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第4話 痛い系なBL?

(この人たちとは関わらないほうがいい) 


 少女はそう思った。


「わたしなんかが、あなたのような美しい男子のハーレムにはいるなんて百年早いので、遠慮しておきます」


 少女はそういって、その場から離れようとした。


「まて。おぬしの鼻すじ、鼻の下、とんがった上唇、それらが我の性癖をこの上なく刺激するのじゃ。

 もうたまらんのじゃ。

 どこにも行くな。

 我のハーレムにはいり、我の腕の中で眠るがいい」


 少女は後じさりしていた。


(この人、イケメンだけど、絶対に痛い系だ)


 少女はとうとう逃げ出そうとした。


 ドンッ!


 走り出した途端、誰かにぶつかってしまった。


 それほど強く当たらなかったので、少女はびっくりするだけで済んだ。


「ごめんなさい」


 相手は冒険者の男だった。


 装備から見て剣術士ソード・マスターに違いない。


 彼は、鋭い目つきで睨んでいた。


 ただし、少女をではなくアンドレーをだ。


「オイお前、唇が変色してるってことは違反者だな」


 正義感溢れる好青年だった。


 爽やかなコロンの香りがする。


 だが、その香りの奥に、なんとなく血なまぐさいものを感じさせた。


「そうじゃ」


 アンドレーは悪びれることなく返事した。


「お前は、冒険者のルールだけでなく、一般的なモラルも守れないのか?」


 相手は、完全にアンドレーを変質者扱いしている。


 美女を3人も従えた変質者など見たことはないが。


「この子が困ってるじゃないか。

 これ以上付きまとうんじゃない」

 

 アンドレーは、何も言い返さなかった。


 しかし、すごすごと退散することもなかった。


 彼は、青年とぶつかった視線を逸らすことなく前に進み出て、息がかかりそうな距離まで顔を寄せた。


 少女と3人の娘は緊張した。


 二人の男が火花を散らせているように見える。


 険悪なムードが漂っているのが、周囲の買い物客にも伝わったらしく、喧嘩でもはじまるんじゃないかと、ザワつき始めた。


「なんのつもりだ?」


 青年が威嚇した。


 すると、アンドレーがわけのわからない行動をとり始めた。


 彼は、警察犬のように鼻を効かせながら、剣術士ソード・マスターの体の匂いを嗅ぎ始めた。


 なにかの隠しスキルか?


 相手もそこそこの美男子であったから、変に色っぽいシーンになった。


 イケメンがイケメンのスメルを貪っているのだ。

 

「おい! なんだよ、やめろよ」


 アンドレーは、相手が振り払おうとすればするほど頑なに匂いを嗅いだ。 


「いい加減にしろ!」


 青年が叫びながら、やっとの思いでアンドレーを振り払った。


 彼の腕一面に鳥肌が立っていた。


「気持ちわりぃーな」   


 青年がひどい剣幕で睨みつけると、アンドレーは急に興味を失ったように去っていった。


 青年も、少女も、周りのやじうまも、アンドレーのあまりの奇妙さに呆気に取られるばかりであった。

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