第六十四話 僕は疲れているのか
僕はセシリア達の方を一切振り向かずに進んで行く。セシリアを探す為とはいえ、あれ程の騎馬隊を用意出来るのだからかなりの力を持った貴族なのだろう。
もう会いたくはない。
すると、進行方向からラウラが馬に乗って来るのが見えたので、スケルトンから降りて待っていると僕に近づいたラウラがいきなり平手打をしてきた。
「いきなり何をするんだよ」
「黙って行くからでしょ、何かあったらどうするのよ」
「大丈夫だよ、僕が前にワーウルフを討伐した事は知っているだろ、それにラウラと一緒だったら余計に危ないじゃないか」
前に討伐した時はアリアナさんだけではなく、リュークさんやクルドさんとも一緒だったが、スケルトンと相殺という事でいいだろう。
「あの時は一人じゃなかったよね」
「けど、あの時も討伐は僕だけだし、スケルトンも一緒だよ」
「つまらない言い訳ね」
ラウラは不満があるようだが、それ以上は何も言わず一緒に村に戻って行く。
村の中は討伐した事が広まったのか、広場で宴会が催されるようだ。村長と同じテーブルに着かされもてなしの料理に手を付けようとしたが、お酒を一口飲んだ途端に僕の記憶は消えてしまった。
「此処は何処なんだ」
目を開けると薄暗くて知らない部屋の中央で僕は寝かされていたが、部屋の片隅に何かが丸まっているが、それは微かに動いている。
「あれは、何かな」
近づいて見ると、僕よりも小さなスケルトンが膝を丸めて身体を揺らしている。僕がその肩に触れようとするとスッと立ち上がり部屋を出て行った。
まだあったのか……。
少しするとそのスケルトンに連れられたラウラが部屋の中に戻ってきた。
「やっと起きたのね」
「どうして……それよりそのスケルトンはどうしたんだ」
「あぁこれね、いつものスケルトンだよ」
「へっ」
あのスケルトンは村に入る時に魔石に戻したのだが、ラウラは僕が眠ってしまってから村人に見せつけるように魔力を込めて地面に投げたらそれが現れたようだ。
「魔石の使用者が違うとスケルトンが変わる何てそんな事あるのか」
「あるから目の前にいるんでしょ、アリアナさんがした事なんだから深く考えない方がいいんじゃないの」
もしかしたら他のタイプのスケルトンも生み出せるのかも知れないと思って実験をしたかったが、僕のお腹はそれを許してはくれない。
「あのさ、食べる物はないかな、あの時は何も食べていないんだよね」
「そうか、お酒だけで眠ったからね、ちょっと待っててよ」
ラウラが食べ物を持ってきてくれる間に、ワーウルフと話たことを考えるがあれ程のワーウルフがこの国で生まれるのだろうか。
……そのための兵士や勇者だな、僕には関係ないし、出しゃばったところで子供の意見何てまともに聞いてくれないだろう。
「お待たせ~ちょっとそこどいてくれる」
ラウラが村の女性と共に料理を部屋の中に並べ始めた。
「ちょっとこんなには食べれないよ」
「良いんですよ好きなものだけ食べて下さい。一番の功労者が何も食べていない何てあんまりですからね」
「私も協力するからさ、甘えちゃおうよ」
ワーウルフから助けたあの二人とは違って此処の村の人達は本当に喜んでいてくれているようだ。少しだけ勇者の気持ちが分かるような気がしたが、だからと言って僕はバザロフの仲間にはなりたくない。
「すみません、有難くいただきます」
「ゆっくりと食べて下さいね、ただ子供なんだからお酒は駄目ですよ」
「はぁそうですね」
僕はお酒を飲んだのは初めては無く、何回か飲んだことはあるが確かにその時も少しのお酒で酔ってしまったが、一口で眠ってしまうなどと言う事は今まで無かったことだ。
僕は余程疲れていたのかそれとも体質が変化したのか判断がつかず、もやもやしていると、僕が目を覚ましたのを聞きつけた村長が入ってきた。
「いやぁ本当にありがとう。ただあれ程の珍しい魔物なのにこれしか報酬を渡せなくて申し訳ないね」
そう言いながら僕に袋を渡してきたが、何となく違和感があったので褒められた行動では無いが目の前でお金を数えさせて貰った。
「あの、やはり金額が違うじゃないですか、僕達は契約通りの金額でいいですよ」
余計なお金を返すとともにあの場所もついでに教えて置いた。あそこは盗賊の本拠地では無いので大量の財宝は置いていなかったが、それでもこの村にとっては良い収入になるだろう。ただ、ワーウルフに感染させられた盗賊の仲間がまだ他で生きているのなら、厄介な事になるがそれは村長の判断に任せようと思う。
「本当にいいのかね」
「ええ、僕には興味がありませんから」
僕はそんな事より、直ぐにでも治療師に僕の身体を調べて欲しいので大きな街に行きたい。




