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第九十話 僕はようやく街に到着した

 トビアスから内通者を教えてもらったので街に到着したら問い詰めようと思っていたが、ビテックと今後の事を話している僅かな時間にその男も、そしてトビアスすら姿を消してしまった。


「どうする、ちょっと探しに行こうか」

「もういんじゃない。どうせ証拠はないんでしょ」


 何処まで関わるかをずっと考えていたので道中は騒ぎにしなかったので、もうこのままでも良いのかも知れない。


 僕達は最後まで見届ける事にして孤児院まで付いて行ったのだが、その孤児院は単なる学校のような施設ではなく、一見すると高級な宿のようでその大きさも目を見張るものがあった。


「何だか凄い施設だね、良く此処迄の施設をこの国は作ったものだな」


 思わず独り言えお大きな声で呟いてしまうと、わざわざムズーリが馬車から降りてきて僕達に近づいてきた。


「国じゃないですよ、これを作ったのはアールシュ様です。そしてこの孤児院を維持できるようにアールシュ様の名前に入った薬も中で製造しています。こんな事は言ってはいけないのかも知れませんが、国は孤児院なんかどうでもいいんですよ」


「ちょっと僕達にそんな事を言っても良いんですか」

「そうですよね、すみません聞き流して下さい」


 こんな事を子供だと思っていたら話す訳は無いので、いつの間にかムズーリさんは僕を普通の子供ではないと思っているようだ。


「そんな事よりさ~あのキャラバンは何だったのよ、無事だったからまだいいけどさ」

「そうですね……おそらくあなた方の想像は間違っていないと思いますよ。ただこれ以上は追及しないでくれないかな」


 ムズーリは悲しそうな表情を浮かべながらハガレの背中を見ている。僕達が想像している事を孤児院に院長なりに言ってしまったらハガレは仕事を失うばかりか捕まる可能性すらある。


「ムズーリさんはそれでいいんですか、死んでいたかもしれないんですよ」


「そうかも知れないけど、ただその時はハガレも一緒でしょう。あいつの行動はもの凄く浅はかでしたが、どうしてもそれを選択してしまった理由があるんですよ。ご迷惑を掛けたお詫びに話しましょうか」


「結構です。もし聞いてしまったら手助けをしたくなるかもしれないので、そうはしたくないんです」


 もっと早く僕達に言ってくれたらとも思ったが、こんな姿の僕に言う訳がない。ただムズーリだけならそのリスクを背負ってもいいが、子供達を巻き添えにして欲しくはなかった。僕はハガレを決して信用はしない。


 こんな風に思ってしまうのは僕が見た目通りの子供なのかも知れないが。



 子供達が孤児院の中に入るのを見送った後で僕達はアールシュ様が紹介してくれた店に向かい、ビテックはギルドに向かって行った。


「まぁ良かったよね、無事に送り届ける事が出来たんだから」

「そうだな、ちょっとスッキリとはいかなかってけどいいよな」

「全てを綺麗に解決するなんて無理だよ、それよりも仕事を貰わないとね」


 アールシュさんが紹介してくれた武具店の場所はムズーリが地図を書いてくれたのでそれに従って向かうが、どう考えても武具店があるような雰囲気が漂ってこない。


「どう見ても平民が居て良い場所じゃ無いような気がするな、こんなとこにあるのか」

「冒険者が近づかないような場所だもんね、なんだかな」


 この道をいつも見ている様な冒険者が歩いていたら不審者と思われてしまいそうだ。そんな家が並んでいる中で、重厚で異質な匂いを放っている黒色の建物が見えてきた。


「あそこだけ世界が違っているな」

「全くこの場に似つかわしくないのに良く此処に店を作ったね」


 こんな住宅街の中に店を作る人物の店で本当に大丈夫なのかとも思ったが、アールシュ様が紹介してくれた店なので先ずは中に入ろうと思う。


 店の中はその大きさに比べて中には人の姿はあまりなく、店員らしき人物は何処にいるのかさえ分からない。


「ねぇ置いてある武具はどうなの、私にはよく分からないんだけど」

「僕だって分からないよ、けど綺麗だよな」

「値段が高いからね。飾り用じゃないと良いけど」


 僕は魔法が専門なので武器には詳しく無いし、防具すら無頓着なので良しあしが分からない。


「お前ら、この本当の価値が分からないのだったら直ぐに出て行くんだ」


 棚の奥から現れたのは身長こそ僕と同じなのだが、その顔はどう見てもドワーフ族だ。


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