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第4話

「修哉、神に誓えるか? ほんっとーに羽瀬川を誑かしてイチャ付いてないと」


「そこまで真剣な顔をして訊く事じゃないと思うが、俺は羽瀬川にそんな事してないっての」


 教室に着いて数分後、(俺によって)襟首を掴んでズルズルと引き摺っていた錬が目を覚ました瞬間に問い詰められた。


 俺が羽瀬川とは何の関係も無いと何度否定しても、校門前では一体何を話していたかと執拗に訊いて来るのでありのままを話すと、今度は嘘偽り無いかと念を押してくる。


「お前は友達の俺を信じる事が出来ないのか?」


「だって俺が町でナンパに行くって誘っても行かないって言うから、もしかしたら彼女が出来たかと思って……」


「………はぁっ。仮に彼女が出来たらお前に内緒にする訳が無いだろうが」


「やっぱ彼女いるのか!? この裏切り――」



スッパァァァンッ!



「人の話しを聞け。仮にって言った筈だぞ」


 変な誤解をして突撃しようとする錬に俺は即座にハリセンを使って錬の頭をどついた。コイツにはこうでもしないと人の話しを聞こうとしないからな。


「ててて……。何もハリセンでどつくなよ。痛ぇじゃねぇか」


「人の話しをちゃんと聞かないからだ。とにかく、俺と羽瀬川は恋人関係じゃないって事は分かったな?」


「………まあ、修哉がキッパリと否定するって事は本当だって事は分かったが……」


「まだ何かあるのか?」


 錬の奥歯に物が挟まったような返答に顔を顰めながら聞く。お前は一体何が納得してないんだ?


「いや、羽瀬川ってさ。いつも男女問わずに毅然とした態度を取っているってのに、何かお前相手ではいつもと様子が変なんだよ。さっきの校門前では妙にしおらしかったと言うか何と言うか……」


「そうか? アイツとは中学からの剣道部仲間だったが、別にそんなおかしな様子は無かったぞ。今日もまた俺に勝負を挑んできたし」


 中学の剣道部に所属していた時でも、いつも俺に食って掛かるように勝負を挑んできていたからな。ま、それはそれで張り合いがあって面白かったけど。


「まぁそれはそうと錬。昨日はお前が後先考えない発言をしたから訊きそびれたんだが、部活に入らないのか?」


「それを言わないでくれよ。まぁ確かに部活には入らねぇよ。入ったら自由が無くなる上にナンパ出来ねぇし」


 羽瀬川についての話しを終えると、俺達は部活の事について話し始める。話題を変えないと錬はいつまでも追求してくるからな。


「勿体無いな。お前は運動神経では和人以上だってのに」


「ほっとけ。あんなリア充イケメン野郎を引き合いに出すな。ってか勿体無いのはお前もだろうが。中学では剣道の全国大会で優勝するほどの腕前の上に、3段も持ってるくせに」


