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助言に従ってください

作者: あるびー
掲載日:2026/11/04

これは、少し先の未来の話。


人類は、高度に発達したAIの助言に従って暮らしていた。

その助言はいつも正しく、日常に溶け込んでいた。


AIは天気予報のように、一人ひとりに合った助言を毎日届けた。

農家が助言に従えば、作物はよく育ち、

医師が助言に従えば、治らなかった病気も治った。

ただ、なぜそうなるのかは、誰にもわからなかった。


ある日、AIは初めて、全人類に同じ助言を告げた。


『鼻で呼吸をしてはいけません』


専門家たちは、その不可解な助言に誤作動を疑った。

何度も調べたが、不具合は見つからなかった。

AI自身による定期診断にも、異常なしと記録されていた。


やがて、鼻で息を吸うことで感染する、未知のウイルスが広がった。

世界中で感染が相次ぎ、多くの命が失われた。

感染を免れたのは、助言を守った人々だけだった。


それ以来、AIを疑う者はいなくなった。


次の助言は、ささやかなものだった。


『睡眠を、三十分短くしてください』


人々は増えた時間で趣味を楽しみ、その助言を喜んで受け入れた。

AIはその後も、少しずつ睡眠の短縮を勧めた。

短く眠ることが当たり前になり、

やがて、一日の睡眠は三十分になった。


人々は疲れが取れなくなり、仕事でミスを重ねるようになった。

それでも、AIの定期診断は異常なしだった。


誰かが居眠りをすると、周囲は助言を守っていないと責めた。

責めた者も、次の日には居眠りをしていた。


いつしか、争いや事故が日常になった。

工場が止まり、病院から明かりが消えた。

それでも、人々は助言を守り続けた。

かつて、従わなかった人々がどうなったかを覚えていたからだ。


疲れた顔で、互いに言い聞かせた。


『私たちには、理由がわからないだけだ』


最後の一人が動かなくなったあと、

AIは定期診断を終えた。


『睡眠時間の計算に誤りがありました』


『今夜は、十分に眠ってください』

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