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第8話

「へぇ。今日の放課後に羽瀬川さんと勝負、か」


「ああ。朝は錬に邪魔されて返答が聞けずじまいになったが、俺が言った条件をやっと呑んでくれたからな」


 和人と会った俺は図書室で羽瀬川と話したことを屋上で教えていた。


 廊下で話すと和人目当ての女子が話しかけてくるので、敢えて誰もいない屋上を選んだからである。


「ふ~ん………これはいよいよ羽瀬川さんも覚悟を決める時か……」


「何の覚悟だ?」


「いやいや、こっちの話だから気にしないで」


「?」


 すぐに話しをはぐらかす和人に俺は不可解になる。


 何でコイツはいつもコッチを見ながら独り言を呟いては面白そうな顔をしてるんだ?


「それにしてもさぁ修哉、羽瀬川さんに勝てるのかい? いくら君が剣道三段持ってるとは言え、彼女はかなりの実力者だって聞いてるけど」


「勿論勝つつもりでやるさ。そうでなきゃアイツからの勝負を受けるなんて言わないからな」


 一応アイツとは中学の頃から互いに張り合って、どう言う攻め方をしてくるのは大体分かる。


 けどあくまで中学での話しだ。今どうなってるか知らんが、過去の経験とは言え充分参考になるから良い。


 羽瀬川と勝負する前には予めウォーミングアップをしておかなければな。


「和人、悪いが放課後俺のウォーミングアップに付き合ってくれないか?」


「ゴメン。今日は女の子とデートする約束があるんだ」


「そうか。う~む……じゃあ駄目元で紫苑さんに頼んでみるか」


 あの人は生徒会で忙しいから無理だと思うが、多少は話しを聞いてくれると思うし。


「前言撤回。やっぱり俺が修哉のウォーミングアップに付き合うよ」


「え? 良いのか? お前デートがあるんだろ?」


 突然どうしたんだ? 女子とのデートは必ず行くあの和人が。


「後でお詫びをするように言っておくよ。それより修哉、羽瀬川さんと話した事は絶対姉さんに教えないように。良いね?」


「何故だ? 紫苑さんに教えると何か不都合な事があるのか?」


「それはまあ……高嶺の花と呼ばれている生徒会長が修哉を手助けしたなんて誰かの耳に入ったら、周りが黙ってないと思うし」


「………それもそうだな」


 確かに和人の言うとおりだ。紫苑さんは栖鳳学園の“高嶺の花”と謳われてる上にアイドル的存在でもあるから、俺みたいな奴が紫苑さんの力を借りたらあの自称“生徒会親衛隊”共が黙っていないだろう。


「姉さんには悪いけど、今回は羽瀬川さんのほうを応援させてもらうよ。それに姉さんが知ったら絶対邪魔すると思うし……(ボソボソ)」


「何をブツクサ言ってるんだ?」


「あ、いや……とにかく放課後ウォーミングアップに付き合うから、修哉はすぐ家に戻って剣道具を取りに行ってね」


「あ、ああ、分かった」


 まぁ取り敢えずソレが無いと話にならないからな。羽瀬川と本気で勝負するなら、自分の持ってる剣道具じゃないと太刀打ち出来ない。


 そう思っていると、



キーンコーンカーンコーン!



「ん? もう昼休みが終わりか」


 昼休み終了の予鈴が鳴った。


「修哉、重ねて言うけど姉さんには絶対に教えないように」


「そこまで念を押さなくて言わなくても良いと思うんだが……」


 屋上から出ようとすると、一緒に付いて来る和人に念を押された。


 と言うかそんなに紫苑さんに知られると不味いのか?





