第14話 痛い系なレイヤードスキル
ポムは、何度も何度も血を吐いた。
アンドレーの攻撃は、彼の予想を超えていた。
(まさかここまでやりやがるとは……)
命に別状はないが、後遺症を免れそうにない。
それほどの痛みであった。
ポムの仲間のひとりが、エアメールのスキルを使った。
彼は、冒険者の恰好をしていなかったが、風魔道士であった。
彼が、保安局に向かってエアメールを送り、通報したのだ。
ポムたちは、アンドレーにわざと暴力事件を起こさせ、警察に逮捕させようと目論んでいた。
アンドレーをはめて、牢屋にブチ込むつもりだったのだ。
想像以上の攻撃を受けてしまったが、狙い通りの結果になりそうだった。
アンドレーは、べつに逃げようとはしなかった。
すぐ近くに待機していたエミーリアたち3人と合流し、エディタを託した。
3人はエディタを連れて、避難した。
そうこうしていると保安官が駆けつけてきた。
アンドレーは、堂々と、自分のやったことを白状した。
彼には手錠がかけられ、猿轡がはめられた。
ソードマジカでは、逮捕されたものは、物理スキルを封じる手錠と、魔法スキルを封じる猿轡を強制される。
アンドレーはその恰好で、保安局に連行された。
その逮捕劇を見物するために、野次馬の人だかりが出来ていた。
彼ら彼女らは、アンドレーの唇と拳の色から、違反者だときづき、罵詈雑言を浴びせた。
「このクソ違反者! とうとう人に危害を加えたか!」
「おまえはソードマジカの敵だ!」
「そんな奴死刑にしちまえッ!」
当然のことだが、アンドレーは、顔色ひとつ変えなかった。
ポムは病院に緊急搬送された。
彼の応急処置にあたった病院の回復魔道士が、あることを発見して、顔をしかめた。
「これはなかなか治りませんね」
ベッドで苦しむポムが言う。
「ふざけんなよ、ヤブ医者がッ!
ただの格闘家の物理攻撃スキルだろ。
回復魔法でとっとと直しやがれ。
さもないと父さんに頼んで職業ライセンスを剥奪してもらうぞ!」
回復魔道士の男性医師は、苦々しい顔で言った。
「ただの物理攻撃スキルじゃない。
黒魔術士のスキルを上乗せしたレイヤードスキルだ。
回復魔法では直せない」
ポムの顔が固まった。
(レイヤードスキルだと!?)
レイヤードスキルは、スキル規制法によって禁止されている危険行為。
発動したスキルが終了する前に、別のスキルを発動させる行為のこと。
二つのスキルを重ねて使うことだ。
これをすると、スキルパワーのエネルギー波動が干渉しあい、予想不能の現象を起こしかねない。
予期せぬ災害が起きる恐れがある。
だから、絶対禁止なのだ。
アンドレーは、その禁忌を破った。
ポムを滅多打ちにした際、拳舞嵐を使用したが、それと同時に、黒魔術士のスキル「ストッパブル」を発動していた。
このスキルは、回復能力を停止させる魔法だ。
回復魔法を使っても、傷が治らなくなる呪いなのだ。
アンドレーは、そのスキルを拳舞嵐に重ねて使った。
その結果、ポムの腸に治療困難な傷がついたのだ。
飲み食いができない一大事だ。
ポムは、医師から症状の説明を受けると、もう人間とは思えない、鬼のような顔になった。
(おのれッ! アンドレー!)




