第17話 穏やかな会話
第17話です。
朝の光が森の木々を黄金色に染める中、リュシアン・アストリアは、馬車のそばで剣の手入れをしていた。
昨日、元彼が再び姿を現した場面を思い出すが、今はもう心の中で整理がついている。
胸のざわつきは少し残るものの、理性で押さえ込むことができる。
「王子さま、今日も天気がいいね」
フィアナ・カルディアが笑顔で声をかける。
いつも通り、無邪気に花を摘んだり、枝葉に生った小さな実を手にとって遊ぶ。
元彼の存在は、確かに王子の心を一瞬揺らしたが、今はその影響をほとんど感じない。
リュシアンは手を止め、微笑みを返す。
「ああ、いい天気だな。森を歩くにはちょうどいい」
自然に会話を交わすだけで、王子は心の中のもやもやが少しずつ解けていくのを感じる。
戦いの緊張も、嫉妬や独占欲も、この静かな日常の中では波のように穏やかになっていく。
「昨日は元気そうだったね。森を歩くのも慣れた?」
フィアナが笑顔で質問する。
王子は答える前に一瞬考える。
元彼のことを思い出しても、ヒロインが自然体でいる限り、自分の心も落ち着ける。
「そうだな。君と歩くと、心が軽い」
その言葉に、フィアナは嬉しそうに笑う。
「私も、王子さまと一緒だと楽しいよ」
二人の間に静かな空気が流れる。
元彼の存在は過去の出来事に過ぎず、今の二人には本当に何もない。
王子はその事実を心で受け止め、安堵を覚える。
森の風が二人の間を通り抜け、葉のざわめきが穏やかに響く。
「今日はどこまで進む?」
「川沿いを少し歩いてから、次の村まで行こう」
自然体の会話は、王子にとって戦いや嫉妬から解放される貴重なひとときだった。森の静けさと陽光が、胸の奥のざわつきを静め、王子の心を少しずつ穏やかにしていく。
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