表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/122

第七十九話 僕が考えた通りには中々いかないものだ

 僕の背後では死んでいる二人を発見して大騒ぎになっているので慌てて【幻闇】で近くの人間を全てゴブリンに見えるようにイメージを送った。


 僕の希望通りの行動をしてくれるのか分からないが、これなら一人では無くあの連中の全てに魔法をかける事が出来る。



 地下では個別のゲージの中に捕らえられている者達がいて、商品の為なのか不潔ではなく一見すると違和感なく此処で生活しているように見えてしまう。


 この場所はいいのだが、【操闇】で聞きだした情報に従って更に下に降りて見ると、そこにいる者達は劣悪な檻の中にいて、生きているのか死んでいるのかすら分かりにくい。


 これだと全員は無理だな。助けたい気持ちはあるんだけどね。


 ビテックは五人位だと言っていたが、知らないだけで本当の奴隷の数はその三倍以上の数がいた。これでは安全に連れ出す事など僕一人ではどうにも出来ない。

 

 一旦ここを諦め上に行くと、一人の男が死んでいる仲間の死体を更に痛めつけていた。


「な・ん・で・ここにゴブリンがいるんだよ、死ね、死ね」

「ちょっとやり過ぎだよ……操闇」


 生きのこった男に【すべての檻を解放して奴隷を逃がせ】と指示を込めるとその男は下に向かって歩き出した。


 僕が次に魔法を使うまでにどこまでの檻を解放するのかは分からないし、奴隷達も檻が開いてどのような行動をするのかは彼等に任せようと思う。


 それより、奴隷を縛り付けている契約書だよな……せめてビテックだけでも。


 目の前の館はそれなりに大きいし、手下もどれぐらいいるのか分からない。てっきり契約書は倉庫の中にしまってあるのかと思った事が今のところの僕の誤算だ。


「さて……潜闇……やはり駄目か」


 やはりあの魔法で操っていると他の魔法は何も使えない様だ。いつまで待てばいいのか悩んでいると近くの扉が開き、中から男が姿を現した。


「おいっお前は誰だ。見かけない顔だな」

「解除……操闇」


 下に行った奴を解放して目の前に奴に切り替えるが、とっさの事だったので何も命令は与えていないので、糸の切れた操り人形の様にボーッと立っている。


【奴隷の契約書の場所は知っているか】

「いいえ」

【中にはどれぐらいの人間が起きているんだ】

「知らない」


 最初から当りを引くとは思っていなかったが、こいつは役に立ちそうもないので溜息が漏れてしまう。


【契約書の場所を知っていそうな奴の所まで行ってくれ】

「はい」


 その男の後ろに付いて行く。誰かに会ってしまったら面倒な事になるので心臓の鼓動は激しく音を出すが、誰ともすれ違う事なく館に入り一つの部屋の前に立つといきなり震えだして、今度は声も出さずに死んでいった。


 この違いはなんだ。まぁ検証したいけど今は時間が無いからな。


 闇に潜り部屋の中に入ると、長髪の神経質そうな男が辛そうな顔をしながら窓際のベッドの上で眠っている。


 こいつらは家が無いのか、


「まぁいいか……操闇」


 直ぐに目をぱっちり開けて立ち上がるので少しだけ気持ち悪いが、今はそんな事でひるんでいる時間など無い。


【奴隷の契約書の場所は知っているか】

「はい」

【いいか、奴隷の契約書は全て燃やしてしまうんだ。急げよ】

「はい」


 僕が火種になるのもを渡そうと探している間にその男は行ってしまった。僕も気になるが他の奴に見つかった場合の事を考えてこの部屋の中に留まっていると、外が騒がしくなってきた。


「お前ら逃げたって無駄なんだよ、いいから、うわっ」

 

 逃げ出して奴隷達は武器を振り回しながらここから出ようとしている。僕もここから手助けをしてあげたいが【操闇】を使用中なので彼等に向かってここから祈る事しか出来ない。


 ごめんね、ただその代わりに契約書は処分するからさ。


 ぶんっ


 じっと窓から外を見ていると、あの男との繋がりが切れてしまったような感覚がある。早くも死んでしまったのだろう。これで魔法が使えるので現場を見に行こうとすると向うから部屋を叩きながら走ってくる男の姿が見えた。


「緊急事態だ。副隊長が書斎に火を付けたぞ。消化を……」

「静かにしなよ……炎闇」


 その男に闇の炎を纏わせ【全ての人間を仲間にしろ】との命令を出した。この魔法の指示はこれぐらいが限界だろう。


 僕も闇に身を潜めながら館から脱出し、一部の奴隷の後を追ったら奴隷達の前にあの男が立ち塞がっていた。



  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