十七 嘘の証言
白鳥は署に戻り書類を作成していた。その時上司の菊池が来て主任監督を
殺した加害者が検察で供述を変えた。教団の幹部より命令されたと自供したが
、検察は自供が可笑しいので精神鑑定した。そして、精神病と判定した。
だから起訴はされないようだと話した。
白鳥は例の宗教の力が陰で動いているような気がした。
立ち上がろうとした時に弾みでノートが床に落ちた。
ノートを拾うと正人の日記帳だった。
日記の内容は依前に武内と溝口が精神病の事で確認してあった筈だった。
日記帳はミクがアパートに尋ねて来た事を主に書いてあり、書かれていた日付
より全てが妄想と確認できた。
その時はミクへの妄想以外のことは重要だと思わず他の事は確認していなかった。
白鳥は椅子に座り直しノートを開いた。
信二よりミクの浮気を聞いた時、美鈴が同席して義父との事を聞いた時の日付と
店の名前が書いてあった。
日付と妄想かどうかを確認するため白鳥は早速その店に向かった。
まだ準備中だったが、三人の写真を見せると店の主人は覚えていて、
正人の日記通りだった。
何故覚えていたのかを聞くと、信二と美鈴から例の宗教団体への勧誘がしつこ
く、正人も普通の人では無いように思えて覚えていたらしい。
これでミクと義父の殺人事件は足元から崩れていくと白鳥は感じた。
白鳥は信二と美鈴を訪ねて詰問すると、やはり、教団幹部からの指示で、ミクの
浮気と義父との関係を正人に話すように、そしてそれは口外しないように、
警察には正人の事も知らないと証言するようにと言われていた。
その理由を幹部に聞いたが教えて貰っていなかったらしいが、正人に義父と
ミクに対して憎悪を抱かせる結果になったのは確かだった。
白鳥は調査した結果を書類にして上司の菊池に提出して、再捜査と精神科医の
石田の出頭を依頼した。
数日後、菊池が来て再調査と石田の出頭は却下され、この事件は既に終了している
から関わらないようにと署長より言われたと白鳥に伝えた。




