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第六十五話 僕は困惑する

 あそこの場所を村長に簡単に教えてしまった事に少し呆れていたラウラだったが、僕があそこから密かに持ち帰った魔石をそっとラウラに見せた。


「この魔石はどう思う」

「どうって、私には魔石の良しあしなんて分からないけど、何か気味の悪い魔石だね」

「気味が悪いかは分からないけど、何となく僕の魔力と似たような物を感じるんだよね」


 その魔石の大きさは掌に二つまとめて乗せられるぐらいの大きさでしか無いが、その存在はどんな物よりも目立っていた。


「値打ちがありそうだから持ってきたの?」

「違うよ、確かに価値があるかも知れないけどさ、何となくこの村の人には渡さない方が良いと思ったんだ」


 僕の勘でしか無いが、この魔石は盗賊の物では無くて、ワーウルフが持っていた物だと思う。少しだけ嫌な感じもするのでこれを売ったり渡したりするにしてもそれなりの人では無いと不味いと思う。


 この近くに魔石を鑑定できる店を聞いたところ。僕の条件に合いそうなのはこの先にあるベッソの街が一番いいらしい。そこにある教会はこの辺りをまとめている支部教会でもあるし、大きな武具店もあるそうだ。


「ベッソか~あそこに行くぐらいだったらどっかに捨てようかな」

「どうしてよ、そんな事をするぐらいだったら持ってこなければいいのに」

「だからさ、村の人達に変な影響が出たら嫌だろ、僕だったらこの魔力を押さえられるような気がしたんだよ」


 そうは言ってもこの辺りで捨ててしまうには何となく嫌だし、やはり先ずはベッソにある教会に持って行こうと思うのだが、そうなると街の中央まで行かないといけない。


 だとすると武具店に見せるか……呪いだったら対応できるのかな。


 これ以上此処で考えても仕方がないので僕達は村を出てベッソの街へ向かって行った。




「良い街ね、ちゃんと城壁もあるし、門番もいるじゃない」

「大きい街なのは良いんだけど」


 僕達の順番がきたので身分証を提示すると、ラウラは直ぐに許可が下りたが、僕は中々中に入る許可が下りず待たされている。



「ほらぁ冒険者じゃないからじゃないの、もうさぁ商人ギルドでもいいからそういった身分証を貰いなさいよ」

「そうなのかな……」


 僕みたいな子供がわざわざクルナ村からこの街に来るのが違和感があるらしいが、だったら質問をしてくれればちゃんと答えるのに誰も聞いてくれないからただ待たされている。


「君はレーベン君でいいんだよね」

「はい、そうですけど」

「魔法使いのだよね」

「まぁ使えますけど……」

「ワーウルフを討伐したよね」

「僕が出来ると思いますか」


 もう嫌な予感しかしないので誤魔化す方向に行くしかない。


「そうだよな、子供に倒せる魔物じゃないよな、けどな」

「どうかしましたか」

「書類には見た目に騙されるなと書いてあるんだけどな、それでもなぁ」

「この子がそんな事を出来ると本当に思いますか」


 ラウラが僕の代わりに答えてくれる。僕が言うよりも良いだろう。


「だよな、ごめんな坊主、お姉ちゃんと一緒に中に入っていいぞ」

「あ~よかった、ねぇお姉ちゃん」


 満面の笑みを浮かべながらあくまでも子供らしくラウラの腰に抱きついた。どうせセシリアが権力を使って門番に指示を出したのだろう。どんな内容か知らないが余計な真似をしてくれる。


「それじゃレーベン早く中に入るよ」


 わざと楽し気な声を出しながら進んで行くが、ちょっとだけ不審な雰囲気を醸し出している。僕も子供らしく全速力で街の中に入るが、何故かその速度は今までと違っている。


「あのさ、僕ってこんなに遅かったっけ」

「本気を出していないんでしょ」

 

 簡単に追いついてきたラウラに話し掛けたが、僕は行きを荒げているのに対してラウラの呼吸は全く乱れていない。


「いやっ何だかおかしいよ」

「そうかな、見た目通りだと思うけどな」


 言われてみると見た目的には問題は無いように思えるが、これでも鍛えていたのだからやはりおかしい。


 まぁそれは後で見てもらうしかない。

 


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