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十 辞表
起訴されたが、検察官は正人が妄想でミクを恋人と思い込み自殺したので
起訴は却下された。
妄想でなく現実だったら起訴されていたと話していた。
警察署は黒山氏の手前から武内に辞表を出すように依頼した。
武内も定年が近かったので辞表を提出した。
武内は妻にも五年前に先立たれ、娘も嫁に行き一人暮らしだった。
家に帰って来て玄関を開けると下駄箱の上に置いてある鉢植えのシクラメン
の白い花が満開だった。
この花は正人のアパートに枯れそうに放置されているのを武内が持って来て世話
をして花が咲くまでになった。
この花は正人が妄想で用意したものか分からないが? ミクとの妄想を死ぬまで
本当と思い込んでいたことが正人にとって救いだと思えた。
今咲いているシクラメンの白い花が妄想でない事は確かだった。
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