第五章 女神アテナ「お風呂に入りましょう!」はっ?
村に辿り着いた蒼太は、想像以上に温かい雰囲気に包まれた。
石造りの家々が立ち並び、畑では野菜が育ち、子供たちが元気に走り回っている。
「うわ、めっちゃ平和そう……」
蒼太が村の入口に立つと、畑仕事をしていた男性が近寄って来た。
モンスターを倒したと言えば、食べ物や宿を分けてくれるかもしれない。
蒼太は近くのダンジョンに行ったこと。一層のボスを倒したことを告げた。
「なんと!!」
男性が目を丸くした。
「シャドウロードを倒したのか!?」
「は、はい」
「村長ー! 大変だー!!」
男性が村の奥に向かって叫ぶ。
♢ ♢ ♢
蒼太は村の広場で、人々に囲まれていた。
「本当にシャドウロードを倒したのか!?」
白髪の村長が、驚愕の表情で蒼太を見つめている。
「どうしてそんなことができたのじゃ!? あれはレベル12の強敵……冒険者でも3人パーティーで挑む相手じゃぞ!」
「えっと……神様がスパチャをしてくれて……」
「スパチャ?」
村長が首を傾げた。
「い、いや……なんていうの? 神様とコンタクトできて、力を貸してもらったんです」
「コンタクト!?」
村長の目が飛び出しそうになった。
「か、か、か、神々とコンタクトをとれると申すか!?」
「は、はい……」
「この者は神々とコンタクトをとれる選ばれし者じゃー!!」
村長が叫んだ。
村人たちがざわめく。
「選ばれし冒険者殿! 今日は宿を用意する! ゆっくり休んでいくといい!」
村長が蒼太の手を握った。
♢ ♢ ♢
村長が用意してくれた宿は、小さな木造の家だった。
「ふうー」
ようやく一息つける。
蒼太はベッドに座り、スマートウォッチを見た。
「みんな、見てる?」
『見てるよー』
『@戦神アレス:当然だ』
『@雷神トール:お前の一挙手一投足を見守っている』
『@冥界の神ハデス:トイレは覗かんが』
『@知恵の女神アテナ:ええ! トイレ駄目なんですか!? お風呂は?』
『@戦神アレス:駄目に決まっておるだろう』
『@知恵の女神アテナ:ちょっとぐらいいいじゃありませんか! 溺れないように見守るだけですものねえ(ジュル)』
アテナさんはヤバい女神様みたいだ。
蒼太は背筋が寒くなった。
窓の外を見ると、村の子供たちが遊んでいる。
平和な風景。
「……なんか、いいな」
現実世界では、オタク扱いされて避けられてた。
でもここでは、「選ばれしもの」として尊敬される。
「ここで暮らすのも……いいかもな」
トントン。
ドアがノックされた。
ドアを開けると、金髪の三つ編みの可愛い少女。
「あ……」
「私、ミラっていいます。村長の孫で……夕飯の準備ができたので」
「は、はい!」
蒼太は慌てて立ち上がった。
『可愛い子きたw』
『@太陽神アポロン:ほう』
『蒼太、顔赤いぞw』
『@知恵の女神アテナ:わたくしの蒼太クンよ!』
♢ ♢ ♢
村の広場で、歓迎会が始まった。
テーブルには料理が並び、村人たちが集まっている。
「蒼太さん、シャドウロード倒したって本当ですか!?」
「神々とどうやってコンタクトとるんですか?」
若者たちが興味津々で話しかけてくる。
「えっと……このスマートウォッチで」
「すげぇ……」
その時――
村長は深刻な表情で蒼太を見た。
「蒼太殿……実は、頼みがある。私の孫娘、ミラが……ダンジョンの呪いで余命いくばくもないんじゃ」
「え……」
ミラが涙目になった。
「エルドリア大迷宮の10層に巣食う魔物、『シャドウキング』の呪いだ」
「どうすれば……」
村長が続ける。
「ダンジョン十層のシャドウキングを倒し、その核を持ち帰れば、呪いは解ける」
「……」
村長は蒼太を見つめた。哀願するような目つき。
「無理にとは言わん。シャドウキングはレベル20。レベル1のお主では相当に分が悪い。じゃが、もし可能なら……」
初心者用ミッションってやつか。村の娘を助ける。鉄板中の鉄板。
――助けたい。
でも――
――死にたくない。
蘇生が三回縛りの上に、レベルが1で止まっている。
きっと、神々からのチート武器で、経験値が得られてないんだ。
蒼太の感情はせめぎ合った。
『@戦神アレス:……蒼太』
『@太陽神アポロン:できそうにないミッションは、引き受けなくても良いぞ』
『@豊穣の女神デメテル:あなたの人生です』
『@豊穣の女神アテナ:お風呂に入って一息つきましょう』
『@戦神アレス:……だが、戦うのなら、こちらも、それ相応の対応を取らせてもらう』
「……俺、ずっと逃げてきたんだ。学校でも、友達作るのも怖くて逃げて。現実が辛くて、ゲームに逃げて」
『蒼太……』
「でも、力を貰って、誰かのために活躍できるなら——」
拳を握る。
「やります。ミラさんを、絶対に救います!」
チャリーン♪ チャリーン♪ チャリーン♪
【@戦神アレスからスーパーチャット:30,000円】
「よく言った! 最強の剣を授けよう」
【@知恵の女神アテナからスーパーチャット:20,000円】
「10層までの攻略マップよ」
【@豊穣の女神デメテルからスーパーチャット:15,000円】
「回復アイテムをたくさん」
【@雷神トールからスーパーチャット:25,000円】
「雷の加護だ」
蒼太は涙を拭いた。
「みなさん、ありがとうございます! 頑張ります!」
【視聴者数:8,991人】
・・・・・・・
・・・
・
『@戦神アレス:やはりこの男にスパチャをして正解だったな』
『@豊穣の女神デメテル:ええ、本当に優しい子ですわ』
『@雷神トール:こういう奴は嫌いじゃない。手を貸してやる』
『@太陽神アポロン:素晴らしい。投資した甲斐があった』
『@冥界の神ハデス:フン。まあ、悪くない』
『@知恵の女神アテナ:お風呂……』




