十四 殺された現場監督
白鳥が署に着いた途端、上司の菊池から声が掛かった。
殺人事件が起きたと、殺人は工事現場で起こった。
被害者は正人が勤めていた建設会社の主任監督だった。
そして、主任監督は正人の後見人だった。
工事現場の下にいた監督に上部から鋼材が落とされた。
救急車で病院に運ばれたが亡くなった。
加害者は建設作業員で監督に恨みを持っていたと話していた。
何時も怒られていたので何時か仕返しをする積りだった供述した。
他の作業員に聞き込みをしたが、監督が加害者を怒っている処は見ていないとの
証言で動機が不十分だった。
白鳥は加害者のアパートに捜査に入った。
すっきりした部屋で家具など余分な物はなかった。
ただ立派な仏壇が置いてあり、仏壇の中央に白い和紙で包まれた本尊のような
ものが置いてあった。
仏壇の手前の経机の引き出しを開けると、宗教への入会書が入っていた。
その宗教は黒山氏の票田の宗教団体だった。
他には参考になる物は無かった。
白鳥が署に戻ると菊池から加害者と監督は同じ宗教団体に入会していて、監督が
地区長で加害者は唯の信者だった。
宗教上の諍いで、加害者の勧誘の仕方で良く注意を受けていた。
不満が蓄積して犯行に及んだと自供したと聞いた。
白鳥は自供に何か無理がある気がした。
それ以上の取り調べも無く加害者は検察に廻された。




