないけどつい4か月前に別れた彼からは似たようなことをよく言われた記憶はある。


頭にはてなを浮かべながらいるとまた笑われた。




――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――




「―――――……2072円のお返しになります。」



なんのことで笑われたのかいまだわからずお会計に向かい、値段を言うとピン札の一万円札を払った。



「たしかに、」



いつものようにそう言って確認してから財布に収めている。

今時にしては珍しいくちゃんと確認する人だからいつもこっちも確認してから渡しているが違っていないか緊張してしまう。



「またのご来店お持ちしております。」



最後にそう言ってお見送りをする。

いつもだったらここで帰るのだが……



「すいません。」



本日は違うみたい。



「なんでしょうか?」



とはいってもたまに帰り際にたまに予約をしていくお客さんもいるから疑問はさほどなかった。




またさっきの歴史的な質問かな?そんなに知識がないんだけどな……困った。


そんなことを思いながらできるだけ顔に出ないようにしようとしていると。







「今、恋人はいらっしゃいますか?」



へ?


こいびと?コイビト?濃い人?鯉人?乞い人?あ、後ろ三つはよくわかんないや。



「え?」



分からずに自然と出てしまった馬鹿みたいな一文字に笑われそうな気もしたがどうも今回は笑われなかった。



「よければ、僕のこと少し考えてくださ。」



よく分からずにぼーっとしてしまっている時に、さっき私が作った花束を渡すと笑って外に出た。



「え!?えぇぇぇえっぇ!?!?」



帰ったことを確認すると糸が切れたように腰が抜けて声が出てしまった。










金曜の貴女に、100の花束を!




一週間後、彼はいつものように金曜日の夕立が降る中店に来て。



「どうですか?」



穏やかな笑みを浮かべて言った。








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