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第28話

「――ってな訳でしてね。その女子とは今後どう接すれば良いのか分からなくて」


 公園のベンチに座ってすぐに俺はローズさんに羽瀬川とのやり取りを説明した。ローズさんは一切何も言わず俺の話しを真剣に聞いて、何かを考えるような顔をしている。


 そして数十秒後にローズさんは俺の顔を見ながら話し始めようとした。


「ふむ、成程ねぇ……。修哉ちゃんったら紫苑ちゃん以外の女の子にモテていたなんてスミに置けないわねぇ(ボソッ)」


「? 何か言いましたか?」


「何でもないわ。取り敢えず修哉ちゃんが悩んでいる事はよく分かったわ」


 俺の問いをはぐらかすように言うローズさん。


 何度も思っている事なんだが、どうして俺の周りにいる人は独り言をしては俺の問いをはぐらかすんだろうか? そうするんだったら始めから口にしなければ良いと思うと突っ込みたいが、今は悩み相談中のローズさんにそんな事は言えないので後回しにしよう。


「それで俺はどうすれば良いんでしょうか……?」


「そうねぇ。先ず結論から言わせてもらうと……ワタシでは修哉ちゃんが求めてる答えを出す事が出来ないわ」


「……え?」


 不可解な顔をしている俺にローズさんはそのまま続ける。


「ワタシが何かしらのアドバイスをしても良いんだけど、今回の修哉ちゃんの悩みは自分で見付けなければいけないのよ。それにね修哉ちゃん。今回の話は恋愛絡みでもある上に、そうすぐに答えなんか出ないのよ」


「答えがすぐに出ないって……」


 ローズさんの回答に俺がちょっと文句を言おうとしたが、


「じゃあ逆に訊くけど修哉ちゃん。仮にもしワタシがその子とは今後ずっと恋人としてお付き合いしなさい、もしくは今までの事を無かったかのようにずっと友達でいなさい……何て答えを出したら、修哉ちゃんは納得出来るのかしら?」


「そ、それは……」


 言い返すことが出来なかった。


 確かにローズさんの言うとおり、さっき言った答えを言われてもすぐに理解出来なければ納得も出来ない。今まで友人と接していた羽瀬川を突然一人の女性として接する事は出来ないし、かと言ってこれからも友人として接していたら羽瀬川の気持ちを踏みにじってしまう。故にその答えは俺が求めてる物じゃない。


「……………」


「その顔を見る限りだと、さっきの答えでは無理だと言う事が分かったみたいね。あともう一つ言わせてもらうけど、ワタシは修哉ちゃんが話した女の子がどう言う子なのかは詳しく分からないわ。そんな状態でワタシが修哉ちゃんに答えを言って、その答えのまま修哉ちゃんが行動してしまったら、その子が傷付いてしまうかもしれない。だからその子について一番良く分かってる修哉ちゃんが考えるのよ。分かったかしら?」


「………まぁ、確かに」


 ローズさんの説明を聞いて頷く事しか出来なく、そのまま腕を組みながらどうするかを俺は再び考え始める。


「でも修哉ちゃんが話してくれて、自分で探せと言うのは流石に無責任だから、ワタシがちょっとしたヒントをあげるわ」


「と言いますと?」


「それはね……修哉ちゃんが今その子の事をどう言う風に思っているのかを考える事よ」


「………と言う事は、それって俺の思ったままをアイツに言えば良いって事ですか?」


「そこから先は修哉ちゃんが考えるの。それに修哉ちゃん達は中学の頃からよく知っている仲なんでしょ? だったら……っと、ここまでがワタシからのヒントよ」


 もう何も言わないと言う感じで首を横に振るローズさん。まだ聞いてみたいけど、これ以上は本当に何も言わないのは分かっているので追求はしない。


 結局また振り出しでローズさんに相談しても無意味では無かったのではないかと思うが、実はそうでもない。結構参考になった。


 相談する前の俺は羽瀬川の事ばかりに目を向けていて、自分の事なんか全く視野に入れてなかった。主に羽瀬川の顔色を窺うような事ばかりを。それ故に俺自身が羽瀬川に抱いてる気持ちが其方(そっち)退()けだったから、どうすれば良いのか分からずに悩み続けていた。


 しかし今は違う。ローズさんがヒントを言ってくれた事によって、俺はある程度答えを見つける事が出来た。だがそれはまだ見つけただけで、俺が羽瀬川に抱いている自分の気持ちをすぐ言葉にする事が出来ない。だから今は考える時間が欲しい。明日、羽瀬川に思いのまま答える時間を。


「ここまでしか言えないけど、何か掴めたかしら修哉ちゃん?」


「………ええ。と言っても、また新たに考えなければいけない事が増えましたが」


「じゃあソレも聞いてヒントを言えば良いのかしら?」


「いえ。そこは自分で考えますので」


「あら? さっきまでとは違って、スッキリした顔になってるわね修哉ちゃん♪」


 俺の返答にローズさんは嬉しそうに笑顔を見せる。


「そうですか?」


「ええ。思わずワタシが惚れちゃいそうな位に♪」


「………ま、まぁローズさんがそこまで言うなら、多分そうなんでしょう」


 笑顔で言うローズさんに、俺は苦笑いしながらも内心感謝していた。ローズさんに相談しなければ、ずっと悩む事になっていたから。


 俺がそう思ってると、


「ローズさまぁ~、やっと見付けましたわよ~」


「ん?」


「あらぁ?」


 オカマ口調でローズさんに声を掛ける人がいて、俺とローズさんが振り向くと、そこにはローズさんとは色違いで白のスーツを身に纏いゴツイ身体をした男性がいた。


 えっと、あの人は確かローズさんのオカマバーで働いているマーガレットさんだったな。オカマさん達が外出する場合にはスーツを着ていて、その色によって誰なのかが分かる。


 因みにローズさんは赤のスーツを着ている。名前がローズなだけに、それだけでもう分かる。


「誰かと思えばマーガレットじゃない。ワタシを見付けたなんてどうしたの?」


「どうしたじゃありませんわよ。もうそろそろお店が開く時間ですわ」


「え? ……あらいけない、もうこんな時間だったなんて」


 コッチに来るマーガレットさんの台詞にローズさんが時計を見てそう言ったので俺も見てみると、確かにローズさん経営のオカマバー開店時間になりそうだった。


 となると、それだけ俺はローズさんと話していたと言う証拠か。もうあっと言う間な感じだったな。


「ゴメンね修哉ちゃん。ワタシもうお店に戻らないといけないわ。話の続きはまた今度ね」


 そう言いながらローズさんは立って店に行こうとする。


「あ、いえ……もう終わりましたから大丈夫です。俺こそ時間を取らせてしまってすいませんでした」


「別に修哉ちゃんが謝る事なんか無いわ。ワタシが相談に乗るって言ったんだから。それに――」


「ローズ様。今は早くお店に」


「あ、そうだったわね。それじゃ修哉ちゃん、またね」


「ええ」


 ローズさんは俺に別れを告げて、マーガレットさんと一緒に去って行った。

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