第八十二話 僕の今後の予定
矢継ぎ早に聞かされたので僕の理解はまだ追いついていないが、ラウラは大事な事を忘れている。
「あのさ、それでこの子供達は誰なんだい」
何も説明を受けていないし記憶にも無いので気になって仕方がない。
「あのね、この子達はビテックと同じ村の子供なんだってさ、同じように売られたんだって」
「あぁ分かったからそれ以上は言わなくてもいいよ」
それだけで大方の想像はつくので、子供達に聞こえる場所ではこれ以上この会話は続けたくないがラウラには僕の気持ちは届かない様だ。
「この子達はミフィス街にある孤児院に行くんだってさ、村には帰りたく無いってさ」
何とも言えない話を聞かされたが、子供達が決めた事ならばそれで良いと思う。
「ビテックも孤児院に入るのか」
「ううん、僕は冒険者として働くんだ。ちゃんと稼がないとね」
子供達はミフィス街から孤児院の職員の迎えを待っているそうで、それならば一緒に向かうのも良いかも知れない。
それからの時間は穏やかな時間が流れた後でビテック達はこの街で用意された施設に戻って行った。獣人族の子供達が奴隷ではなくなったことに安堵するが、村に戻りたくないという気持ちを考えると複雑な思いが駆け巡る。
「ねぇ身体は大丈夫なの、どこかまだ痛むかな」
「そうでもないかな、それよりもウルブル一家はどうなったんだ。燃えて終わりじゃ無いだろ」
「そりゃそうよ、あそこはかなり揉めているらしいね」
ラウラが聞きつけたあくまでも噂話だが、ウルブル一家のボスは領主に奴隷の事でかなり詰め寄った挙句に大暴れをしてしまい今は牢屋の中だそうだ。ただどういう訳かこの街では裁く事はせずに別の街に送られることになったそうだ。
「何で暴れたんだろうな。いくら何でもそれだから捕まるんだよ」
「あのねぇあんたが全てを燃やしたからでしょ、せめて子供の奴隷を売り払えば当面のお金になると思ったんでしょ、けど契約書と一緒に呪印も消えたからね、もう奴らの奴隷じゃないんだよ」
僕は確か契約書を燃やせと指示は出したけど全てを燃やす事ないのにな。まぁいいけど。
ウズベラ一家の家や財産を燃やした原因は僕にあると思うけど、この手で殺した訳では無いので罪悪感は全くと言っていい程何も無い。
ただあの魔法はもう少し考えて使用しないと予想外の結果を生んでしまうだろう。
「あっそうだ。あの男はどうなった。トビアスだよ」
「あぁあの男ね、う~んどうだろ私には分からないよ、気になるなら何処かで聞いてこようか」
お金を払えば正確な情報を仕入れる事が出来るそうなのだが、トビアスの為に使いたいとは思わない。
「止めておこうか。ただちょっと気になっただけだからさ」
「それがいいかもね。それよりも火を付けたのが錯乱した男達らしいからそれどころじゃ無いでしょ」
「そう言えばそいつらは……まぁいいか気にしないでおこう」
トビアスならその原因が僕だと気が付いていると思うけど三日も経つと言うのに此処に来ていないと言う事は……聞かないと分からないな。
まぁあえて此方から行かなくてもいいか。
翌日になり、子供達の迎えが到着したというので同行のお願いをしに行くと、そこでは迎えに来た職員が兵士に何かを訴えている。
「何でなんですか、おかしいじゃないですか、一緒にここまで来たと言うのに帰りは私達だけなんてどうしてなんですか。それが分かっていたらこっちだって向こうでそれなりの対応が出来たんですよ。いい加減にして下さいよ」
「だから少しに間ここに留まってくれたら一緒に帰れると言っているじゃないか。早く帰りたいのであれば他のキャラバンと一緒に行動すればいいじゃないか。あのなぁ悪いが会議があるんでな」
「そんな……」
兵士達は慌てた様子で出て行ってしまい、残された二人の職員はあからさまに憤慨している。直ぐに話し掛けたいが僕だと相手にされそうにないのでラウラの背中を押した。
「ちょっと何すんのよ、押さないでよ」
「良いから、何があったのか聞いてくれ」
「だったら口で言いなさいよ、馬鹿じゃないの」
そこまで怒らなくても良いと思うが、歩きだしたラウラは作り笑いを浮かべながら歩きだした。




