第18話
久々に更新しましたけど、凄く話が短いです。
「修哉お兄ちゃ~ん、朝だよ~。早く起きて~」
「う、う~ん……」
何だ? 時計のアラームが人の声を発しているような気がするなぁ。それに誰かがユサユサと俺の体を動かしてるし。
薄っすらと片目を開けたら、覗き込むかのように見ている綾ちゃんの顔が目の前にあった。
「あ、やっと起きたね♪」
「………綾ちゃん、君は一体何をしてるんだ?」
「? 修哉お兄ちゃんを起こしにきたんだよ」
「違う。俺が言ってるのは……何で君は俺に上に乗っている?」
綾ちゃんが仰向けになってる俺の腹の上に乗りながら起こしている事が非常に不可解だ。
そんな俺に綾ちゃんは思い出したかのように答えようとする。
「紫苑お姉ちゃんがこうすれば修哉お兄ちゃんは絶対に起きるからって言ってたの」
「……あの人の入れ知恵か」
全く。綾ちゃんにまた余計な事を教えるとは。紫苑さんの頭の中は普通に起こすという選択肢が無いのかよ。
まぁその当人は昨日、俺のベッドに潜り込んで勝手に寝ていたからな。もしまたそうなっていたら前回と同様に落とすけど。綾ちゃんの場合は別で普通に起こすが。
ってそんな事どうでもいい。今は俺の腹の上に乗ってる綾ちゃんを降ろさないとな。
「まぁ良いや。それより綾ちゃん、起きるからどいてくれない?」
「うん、分かった」
そう言って綾ちゃんが降りると俺はムクリと起き上がって両腕を伸ばす。
チラリと時計を見ると、アラームセットしている時間より30分早かった。本当ならもうちょっと寝ていたいところだ。しかし綾ちゃんに起きると言い出した手前、それは出来ない。
「着替えるから出てくれる?」
「は~い」
すぐに部屋から出る綾ちゃんに俺は思わず、何処かの誰かさんと違って素直で良いなと思いながら着替え始めた。
「おはよう父さん………って珍しいな。この時間だったら台所にいるのに」
身支度を整えた俺はキッチンに行くと、椅子に座ってゆったりと昼食を食べながらコーヒーを飲んでいる父さんと綾ちゃんがいた。
「今日の朝食は紫苑ちゃんが作ると言ってね」
「おはよう修哉君、あとちょっとで出来るからコーヒーでも飲んで待ってて~」
「………成程」
道理で綾ちゃんを差し向けた訳だ。俺は納得しながら台所を見ると、そこには朝食を作っている紫苑さんがいた。スクランブルエッグを作ってるところを見ると今日は洋食か。
因みに紫苑さんは家に泊まったり、早朝家に来る時には必ず朝に俺の部屋に入って何かしらの行動をしている。それをしないと言う事は今日みたいに朝食を作ってるか、朝錬の時間がいつもより早いと言う二択になる訳だ。
今回は前者だったかと内心思いながら父さんの隣にある椅子に座り、置いてあるホットコーヒーに砂糖を二杯入れて飲んだ。
「聖也おじちゃんと修哉お兄ちゃんってコーヒー好きだね。アタシは苦くて飲めないよ」
向かいに座ってる綾ちゃんは牛乳を飲んでいた。
牛乳飲んでる綾ちゃんを見ると、俺と同じ高校生になったらどのくらい成長しているんだろうかと思わず考えてしまう。
「ハハハ。子供の綾ちゃんにはまだ大人の味が分からないみたいだね。ま、いずれ綾ちゃんも大人になったらコーヒーの味の良さが分かるよ」
人それぞれだと思うんだが、と俺は父さんの台詞に内心突っ込む。
「ふ~ん……そうなの、修哉お兄ちゃん?」
「何でそこで俺に聞く?」
と言うか俺はまだ大人じゃなくて未成年なんだが。
俺がコーヒーを飲んでいるのは単に父さんがいつも朝食の際にコーヒーを用意してて、最初は苦くて飲まなかったが次第に慣れて好きになっただけだ。だから別に子供や大人は関係無いと思う。
「綾ちゃん、別にコーヒーに子供や大人は関係なく――」
「お待たせ~。朝食出来たわよ~」
言ってる最中に朝食を作っていた紫苑さんがリビングに来て朝食を持って来たので、俺達は話しを打ち切って朝食を食べる事にした。
今日の朝食はフレンチトーストに、スクランブルエッグと焼きベーコンとサラダ、そして野菜ジュースか。
「一人でこんなに作るなんて凄いよ紫苑ちゃん。どれも美味しそうだ」
「いえいえ、小父様に比べれば大したこと無いです」
謙遜気味に言う紫苑さんだが、朝から一人で四人分の朝食を作るのは充分凄いと思う。父さんが褒めるのは当然だ。
「さ、修哉君。遠慮なく食べてね」
「ええ、まぁ……では頂きます」
「「頂きます」」
俺が先にフレンチトーストを食べると、父さんと綾ちゃんも続いて食べる。
美味いな。表面がサクッとしてて、中身がフワッとしてて丁度良い甘さだ。
「これ美味しい~♪」
「ふふ、綾ちゃんにそう言って貰えると嬉しいわ」
綾ちゃんの台詞に満面な笑顔になる紫苑さん。可愛い妹である綾ちゃんに言われたら、姉である紫苑さんにとっては最高の褒め言葉だ。
「いや~綾ちゃんの言うとおり本当に美味しいよ。美人な紫苑ちゃんが作った朝食を食べれるなんて私は幸せ者だ」
「もう、小父様ったら……修哉君はどう?」
父さんのお世辞に苦笑してた紫苑さんだったが、途中から俺の方を見て聞いてくる。
「聞くまでも無く、美味しいですよ。けどコレ、父さんが作った味とよく似ていますね」
「当然よ。これ全部、小父様から教わったものなんだから」
「然様ですか……」
父さんとしては美味しいだけじゃなく、弟子の成長に喜んでいる面もあるだろう。綾ちゃんと同様に、父さんと紫苑さんは料理面では師弟関係みたいなもんだからな。
どうでもいいが、高嶺の花と呼ばれてる紫苑さんの作った朝食を食ってるなんて言う事が学校に知られでもしたら、俺絶対に殺されるかもしれないな。特に錬や紫苑さんファンクラブの人達に。
今更ながら俺は随分と恐れ多い事をしているんだなぁと思いながら朝食を食べていた。
次回は何とか長めに書こうと思います。
それでは失礼します。




