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第7話

「何か今日の昼食トークの殆どは父さんについてだったな」


 弁当を食べ終えた俺は時間潰しに図書室へと向かっていた。


 錬は体を動かす為に体育館へ行き、江藤と沢井は教室で他の女子達と混ざって女子だけのトークをしている。


「さて、今日は何を読もうかな」


 そう呟きながら図書館に着いてすぐ面白そうなを探す。


 確か図書室では生徒の要望に応えてラノベを出したって言ってたな。


 アレは一般の小説とは違って読みやすい上に面白い。以前まで羽瀬川に勧められていた一般小説を読んでいたが、今はラノベを中心に読んでいる。とは言っても一般小説もちゃんと読んでいるが。


「お、コレは何か面白そうだ」


 興味深いタイトルのラノベに目を向けた俺は取って、近くに設置してある椅子に座ろうとすると、


「あら? 天城じゃありませんか」


「羽瀬川か」


 目の前には椅子に腰掛けて本を読んでいる羽瀬川がいた。


「今日は珍しく一人で読んでいるんだな」


「わたくしだってそう言う時ぐらいあります。それより天城、貴方は相変わらずラノベですか」


「まぁな」


 羽瀬川が手に持ってるラノベを見て少し顔を顰めている事に、気にすることなく椅子に座ってラノベを読もうとする俺。


「お前も読んで見たらどうだ? 結構面白いぞ」


「確かにそうかもしれませんが、わたくしはこう言った本が好きですので」


 羽瀬川が自分が読んでいる本を見せた。


「夏目漱石の『吾輩は猫である』、か」


「貴方もこう言った小説を読んでは如何ですか?」


「それは次の機会に読むとするよ」


 そう言って俺はラノベを読んで静かになると、羽瀬川も続きが気になるのか読んでいる小説に目を向けて読むのを再開する。


 ラノベを読んでる俺に一般小説を読んでる羽瀬川は種類は違えど、お互いに本を読むのが好きだ。


 それにこの図書室はバカ騒ぎをしている錬やクラスメイトが最も騒ぎを起こさない所である為、こう言った静かな平穏を過ごせるから俺にとって大変に快適な場所でもある。


「あ、そう言えば羽瀬川」


「何ですの?」


 十分ほど経って俺がふと思い出したかのように呼ぶと、羽瀬川はすぐコッチに顔を向けてくる。


「放課後にお前と勝負する事についてだが――」


「今更『無かった事にしてくれ』なんて聞く気はありませんわよ」


 言ってる最中に羽瀬川は逃さないと言わんばかりに俺をジッと睨んでくる。


 何か羽瀬川の台詞を聞くだけで、いつの間にか勝負する事になってる感じがするな。ここはちゃんと言っておかないと。


「話は最後まで聞いてくれ。お前との勝負を受ける際の条件があるって言ったろ? 呑んでくれるのか?」


「………あ、そ、それは」


 条件と言ってすぐに羽瀬川は焦ったかのように顔を赤らめた。何故そんな顔をするんだ?


「朝の校門前で錬に邪魔されたから返答を聞きそびれたからな。で、どうなんだ?」


 条件とは、勝負する際に俺が勝っても負けても羽瀬川が何で執拗に剣道部に入部させようとするかについて理由を聞くと言う内容だ。コレを承諾しなければ勝負する気は無い。


「え、えっと……」


「どうした? 何か顔が赤いけど熱でもあるのか?」


「お、お気になさらないでください……。コレは別に病気とかではありませんので…」


 風邪かと思ったが違うみたいだ。じゃあ一体何なんだ?


「そ、その……条件についてお聞きしたいんですが、どうしてもソレでなくてはいけないんですの?」


「勿論。言っておくが条件内容を変えるつもりは一切無いぞ」


「そ、そうですか………」


 キッパリ答える俺に羽瀬川はがっくりと首を垂らす。


 何故お前はそこまで落ち込むんだよ。訳分からんぞ。


「………あの、そんなに理由を聞きたいんですか?」


「当たり前だ。コッチは一年の頃から執拗に剣道部に入れって言われたんだからな。お前がそこまでするって事は何か大きな理由がある筈だ」


「……………………」


「何だったら今此処で理由を言っても構わないんだぞ?」



ガタッ!



「そ、そんなの言える訳無いじゃないですか!」


「ちょ……! 静かにしろって……!」


 突然立ち上がって怒鳴る羽瀬川に、俺は声を抑えながら静かにするようにジェスチャーをした。


 羽瀬川が叫んだ事に、本を読んでいた生徒達が一斉にコッチを見ている。


 いや、睨んでると言った方が正しいな。すいませんでした。


「ったく。お前はいきなり何してるんだよ」


「す、すいませんでした」


 咎めるように言うと、羽瀬川は周りを見て頭を下げながら椅子に座る。


 ってかさっきのは羽瀬川らしくない行動だったな。いつも毅然としているのに、あんな焦ったかのように慌てる何て意外だった。


 俺の問いはそんなに慌てる内容だったのか?


「まぁ今すぐに無理なら放課後に聞かせてもらうとするが……で、さっきから何度も聞いているんだが、返答は?」


「…………わ、分かりましたわ」


 やっと俺が望んだ返答が来た。全く、条件の返答を聞くだけで結構間が空きすぎだっての。


「よし。それなら勝負が終わってすぐその場で言って――」


「ま、待って下さい……!」


 俺が言ってる最中、羽瀬川は声を抑えながら遮ってきた。


 流石にもう大声を出したら今度は先生が注意してくるからな。


「り、理由を聞くのでしたら……出来れば人がいない所にして欲しいのですが」


「何だ? 周りに聞かれちゃ不味いのか?」


「え、ええ……一応……」


 さっきから羽瀬川は何か様子可笑しいな。顔を赤らめるだけじゃなく、妙にしおらしくなってる。


 いつもの羽瀬川じゃない事に少し調子が狂うな。


「理由を話してくれるなら俺は別に構わないが……」


「そ、そうですか……。で、ではわたくし、ちょっと準備しなければいけない事が出来ましたのでこれにて失礼しますわ」


「え? 準備?」


 理由を聞くだけで準備する必要があるのかと聞こうとする俺だったが、羽瀬川は立ち上がって読んでいた本を片付けて素早く図書室を出て行った。


「…………何か今日はいつもの羽瀬川じゃないな。一体どうしたんだアイツ……」


 羽瀬川の様子が可笑しい事に俺は不可解に思いながら本を読もうとするが、何かもうそんな気分じゃ無くなった。


「これは借りる事にするか」


 そう言って俺は席を立って、持っている本をカウンターで借りる許可を貰い、図書室から出た。


 教室に戻る途中に、


「あれ? 修哉じゃないか」


「和人か」


 一人で行動している和人と鉢合わせた。

あ~~オリジナルを書くと短くなります。


長く書かなければいけないと言うのに、どうしてこんなに短いんだか。

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