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十五 自愛教の事実


 菊池と白鳥は現場監督殺人事件の担当を外された。


白鳥は残務処理に戻って、ミク達の新興宗教に付いて調べる事にした。


この町で自愛教の地区長だった男の名前と住所が分かったので尋ねた。


まだ二十五歳の若い男だった。


白鳥は集合写真を見せて正人の事について聞いた。


「知っています。私が入会の手続きをしました。私と同じ年齢で大人しい

青年でした。まさか、あんな事件起こすとは思いませんでした」


「正人さんの入会の目的はミクさんでしたか?」


「いいえ、ミクさんを目当てで入会する人は多いのですが、彼は違いました。

長い間、病気で家に籠り、最近になり病気も良くなり、世間に出て来たが友達が

出来な無かったそうです。ネットで調べてこの会を知って来たようです」


「この写真は何処ですか?」と集合写真を見せた。


「正人さんが入った頃で伊豆の旅館だと思います」


次に白鳥は海での二人の写真を見せた。


「二人だけの自撮り写真があるが、正人さんとミクさんは付き合って

いたのですか?」


「それはありません。ミクさんはサービス精神が旺盛でこの旅行に来た全員と

撮っていました」


「正人さんはこの会に何回も参加していましたか?」


「この旅行が最後で退会して行きました」


「他に何か、変わった事ありませんでしたか?」


「正人さんが教祖とミクさんを殺害したのは信じられません。それに教祖と

ミクさんが亡くなって得をしたのはある宗教団体です」


「ある宗教団体とは? もしかしたら、政治家の黒山氏の票田になっている

宗教団体ですね。 なぜ得なのですか?」


「そうです。私達の自愛教は教祖とミクさんが亡くなる前までは全国に十二万人

ほど居ました。その内十万人がその宗教団体からの入信者でした。教義が

似ていますが、私達の教義が少し過激でした。それで若い人が多く入信しました。

色々クレームとか嫌がらせを受けました。一番酷かったのが、黒山氏の政治力で

宗教団体の認定が降りなかった。でも金儲けのための宗教じゃないので教祖や

ミクさんは平気だった」


「でも、何もないじゃやっていけないでしょう?」


「ああ、会費が年二万円で、旅行費用は自分持ちです」


「しかし、会費だけで二十四億もあり、経費を考えても十億は残ると思いますが、

誰が管理していました?」


「そう言われればそうですね。教祖が管理していました」


「私は捜査していて、前から教祖は良い人には思えなかった。中年で教義との

理由付けで若い娘と肉体関係を持ち、金を儲ける」


「刑事さん、私達もそれには抵抗がありましたが、自愛教に入る男は女の子に

もてない、話も出来ない人達です。その辺は分ってやって下さい。教祖はともかく

ミクさんが死んでしまって自愛教が存続出来ないのは残念です」

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