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第九十一話 僕の仕事

 初めて見るドワーフ族だが、僕が聞いていたのは酒瓶を腰に付け片手にハンマーを持っている者達のはずだったが、目の前の男は野性的な顔をしているものの、酒瓶どころかハンマーすら持っていない。


「すみません。僕は客では無くて……手紙を見てくれますか」


 先程からこの男から溢れる威圧感で上手く言葉が出てこない。ラウラもそうらしく僕より大きいくせに僕の背中に隠れようとする。


「何の手紙だ、早く見せてみろ」


 背負い袋の中はそれほど物が入っている訳じゃないのに、こういう時に限って手紙が出てこない。もたもたしているとドワーフは僕から袋を奪ってその中身を床にばら撒いた。


 うわぁ~雑だな、文句は言えないけどな。


「あぁその手紙です。読んで貰えますか」

「えっこの封蝋の紋章はアールシュ様じゃないか、坊主、お前は何なんだ」

「何だと言っても、ただこの手紙を此処に持って行くように言われただけです」


 そのドワーフは隣にある槍を使って器用に手紙を取り出し、そのまま床に座って読み始めたので僕は散らばってしまった私物を袋にしまいながら読み終わるのを待った。


 もうとっくに読み終わったはずなのにそのドワーフは手紙から目を離さないし、息をしていないのではないかと思うぐらいに全く動かない。


「どうしたのかな、何が書かれているんだろう」

「さぁな、まぁアールシュ様を信じるしかないんじゃないか」

 

 すると座ったままの姿勢でそのドワーフは上目遣いで見てくる。


「お前みたいなガキが武具に魔法陣を書くだと、そんな高度な真似が本当に出来るのか……けどなぁ」


 アールシュ様の手紙でもその事は信じられないらしい。それならば僕がやる事はあれしかない。


「あの、この槍に魔法陣を書いていいですか」

「おいっ、それは槍だぞ、そんな細い物に書けるのか、見せて貰えるのはいいがわざわざそれを選ばなくても良いんだぞ」

「だから良いんですよ」


 やはり僕の実力を見せるならばある程度の事をしないと軽く見られてしまうだろう。確かに槍だと難しいに決まっているが、それが余計に良いんだ。


「出来る事なら上手くいってくれよ、アールシュ様の頼みだからな、分かるだろ」


 その男にとってアールシュ様は絶対なのだろう。だから例え僕が失敗しても雇わなくてはいけないのではないかと考えているのが分かる。


 僕は綺麗な作業室に案内され、道具も全て自由に使う事も許された。


「それじゃあ俺は外で待っているからな、時間はいくらかかっても構わないから終わったら声をかけてくれ」

「そんなに時間はかかりませんので見たければ見ていていいですよ、本当に僕がやるのか気になるんじゃないですか」


「そうだけどいいのか、本当にその槍に書くとすればかなりの技術じゃないか、普通なら他人には見せたくないだろ」

「別にいですよ見られても魔法陣の事を知らないと意味が分からないですからね」


 此処には僕が持っている道具より精巧な道具が揃っているので、これなら彫る事が出来る。細かい魔法陣は書けないが、この長さを利用すればだれが見ても納得してもらえる付与をする事が出来るだろう。


 道具がかなり良かったので彫っている内に楽しくなり、最初に考えていた魔法陣に付け加えて彫っている。僕的にはあっという間の出来事だったが、かなりの時間がかかってしまったようで、部屋の中には灯りがともされていた。


「あぁ気が付きませんでした。かなり時間が掛かってしまいましたね」

「いや、そんな事はどうでもいいんだ。それよりも早く結果が知りたいな。これには何を付与したんだ」


「少しで良いので魔力を流して槍で突き刺すと、その場所から凍っていきますので、討伐した後で鮮度を保つには良いかと思います」


 その男は直ぐに壁を差すと壁が凍り出したので、大袈裟に笑いながら僕の肩を叩き始めた。


「凄いぞ坊主、いやレーベン殿だな。儂はこの店の店主でミドハと言うんだ。これから何をして貰うか真剣に話さないといけないな。いいかい、他の店には行かないでくれよ」


「勿論ですよ、それに出来れば此処にいるラウラにも仕事をくれますか、ラウラも防具になら生活魔法の魔法陣を書けますので」


「そうか君もなんだな、それなら二人ともうちの専属になって貰わんとな」


 話はどんどん進んで行き、簡単にこの街での生活手段を手に入れる事が出来た。暫くは宿で暮らしていたが、宿賃が勿体なくなり、二階建ての一軒家を借りてラウラと共同生活をする事にした。

 



 

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