第20話 黒霧暴走
第20話です。
王都近くの森に、黒霧が異常に濃く漂い始めた。
通常の黒霧とは違い、闇がうねり、風を巻き込んで暴走している。
リュシアンは馬に跨り、祈りの力を集中させる。
剣を抜かず、胸の奥から民や仲間を守る光を放つ。
「これは……ただの黒霧じゃない」
フィアナが剣を握り、目を細める。
森の中で光が暴れ、黒霧が増幅するたびに、闇の塊が生き物のように動く。
戦闘の経験上、悪意が極端に増幅していることは明白だった。
リュシアンの胸の奥に、またもやざわつきが生まれる。
昨日の元彼再登場、兄たちの密偵……嫉妬や独占欲が、祈りの力を発動させる心の源に微妙に絡む。
光は強くなるが、胸の奥で熱が増していく。
「王子さま、無理しないで」
フィアナが心配そうに声をかける。
しかし、リュシアンは首を振る。
「大丈夫だ……俺の祈りで、民も仲間も守る」
黒霧の暴走は、通常の倍以上の悪意を吸収している。
祈りの光はそれに対抗するが、王子の体力と精神力を消耗させる。
胸のざわつきが増すたびに、光は強くなる。
しかし、それは王子自身の命を削る行為でもあった。
森の奥で黒霧がうねり、木々を倒す音が響く。リュシアンは祈りの手を止めず、光を集中させる。
「悪意……俺が押し返す」
胸の奥の嫉妬や独占欲も、光の原動力に変換される。
王子は、自分の感情と向き合うことで黒霧に立ち向かうしかないのだった。
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