第四章 女神アテナ「即死級です」うぇぇええ!?
蒼太が奥へ進むと、通路が広くなってきた。
そして――
ゴォォォ……
低い唸り声が聞こえてきた。
目の前には巨大な扉。
扉には古代文字が刻まれている。
「これ……ボス部屋?」
ピピピピピ!
スマートウォッチが警告音を発した。
【ボス部屋】
【シャドウロード Lv.12】
【推奨人数:3人】
「やっぱりボスか……」
蒼太は扉の前で立ち止まった。
コメント欄が騒がしくなる。
『Lv.12か……』
『@戦神アレス:行け!』
『@知恵の女神アテナ:落ち着いてください』
『@豊穣の女神デメテル:無理はしないでくださいね』
『頑張れ!』
蒼太は深呼吸した。
「……やります。僕はもう引きません!」
そう、
みんなが見てくれているんだ。かっこ悪いのはこりごりだ。
その瞬間――
チャリーン♪
【@戦神アレスからスーパーチャット:10,000円】
『仕方ない。攻撃力を上げてやる。ありがたく思え』
蒼太の剣が微かに光る。
「ありがとうございます!」
アレスさんからの応援。頼もしい!
蒼太は扉に手をかけた。
ギィィィ……
重い音を立てて扉が開く。
♢ ♢ ♢
ボス部屋は円形の広間だった。
中にいたのは、体長3メートルはある、巨大な黒い狼。
【シャドウロード Lv.12】
【HP:800/800】
「でかい……」
蒼太は思わず後ずさりした。
ガルルル……
シャドウロードが低く唸る。
『@知恵の女神アテナ:落ち着いて。弱点は首と腹部です』
『アテナさんwiki説w』
『@戦神アレス:剣の相性はいい。だが技術が必要だ』
『逃げてもいいぞ』
蒼太は剣を構えた。
シャドウロードが跳びかかってくる。
速い!
蒼太は横に転がって回避した。
ドガァン!
シャドウロードの爪が地面を抉る。
「やべぇ、今の喰らってたら死んでた……」
『ナイス回避!』
『@雷神トール:いい動きだ』
蒼太は立ち上がり、反撃の剣を振るった。
ブォン!
炎の剣がシャドウロードの急所をとらえる。
ギャオォォ!
シャドウロードが悲鳴を上げる。
【シャドウロード HP:700/800】
「効いてる! でも浅い……」
蒼太の攻撃力では、ダメージが通りにくい。
『@戦神アレス:剣の使い方が甘い。もっと踏み込め』
『@知恵の女神アテナ:集中してください』
シャドウロードは口を大きく開き、黒い球体を吐き出してきた。
「うえぇ!? なにあれ!?」
『@知恵の女神アテナ:シャドウボール! 即死級です!』
「即死!?」
蒼太は必死で横に飛んだ。
ドゴォォォン!
シャドウボールが壁に激突し、爆発する。
「危ねぇ……」
『ギリギリすぎる』
『集中しろ!』
蒼太は息を荒げながら、再び剣を構えた。
シャドウロードが再び襲いかかる。
今度は――
「よく見る……!」
蒼太は相手の動きをじっと見た。
爪が振り下ろされる。
その瞬間、蒼太は前に踏み込んだ。
「中に入る!」
ガキィン!
爪が蒼太の頭上を通過する。
完全に懐に入った。
蒼太は剣を首に向けて突き出した。
ズバァン!
炎が爆発的に広がり、シャドウロードの首に深々と突き刺さる。
【シャドウロード HP:400/800】
『おお!』
『@戦神アレス:いい踏み込みだ!』
『成長してる!』
だが、蒼太も無傷ではなかった。
シャドウロードの尻尾が蒼太の脇腹を打った。
「がはっ!」
蒼太は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
【HP:45/100】
「いって……」
痛い。本当に痛い。
『@豊穣の女神デメテル:大丈夫ですか!?』
『やばいぞ』
蒼太は立ち上がった。
チャリーン♪
【@豊穣の女神デメテルからスーパーチャット:3,000円】
「女神の恵みのパンを」
蒼太の手に、小さなパンが出現した。
「ありがとうございます!」
蒼太は一口パンを齧る。
【HP:70/100】
回復した。でも全快ではない。
『@豊穣の女神デメテル:これが限界ですわ』
『無制限じゃなかったのかよw』
『ギリギリの戦いを楽しむタイプだなw』
『神様ひでぇw』
シャドウロードも傷ついている。HP半分。互角の状態だ。
ガァァァァ!
足音、呼吸音、気配。
全てを感じ取りながら、剣を振るう。
『@雷神トール:戦士の本能が目覚めてきたな』
『@戦神アレス:いい戦いだ』
そして――
ついに
ズシャーー!!
ズバァッ!
蒼太の剣が、シャドウロードの首をはねた。
ギャアアアアア……
シャドウロードが断末魔の叫びを上げ、黒い霧となって消滅した。
【シャドウロード撃破!】
【報酬:500ゴールド、シャドウの牙×1】
「勝った……!」
蒼太はその場に膝をついた。
「はぁ……はぁ……やった、マジで勝った……!」
コメント欄が爆発する。
『うおおおおお!』
『初ボス撃破!』
『@戦神アレス:よくやった!』
『@知恵の女神アテナ:自分の力で勝ちましたね』
『@雷神トール:戦士の才能がある』
『@太陽神アポロン:感動したぞ』
チャリーン♪チャリーン♪
祝福のスパチャが降り注ぐ。
蒼太は涙が出そうになった。
「皆さん……ありがとうございます!」
蒼太は配信画面に向かって深々とお辞儀した。
♢ ♢ ♢
ダンジョンの外に出ると、青空が広がっていた。
「うわ、気持ちいい……」
新鮮な空気が肺を満たす。
蒼太は周囲を見渡した。
すると、遠くに煙が上がっているのが見えた。
「あれ……村?」
『@知恵の女神アテナ:ええ、近くの村です』
『村人いるのか』
『会いに行けw』
蒼太は村へ向かって歩き始めた。
視聴者数は――
【視聴者数:6,821人】
また増えていた。
蒼太のチュートリアルはようやく終わった。