「剣道はあくまで俺が個人的にやってただけだからな。それに喫茶店の手伝いもあるし」


 ウチの喫茶店は客が多く入る時があるからな。人手が足りない時には俺も手伝って、父さんからウェイタースキルやら何やら色々身に付いた。


「あ、そう言えば修哉の喫茶店は何か新しい期間限定のメニューとか出てないのか? 特にお菓子とかが美味いんだよな」


「相変わらずお菓子好きな奴だな」


「甘い物は俺の大好物だって知ってるだろ?」


「おまけに一杯食ってる割には全然太らないって事もな」


「俺の胃は消化が速い上に太らない体質なんだよ」


『くっ……! 何でそんなに羨ましい体質なのよ……!』


 錬の台詞に教室にいるクラスメイトの女子達が恨めしそうに錬を睨んでいた。


 まぁ女子達にとって、カロリーが高いお菓子を食っても全然太らない体質を持っている錬を羨ましがる気持ちは分からなくもない。


「な、何だ? 女の子達が一斉に俺を睨んでいる気がするんだが……? ひょっとしてまだ昨日の恨みが……」


「で、期間限定のメニューについてだが」


「うんうん、それで?」


 女子達の視線が気になっていた錬だったが、俺が限定メニューの話題に戻すとすぐに食いついてきた。


「今回はチーズケーキだったな。それも父さんの手作り」


「おおう! それは何とも興味深い。あの店長の作るお菓子はメチャ美味いからな。これは是非とも今日の放課後に行かなくては」


 放課後の楽しみが出来たと嬉しそうに言ってる錬に、


「ちょっと天城くぅん。チーズケーキが期間限定で出ているって話はボク聞いてないよー」


「「ん?」」


 女子生徒の一人が俺達に話しかけてきた。


「おおう! 愛奈ちゃんじゃないか! おはよう!」


「江藤か。おはよう」


 元気良く挨拶する錬と普通に言う俺。


「おはよう錬君。君は相変わらずエッチな目をしてるね。ボクのおっぱいに釘付けだし」


「それが俺なんで。と言うか男にエロが無かったら不味いっしょ?」


 錬は江藤の発言に否定せず逆に聞き返した。そして女子が嫌悪しそうなオープンスケベの返答をする錬に江藤は笑みを浮かべている。


 因みに錬が話している女子は江藤愛奈。俺と錬のクラスメイト。黒髪のショートヘアーなボーイッシュタイプであり、一番の特徴は………セクハラになってしまうが大きな胸だ。本人曰く『バスト90のEカップ』だそうだ。普通は恥らうんだが、江藤はそこら辺の女子とは違って大のエロネタ好きである。特にオープンスケベな錬とは相性が良い。江藤曰く『オープンな方が好感が持てるから』だそうだ。


 そして錬と江藤が実は付き合っているんじゃないかと思うくらい、物凄く仲が良い。確か錬が以前『愛奈ちゃんの生乳を何度も揉んだ事がある』って俺だけに自慢してた事があった。けどその後は『それ以上の事をやらせてくれなくて生殺し状態だ……!』とも言ってた。何故錬が俺だけにそんな自慢をしたのかは言うまでも無いが、他の(モテない)男子のクラスメイトが知ったら間違いなく錬を殺しているだろう。江藤は巨乳な上に美少女とも言っていい位に可愛いからな。


 まぁそれは別として、俺は錬が江藤と恋人関係になって欲しいと内心思っている。錬のようにオープンスケベなバカは、江藤が上手く制御出来てるからな。


「じゃあ素直に答えてくれた錬君には、一つだけお願いを聞いてあげるよ」


「ま、マジっすか!?」


 江藤の返答を聞いた錬がテンションMAXになる。おいおい江藤、そんな事を言ったら錬が調子に乗るぞ。


「じゃあ良かったら今日は俺とデートを……」


『死ねや鬼灯~~!』



ドゴッ!



「ごふぅっ!」


 クラスメイトの男子の一人が阻止するかのようにぶん殴った。


「鬼灯テメェ! 江藤に何て羨ましいこと……ではなく! けしからん事をやろうとしとるんじゃぁ!」


「モテない俺達に対する当て付けかぁこの野郎!」


「何でお前みたいなドスケベ野郎がそんなラッキーイベントが起きるんだよ!」


「ふざけんじゃねぇ!」


「ちょ、ちょっと待てお前等! ドスケベは認めるが俺は別にそんなやましい事は……!」


 倒れている錬が必死に説得しようとするが、


「「「「かかれぇ~~~!!」」」」


「ぎゃあああ~~~! 昨日に続いて今度は男かよ~~!!」


 男子達は全く聞いておらずに襲い掛かってきたので、錬は即座に教室から出て逃亡を始めた。


 そしてそれを見ていた女子達は錬に大して軽蔑の眼差しを送っていた。別に今回錬は何もしてないと思うんだが。


「全く、あいつ等は……」


「あらら~。ちょっと錬君に悪い事をしちゃったなぁ~」


「お前な……」


 江藤の発言に俺は少し睨む。お前がアイツ等を怒らせる原因を作っておきながら。


「後でちゃんと錬に謝っておけよ」


「分かってるって。エッチなお詫びをするつもりだから」


「俺の前で言うのはどうかと思うんだがな」


 ま、確かにそうすれば錬も許してくれるだろう。ってかお前はホントに錬に対しては平然と出来るんだな。他の男子にはさせないってのに。


「ところで天城君、期間限定のチーズケーキだけどさ。いつまでやってるの?」


「まだ出始めたばかりだから、そんなに焦らなくても大丈夫だ」


「あ、そうなんだ。良かった良かった」


 出たばかりだと聞くと安堵する江藤。コイツはチーズケーキが大好物だからな。


「じゃあ今日の放課後は“AMAGI”に行くからチーズケーキの予約取ってくれないかな? あそこのお菓子は美味しいから、すぐ売り切れるからね」


「分かった。後で父さんに連絡しておくよ」


「ありがと、天城君♪」


 礼を言って来る江藤に俺は携帯を出して父さんにメールを送っていると、


「二人とも、ちょっといいかしら?」


 別の女子生徒が俺と江藤に話しかけてきた。

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