クリスマス企画 前編
久々の話の続きではなく、サブタイトル通り企画として更新しました。
この話では紫苑と愛美が修哉争奪戦中であり、錬は独り身、和人は相変わらずモテモテ、そして綾ちゃんは……何と彼氏がいます!
クリスマス。それはイエス・キリストの誕生を祝う祭とされているが、この日本でソレとは関係無く一種のイベントの一つにすぎない。例えばクリスマスの日には家族と過ごす人、恋人と過ごす人、友人と過ごす人、家で独りで過ごす人等々、人によっては楽しかったり寂しい日でもあったりする。
けどクリスマスだからと言っても平日だったら俺達学生にはそんなの関係無く、今まで通り学校に来て授業を受けた放課後からイベントスタートだ。まぁ明日から俺達の高校は冬休み開始だが。
とは言え俺の場合はウチの喫茶店がクリスマスイベントをやっているので、学校が終わったらすぐに家に帰って手伝いをしなければならない。父さんは『店で手伝うより誰かとクリスマスを過ごしたら?』と言われてるが、あんなに忙しそうな父さんを見て自分だけ楽しむ訳にはいかないからな。
「さて、早く家に帰って手伝わないと――」
授業が終わった放課後、俺はすぐに教室から出ようとするが、
「おい修哉! 今日は俺と一緒にクリスマスを過ごすぞ!」
いきなり錬が俺に声を掛けてクリスマスの誘いをしてきた。何故かキレ気味に。
「何だよ錬。俺はすぐに店の手伝いをしなければいけないんだが……あ、そうか。お前また……」
「言うな! 傷が疼く!」
「……やはりか。お前って本当に予想通りの事をしているんだな」
どうやら錬は女子にクリスマスパーティーの誘いをしたが、また振られてしまったみたいだな。相も変わらずナンパ率が低いから、クリスマスパーティーも撃沈か。お気の毒に。
「別に俺を誘わなくても家族で過ごせば良いだろうが。弟の賢君と一緒にケーキでも買って」
「ふざけんな! 何で俺があの裏切り者と一緒に過ごさなきゃいけねぇんだよ!」
「裏切り者って……あ、すまん。確か賢君には彼女が出来たんだったな」
「あの野郎……! 小学生の分際で彼女なんか作りやがって……!」
「しかも相手は綾ちゃんだしな」
そう。錬の弟である賢君は数日前に宮本綾ちゃんと晴れて恋人同士になった。虐められていた綾ちゃんを常に守っていた事により、綾ちゃんはどんどん賢君に惹かれて異性として好きになった。
俺や和人が涙ぐんで話す錬から聞いた時は驚きながらも祝福したが、紫苑さんがかなり面倒だった。大事な妹分が彼氏が出来たと知った瞬間、すぐさま賢君を道場に連れて綾ちゃんの彼氏として相応しいかどうか確かめると言って腕試しをしようとしたのだ。あの時は俺と和人が紫苑さんを必死にあの手この手で説得して、何とか付き合う事を了承させて本当に苦労した。だけど了承した紫苑さんが賢君に言った最後の台詞が恐ろしかったな。『もし綾ちゃんを不幸にして泣かせたら……どうなるか分かってるわよね?』なんて低い声で警告する紫苑さんに、賢君は涙目になりながら物凄い勢いで首を縦に振ってたし。あれは賢君だけじゃなく俺や和人も本気で恐かった。
「だから修哉! ここは同じ独り身同士で一緒にクリスマスを過ごすぞ!」
教室を出て玄関に向かう俺に錬は付いてきながら再度誘おうとする。断ったのにしつこい奴だな。
「さっきから言ってるが俺は店の手伝いがあるからパスだ。と言うか女子とクリスマスと過ごしたいなら和人に頼めば良いだろうが。アイツの事だから恐らく家に女子を呼んで――」
「俺が何かな、修哉?」
突然背後から声を掛けられ、後ろを振り向くと俺の幼馴染である和人がいた。
「て、テメェ佐伯! 一体何の用だ!?」
「君は相変わらずだね、鬼灯。何で君はいつも俺を見るといきなり怒鳴るんだい?」
「うるせぇ! いつもいつも見せ付けるように女子と一緒に歩きやがって……この男の敵が!」
「落ち着けって錬。悪いな和人、コイツは今ちょっとある事によってイライラしててな」
「ま、大体想像は付いてるよ」
怒鳴る錬に俺が宥めながら和人に謝るが、向こうは大して気にしていない様子を見せる。
「グルルルル……!」
「錬、お前はどこかの狂犬か?」
「あの野郎を見ると怒りと嫉妬が込み上がるんだよ……!」
