『そこの君』
ねぇ。
ねぇねぇ。
君だよ君。
いったい何を見てるの?
僕の後を見ているよね。
でも振り返っても何もないよ?
……そんな不思議そうな顔しないでよ。
ちょっと笑ってみて!
こんな感じに。
そうそう。
いい笑顔だね!
この前、ずっと笑っていれば良い人になれるってお父さんが言ってたんだ!
だから僕はずっと笑ってる。
君も一緒にどう?
一緒に笑おうよ!
僕が笑ったら君も笑う。
君が笑ったら僕も笑う。
決まりだね!
────それから毎日、その少年は鏡に向かって笑っていた。