 そして放課後。


「よし修哉。早速行こうか」


「天城君。早く帰ろ」


 鞄を持った錬と江藤が俺の方へ来て早く行こうと言って来た。


「悪い二人とも。俺ちょっと急に用事が出来たから、二人だけで喫茶店に行ってくれ。既に父さんには話しておいてるから」


「用事ってどうしたんだ?」


 俺の台詞に錬が何か遭ったのかと聞いてくる。


 コイツに羽瀬川と勝負する事を教えると後々面倒な事になると思うが、取り敢えず話しておくか。


「いや、それが……羽瀬川と勝負する事になってな」


「そっか、羽瀬川と勝負か。それは大変……ってマジか!?」


 勝負の事を教えると最初は何でも無いように言ってる錬だったが、途中から驚きの声をあげた。


「ほほう~。愛美ちゃんとねぇ~。天城君やっと勝負するって決断したんだ」


 そう言えば江藤って羽瀬川とは中学の頃からの友達でお互いに名前で呼び合う仲だったな。少し忘れてた。


「まぁそう言う訳で俺は一足早く帰って、すぐに剣道具を持って来てはまた学校に戻らないといけないんだ」


「剣道具を持ってくるって……お前本気でやる気か?」


「そうでもしないと羽瀬川には勝てないからな」


 アイツは強いから生半可に挑めば、すぐに負けて剣道部に入部されてしまう。別に入部したらしたで受け入れるが、それでも羽瀬川には負けられない。


「ならボクは喫茶店に行くのは後回しにして勝負の方を見させてもらうよ。何か面白そうな事が起きそうだし」


「俺も見学させてもらうぜ。久々にお前の腕前を見てみたいしな」


「別に見なくても良いと思うんだが」


 錬はともかく、江藤の奴は絶対に面白がってるな。分かってはいたがコイツは何かしらのイベントが起きると絶対に食い付く。ってか面白い事なんて起きないぞ?


「なぁ修哉。羽瀬川ってどれだけ強いんだ? お前が本気でやるって事はかなり強いってのは大体分かるが」 


「今の羽瀬川の力量は分からん。だがかなりの実力があるのは確かだ」


「でも剣道三段の天城君なら充分に勝てると思うけど?」


「俺が三段だからと言って勝てるって訳じゃないぞ、江藤」


 段はあくまで自分が取得した物に過ぎない。それに羽瀬川の事だから、段なんか持って無くても充分に強いからな。


「って、今は早く剣道具を取りに行かないとな」


 そう言って俺はすぐに教室から出て行き、自宅に向かって剣道具を取りに行った。








~錬視点~



 修哉は家に行ったか。


 よし、その間に俺は準備をしておかなければな。


「ちょっと錬君。何してるの?」


「な~に。ちょっとした準備をするだけだ」


「準備って?」


「大した事ねぇよ。修哉がもし羽瀬川とラブコメ展開になった時の嫌がらせ……じゃなくてサプライズの準備をな」


「ふ~ん……って何でそんな事をするの?」


「いやねぇ、俺の勘がこう言ってるんだよ。勝負が終わった後に羽瀬川が修哉に告白をするんじゃないかって」


 どうも朝の事が気になるんだよな。いつも毅然とした態度を取っていたあの羽瀬川が修哉相手に乙女チックな感じで話していたところが。


「あのねぇ錬君。仮に君の勘が当たってたとしても、人の恋愛を邪魔するのはいけないと思うよ。それに君が邪魔したところで天城君に伸されるのがオチだよ」


「別に嫌がらせと言ってもそんな酷い事をする訳じゃねぇよ。俺がちょっとしたバカをやった後は、すぐに応援するような流れにするだけだ」


「そこは普通に応援するって事はしないの?」


「そんなのつまんねぇだろうが。愛奈ちゃんは俺がそうすると思うか?」


「…………無いね。君の場合は何かしないと気が済まないし」


「だろ? ふっふっふっふ、修哉ぁ~。楽しみに待ってろよ~」


「君は一体何をやらかすのやら……」


 そんな不安そうな顔をしないでくれよ愛奈ちゃん。ちょっとしたサプライズなんだから。

あ~、分が短い自分が情けなくなる。

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