「はいはい、みっともない真似してないで一先ず落ち着け。それにもしお前が和人に攻撃したら女子達が黙ってないと思うが?」
「ぐっ……!」
錬は痛い所を突かれたかのように渋い顔をしながらやっと落ち着いてくれた。ったく、相変わらず和人の事となると世話の焼ける奴だ。
「ところで、修哉はさっき俺の名前を出してたけど一体何を話してたのかな?」
和人は錬の行動に呆れながらも俺に尋ねてくる。
「錬が女子とクリスマスを過ごしたいって言うから、和人が主催するパーティーに参加したらどうだって話しをしててな」
「ふ~ん、それは別に構わないけど……修哉は参加しないのかい?」
「悪いが俺はパス。店の手伝いがあるからな」
「相変わらずつれない返事だね。俺としては是非とも修哉に参加して……いや、今回は止しておくか」
ん? いつもはしつこく俺にパーティーを参加させようとする和人が止しておくって……珍しいな。
「いや、もし参加させたらある二人の女性が黙っていないと思うし」
「はぁ? ある二人の女性って――」
「天城、ここにいましたか」
「ん?」
和人と話してる最中、羽瀬川が俺に声を掛けてきた。
「羽瀬川じゃねぇか。何か用か?」
「ちょっとお尋ねしたいのですが」
「って俺は無視かよ!」
錬が用件を聞こうとするがすぐにスルーされ、羽瀬川は俺にしか用が無いと言わんばかりに話しかけてくる。和人はなんか嫌な笑みをしながら黙ってるし。
「え、えっと、俺に何か?」
「今日はお暇でしょうか? よろしければ今日はわたくしと、その……一緒にクリスマスを――」
「ちょっと待った~~~~!!」
羽瀬川が顔を赤らめながら言ってる最中に、突如大きい声を出しながらこっちに来る女子生徒が……ってアレは紫苑さんじゃないか!
「な、何であの人が……?」
「おいおい、あの人は佐伯先輩じゃねぇかよ!」
「おやおや、どうやら姉さんも来たみたいだね」
「くっ! もう来ましたか! 天城、今すぐわたくしと一緒に……!」
驚く俺と錬に、分かっていたような顔をする和人。
そして羽瀬川は俺の右腕を掴んで早く行こうとするが、
「そうはさせないわよ!!」
紫苑さんはすぐに俺の左腕を掴んで逃さないと言わんばかりに羽瀬川を睨んだ。
「え? え? え? 一体何?」
戸惑う俺を余所に羽瀬川と紫苑さんは火花を散らすかのようにお互いに殺気を出して睨み合っている。
「羽瀬川さ~ん、私の修哉君を連れて何処に行こうとしたのかしら~?」
「別にわたくしは単に天城と一緒にクリスマスを過ごそうと誘っただけです。何か問題でも?」
「(ピクピクッ!)……何勝手な事を言ってるのかしら? 修哉君とクリスマスを過ごすのは私なんだけど?」
『な、何ぃ~~~~~~!!!!』
二人の会話に錬だけでなく、他の男子達までもが驚愕の声を出していた。
「おい~~~!! どう言う事だ修哉!? お前、羽瀬川だけじゃなく高嶺の花と呼ばれてる佐伯先輩とクリスマスを過ごすって……」
「「邪魔よ(です)!」」
バキッ!
「へぶっ!」
俺に問い詰めようとする錬だったが、羽瀬川と紫苑さんの二人からの拳であっと言う間にKO。
だが、
『う、ウソだろ……佐伯先輩が何で天城と……』
『天城の野郎……! いつのまに佐伯先輩とそんな羨ましすぎる約束をしてやがった……!』
『佐伯先輩だけじゃなく羽瀬川まで……! あのクソ野郎……!』
『や、やはり噂は本当だったか! これはすぐ親衛隊に報告して、即刻天城を異端審問しなければ!』
和人を除くここにいる男子たち全員が血の涙を流して俺に殺意を向けていた。不味い、これは非常に不味い……! ってか和人! お前面白そうに見てないで助けろよ!
「ちょ、ちょっと二人とも、すいませんが……」
「修哉君、前から言ったとおり、今日は私の家で楽しいクリスマスを過ごそうね。あ、何なら修哉君の家でも良いわよ。お父さんから許可貰ってるし」
「ふざけた事を言わないでください、佐伯先輩。わたくしの天城に勝手な事をしないで下さい」
「そっちこそふざけないでよ。修哉君がいつから貴方のになったのかしら?」
「話しを聞いてくれ~~~~!!!!」
二人が訳の分からん事を言ってて全く俺の話しを聞いてくれないのだった。




