第19話
久々に更新しました。
色々と作品を書いてる身ですので、遅れて申し訳ありません。
それではどうぞ!
「へぇ。姉さんの手作り料理を食べたんだ。美味しかったかい?」
「まぁな」
「もし姉さんのファンクラブの誰かが知ったら凄い事になりそうだね」
「そうならない事を祈るよ」
朝食後、俺は家に来た和人と一緒に学校へと向かっている。紫苑さんは朝練のため既に学校に行ってて、俺達とは一緒にいない。
綾ちゃんの方は朝食を食べ終わってすぐ自宅に帰った。今日の授業で使う教科書と体操服を取りに行くために一度戻ったのだ。
けどそれより、俺としては一番気になるのは綾ちゃんの虐めについてだ。昨日は紫苑さんが今度悪ガキ共にお灸を据えるとか言ってたが、一体どんな事をするんだろうか。正直言って少し気になる。悪ガキ共が俺の説教で懲りてないなら一度痛い目に遭わせた方が良いとは思うが、実行するのが紫苑さんだと考えると少し不安だ。
「そう言えば修哉。昨日は姉さんだけじゃなく綾ちゃんも一緒に泊まったそうだね。あの子は大丈夫だった?」
「ああ。父さんや紫苑さんのおかげで元気になったよ。ただ……」
「ただ?」
「……紫苑さんが悪ガキ共にどう言う風にお灸を据えるのかが気になってな」
「………ああ~」
不安そうに言う俺に、和人は思い出しながら後の事を考え始めた。それも不安な顔をしながら。
「いくら姉さんでも小学生相手に本気でやらないとは思うけど……」
「だと良いがな」
綾ちゃんを溺愛してる紫苑さんが手加減するとは言え、悪ガキ共は果たして無事でいられるだろうか。って大袈裟すぎだな。いくらなんでも其処まではしない……と思う。
「その後は悪ガキ共の両親が抗議するかどうかだな。そうなった時は父さんや真理奈さんが出張るが」
恐らく綾ちゃんのお爺さんの竜三さんも一緒に参加するだろうな。あの人も紫苑さんと同様に孫の綾ちゃんを溺愛してるから、絶対どこかで知って駆けつける。
「その人達が参加するなら大丈夫だよ。きっとどんな抗議も正論で撥ね除けると思うし」
「ま、そうだな」
紫苑さん達が動く以上、俺や和人の出る幕はない。とにかくこれで綾ちゃんの虐めが無くなる事を祈ろう。
「それはそうと修哉。今日はちゃんと羽瀬川さんに謝るんだよ」
「え?」
俺が綾ちゃんの苛めについて考えてる最中、話題を変えた和人に思わず振り向く。
「『え?』、じゃないよ。昨日、江藤さんに言われなかったかい? 羽瀬川さんに会ったらすぐ謝るようにって」
「………あ」
不味い、すっかり忘れてた。昨日はウェイターの仕事や紫苑さんの行動や綾ちゃんの苛めについてとか、とにかく色々とあり過ぎて記憶から抜けてた。
そう言えば江藤が絶対謝るようにって口をすっぱくして念を押してたな。俺自身としてはどうして謝らないといけないのかが納得出来ないが、まぁ江藤があそこまで言うって事は俺が悪いんだろう。
「はぁ……。その顔を見ると忘れていたようだね」
「うっ……」
呆れて指摘する和人に言い返せない。仕方ないだろう。昨日の夕方以降からは色々な事があり過ぎたんだから。
「けど、謝るにしてもどうやって謝れば良いんだ? ただいきなり謝ったとしても……」
「……修哉、どうやら君は謝らなきゃいけないが分かってないみたいだね」
「理由って……。あの時は羽瀬川が俺の事を好きだと言ったから、俺も友人として好きだと言いかえして――」
「そこだよ。君は彼女の好意の捉えかたを間違っているんだ」
「え?」
何が間違っているんだ? 俺は単に昨日の事を思い出していただけだと言うのに。
「修哉、この際だから言っておく。君は羽瀬川さんを友人として見ているんだろうけど、彼女は修哉みたいに見てないよ」
「どう言う事だ?」
「だから……羽瀬川さんは君を友人じゃなく、一人の異性としての恋愛感情を抱いて好きだと告白したんだ」
…………はい?
☆
「ふっ! ふっ! ふっ!」
「どうしたの愛美ちゃん? 今日は朝から精が出てるわね~」
朝の剣道場で胴着を纏っている羽瀬川愛美が素振りをしていた事に、剣道部部長の斎藤が声をかける。
「もしかして天城君をぶっ飛ばす為に素振りしてるの? だったら私も手を貸すわよ」
斎藤は昨日の告白の事は詳しく知らないが、愛美が泣きながら帰宅したのを見てフラれたと思った。普段からどんなキツイ練習にも音を上げず、一生懸命頑張る顔を見せる愛美が泣くのを初めてみたから。それにより斎藤は、もし修哉に会ったら説教ついでに問い質そうと決意する。どんな理由であれ、どうして愛美のような真面目で可愛い女の子をフッて泣かしたのかと
「……別にそんな事をする為に素振りをしてる訳ではありません」
「あれ、違うの?」
「違います」
心外だと言わんばかりに答える愛美。
「部長はわたくしがそのような小さい事をする人間に見えますか?」
「い、いやぁ……それとこれとは別に、女の子を泣かす男はどんな理由であれ天誅を下さないと」
「お気になさらず。自分の事は自分で解決しますので、部長は何もなさらないで下さい。もし何かありましたら相談しますから」
「あらそう? まぁ、愛美ちゃんがそう言うなら」
釘を刺す愛美に斎藤は修哉に問い質すのは止めようとする。いくら先輩と言えども、釘を刺された以上は人の恋路に無断で踏み込むほど無粋な真似をするつもりは彼女には無い。
「けどさぁ、私としては納得出来ないのよね。どうしてあの子は愛美ちゃんをフッたのかを」
「別にわたくしはフラれてなんかいません。と言うか今そんな事はどうでも良いのです」
修哉が凄く鈍感な事は昨日冷静に考え、もっとちゃんとした想いで伝えなければダメだと分かっていた。だが愛美は考えていたついでにある事に気付いた。それは昨日の試合中に修哉が言った『美人な先輩』の事についてだ。今の愛美にはソレが一番訊きたい……と言うより問い詰めたい特記事項となっている。
「待ってなさい天城。貴方が本当にその人に現を抜かしていたら、わたくしが叩き直してさしあげますわ……!」
「こ、こわっ……! 愛美ちゃんが黒オーラを出してるよ! おねえさん怖い!」
フフフと黒い笑みをする愛美に斎藤は思わずビクッと怯えて後ずさりをした。もし今勝負をしたら確実に負けてしまいそうだと思うくらいに。




