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第5話

「おお、沢井じゃないか。おはよう」


「おはよう真美ちゃん」


 声を掛けられた女子生徒に俺と江藤は朝の挨拶をする。


 この女子生徒は沢井真美。俺達2-1のクラスメイトで、演劇部に所属。何でも将来は女優になると言う夢を持っており、演劇部に入って日々猛練習している。


 因みに沢井は中学の頃からずっと演劇を続けている。個人的に剣道をやってる俺とは大違いだ。


「おはよう。それはそうと、朝練が終わって教室に向かってる最中に、鬼灯君が男子達に追っかけられていたんだけど何か遭ったの?」


「ああ、実は――」


 さっき起きた事を沢井に話すと、


「そんな事で鬼灯君は追いかけられてたの? 呆れて物が言えないわね」


 物凄く呆れていた。


 まぁ確かに女子から見れば呆れるだろうが、モテない男子からすれば錬のラッキーイベントは許せないからな。


 俺もモテないけど、彼女が欲しいとは思わない。独り身の方が気が楽で、友人と遊んでいる方が良い。そもそも俺みたいな男を好きになってくれる女子なんていないからな。


「ま、男子達がそんな事をするのを分かってた上で鬼灯君を煽る愛奈もどうかと思うけど」


「煽るって……まぁ否定はしないけどね」


 沢井の発言を否定せずに受け入れる江藤。


 この二人は友人同士で互いに名前で呼び合い、休日の時には一緒に遊んでいる仲である。


「江藤は錬に後でエッチなお詫びをするんだってさ」


「………愛奈、貴方はまたそんなはしたない事を……」


「もう、真美ちゃんは相変わらずお堅いなぁ」


 顔を顰めながら言う沢井に、江藤は少々溜息を吐きながら言う。


「堅い以前に愛奈の行動に呆れるわ。女の子が平然と男の子に体を触らせるなんて……」


「まあまあそんな事を言わずに。真美ちゃんも試してみたら? 例えば錬君に――」


「お断りよ」


 江藤が提案を言ってる最中に速攻で断る沢井。


 あのな江藤、セクハラ行為を沢井に勧めるなよ。普通の女子はそんなの嫌がるのは当然なんだから。ってか真面目な沢井が承諾する訳が無いだろう。


「あの変態に体を触られたら速攻で伸すわ」


「あらら……真美ちゃんは相変わらず錬君には容赦無いんだね」


「沢井って錬の事が嫌いだったか?」


「あくまで鬼灯君のスケベなところが嫌いなだけよ」


「そうか……」


 確か沢井はチャラチャラした男が嫌いだと言ってたな。前に江藤と沢井が“AMAGI”へ来た時、いかにも女好きな男が二人にセクハラしながらナンパした直後、沢井によってボコボコにぶちのめされてた。


 アレは凄かったな。あの時は俺や父さんが追い払うつもりだったんだが、先に沢井がやった事に呆然とした。聞いた話だと沢井は合気道を学んでいるそうだ。演技の幅を広めるついでに護身術としても必要だったからとか何とか。


 まぁ取り敢えず沢井はそこら辺の女子とは違って男子を簡単に撃退するほどの実力を持っている。普通に接していれば問題無いが、正直言って沢井は敵に回したくない相手だ。敵に回った直後に悲惨な目に遭うのは確実と言っても良い。


「………天城君、いま何か失礼な事を考えていないかしら?」


「失礼な事って何だ?」


「………まあ良いわ」


 ふぅっ。危ない危ない。沢井って勘が鋭いから下手な事は考えられない事をすっかり忘れてた。少し自重しないと。


「ところで真美ちゃん、放課後って部活は休みだったら天城君の喫茶店に行かない? 今あそこは期間限定のチーズケーキを販売してるんだけど」


「ごめんなさい。今日も部活があるから行けないわ」


 帰宅部の俺や江藤と違って沢井は演劇部に入ってるからそりゃ無理だな。


「なんだ残念。じゃあ真美ちゃんの分はボクが責任持って食べるか。天城君、二人分の予約をお願いね」


「待ちなさい。何で愛奈が私の分まで食べようとしてるのかしら?」


「え? だって真美ちゃんは今日は部活で行けないからって……」


「誰も食べないだなんて一言も言って無いわ。天城君、間違っても私の分を愛奈に渡さないように」


「俺がそんな事をすると思うか?」


 因みに沢井も江藤と同様に俺の父さんの作るお菓子が大好物だ。期間限定のお菓子と聞くと尚更に。


「残念だなぁ。折角ボクが変わりに真美ちゃんの分を食べようと思ったのに」


「勝手な事を言ってるんじゃないわよ、愛奈」


「まぁ取り敢えず沢井の分も予約するよう父さんに言っておくよ」


「ありがとう、天城君」


 江藤の発言に顔を顰めながら言う沢井だったが、俺が予約を取ると言った途端にこっちを向いて礼を言ってきた。


「因みにいつ頃来れそうなんだ?」


「明後日ね。その時は部活が休みだから」


「分かった」


 明後日か。確かその時は客が一杯来る日だったな。その日は絶対に予約をしないと食べる事が出来ない。


 俺が携帯を使って父さんにメールをしてると、



キーンコーンカーンコーン!



ガラッ!



「ぜえっ! ぜえっ! あ、危なかったぁ!」


 朝のチャイムが鳴ったと同時に錬が戻って来た。


「おお、戻ってきたか錬」


「お帰り~錬君」


「それにしても若干ボロボロなのね」


 戻って来た錬に俺と江藤が迎え、沢井は錬の格好を見て思った事を言う。


「お、沢井じゃないか。さっき野郎共に追い掛けられている時にチラッと見えたが、朝錬だったのか?」


「そうよ」


 沢井がいる事に気付いた錬がこっちに近づきながらすぐに尋ねると、何事も無いように答える沢井。


「毎朝大変だな。偶には休もうって思わないのか?」


「あいにく女優を目指す私にそんな甘えは許されないの」


「そうかい。女優志望は大変なんだなぁ」


 沢井は錬のスケベなところは嫌いだが、それ以外は特に問題なく話せる間柄だ。


 錬も錬で沢井相手には邪な事は考えていない。下手に手を出したらボコボコにされるのを分かっているからな。


 何しろ沢井が喫茶店“AMAGI”でナンパ男をぶちのめしていたのを俺と父さんと一緒に見ていた一人でもあった。それ故に錬は沢井に対して普通に接している。


「あ、錬。男子共に追い掛けられていて言い損ねたんだが、お前今日の放課後にウチの喫茶店に行くならチーズケーキの予約をしとくか?」


「勿の論だ。ってかそうしなきゃ食えないからな。あそこの喫茶店は」


 確認をする俺に錬が当然のように答えてる最中に、



ガラッ



「お前等、HRを始めるから早く席に着け~」


 俺達の担任が教室に入って来たので中断するのであった。

今回はいまいち調子が悪くて短い分になってしまいました。


申し訳ありません。

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