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第八十三話 僕とラウラのおせっかい

 ラウラがその職員に話を聞くと、この街から連れて帰る子供は獣人族の子供だけではなくその他の子供を連れて帰るので子供だけで十人となっている。本来ならば直ぐに兵士達と一緒に街に戻る予定だったが、急遽一緒に来た兵士はウズベラ一家のボスの移送の護衛に駆り出される事が決まってしまった。


「それは酷くない。此処にいる兵士が行けば良いんじゃない」

「それがね。離散した子分がボスの奪還を狙っているという情報や、手薄になった街で騒乱を起こすなど不確かな情報が流れているそうなんだ」


 だったらちゃんと体制を整えてからにすればいいと思うのだが、此処の領主はそんな連中の為に予定を遅らせる事は許さないのだそうだ。


「くだらない見栄だね、だったら子供達はもう少しだけこの街に居ればいいじゃない」

「そうするしか無いんだがな、ただ馬車を操縦する男の子供がもうすぐ生まれるんだよ。出来れば生まれるところを見せてあげたくてな」


 ミフィス街までの街道は商人の往来もかなりあるし安全な街道となってはいるが、もしもの事を考えると無理する事は出来ないのが辛いそうだ。


「それでその人は何処に行ったの?」

「商業ギルドだよ、一緒に行動してくれるキャラバンがあるかどうか聞きに行っているんだ。本当は冒険者の護衛を頼むのが良いんだが、そうすると予算がね」


 そんな状況の職員にこんな仕事をさせる孤児院にも問題があるが、それより護衛なら僕とスケルトンがいれば十分過ぎるだろう。


「それなら僕達もミフィス街に行くので護衛をしましょうか」


 自分の身体の事を忘れて言ってしまったので、案の定その職員は何とも言えない様な表情で僕を見てくる。


「あぁそうかい凄く有難いけど親御さんが良いとは言わないだろ、それとも両親も一緒に行くのかい」

「いえ、僕と彼女だけです」


 子供扱いしているので気分は良くないが、これからもこのような事が起こるのでそろそろこの対処方法を考えないといけない。


 するとここに若い男が飛び込んできた。


「ムズーリさん、いい話がありました。荷物の積み込みが終わり次第に出発するキャラバンが僕らの同行を許可してくれたのですが、どうしますか」

「そうか、それなら行くに決まっているだろ、ハガレ、良かったじゃないか」


 こんな昼間に出発となると野営をするつもりなのだろう。全くの知らない子供達ならそれでも構わないが、折角助けた子供たちなのでこのまま黙って行かせたくはない。

 その事を伝えるためにラウラの背中を優しく押してみた。


 ほんの少し睨まれてしまったが、僕の考えは伝わっているようだ。


「野営をするんでしょ、普通の子供なら良いけど誘拐された子供がいるんだよ、怖がるんじゃないかな」

「そうかも知れないが、この街道は事件何て滅多にないし、商人のキャラバンがあるんだから心配する事なんてないさ」


 確かに大事な商品を積んでいる商人達が判断したのだから安全なのだろう。それでも多少気になるのでラウラを突いたら直ぐに僕の足を踏みつけてきた。


「あのぉ、私達も同行していいかな」

「君達がかね、そのそも誰なんだい」


 全てを話す訳にはいかなかったし、少し話を変えてビテックの友達だと告げると僕の頭を力強く撫でだした。


「獣人族と友達になったのか、差別をしないなんて君達姉弟はいい子達だな。ただな親御さんがどう思うかだよ」

「私達の親は……」

「そうか、なら一緒に行こうじゃないか、どうせ乗合馬車で帰るなら同じ事だからな」


 ラウラは息を吐くかのように適当な嘘をつきこの真面目そうな職員を丸め込んでしまった。ちょっとだけ嘘に抵抗があるがこれぐらいは仕方のない事だと思うしかない。


 急いで子供達が準備に入ったので僕達も宿の荷物を大急ぎでしまい込んで街の入口に行くとキャラバンは孤児院の馬車を待っているようだ。


 少しすると個人の馬車が到着し、ムズーリと商人が打ち合わせをしていると、戻ってきたムズーリは怪訝な表情を浮かべながら戻ってきた。


「あの、どうかしたのですか」

「いや、何でもないよ、君達はこの馬車の隣にいればいいからね」


 てっきりキャラバンの中に入れて移動するのかと思ったが、孤児院の馬車は最後尾に付けているしこの馬車の周りにはそれなりにいるはずの護衛の姿は一人もいない。


 僕は馬から馬車に移り、馬車を操縦しているハガレの隣に座った。


「これだと後ろにいるだけですね、一緒のキャラバンのような気がしないんですけど」

「坊やそんな事を言ったら駄目だよ。僕達は護衛にお金を一切払っていないんだから仕方がないんだよ」


 ラウラも気になったのかキャラバンの先頭まで行った後で僕にあの魔石を投げて寄こした。


 気持ちは分かるけど、まだスケルトンは出せないよ。

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