第六十二話 僕の身体がおかしい
わざと日当たりが良くなる場所を選んで潜ったので、朝日が昇ると共に地上に弾き飛ばされた。
直ぐに侍女が僕の事に気が付き、睨みながら走ってくる。
「ちょっと、貴方に見張りを頼みましたよね、それなのに地下に隠れていたのですか」
「隠れていた訳では無いですし、何かが近づくと僕が分かるようにしてあったのですが、何も無かったですよね」
別に喧嘩を売っているつもりでは無いのだけれども、どうもこの人達と上手くいきそうもない。
「何も無かったですけど、私達が探したと時に居ないのが問題なんです。そんな変わった方法をとるなら最初に言ったらどうなのです、貴方のせいで私達は一睡もしていないのですよ」
「僕の姿が見えないように行動していたのはあなた達ですよね、もういいですか、僕に付いて来るのであれば守りますけど、嫌なら勝手にして下さい」
近くの井戸で顔を洗った後で、一言だけ声をかけてから森の中に入って行く。気にしないようにしながらも彼女達が気になるので速度はかなり遅くしている。
こればかりはどうしようもないな、せめて明るい内に街道まで出れればいいんだけど。
「いい加減にしなさい。他に道はないのですか」
道なき道なのでセシリアが怒鳴ってきたが、そうは言われても僕は来た道を戻る事しか出来ない。
「僕にはこの道しか知らないけど、あなた方はどうやって連れて来られたんですか」
まともな道を知っているのであればそっちに行っても良いのだけど、彼女達は中々答えを言おうとしない。
「眠らされていたので分かる訳無いでしょ、ただ私達を運んだんですからまともな道があるに決まっています」
確かにその考えは一理あると思うけど、この近辺に道らしいものはなく、下手に探すとそれだけで余計な時間を使ってしまいそうだ。
「そうかも知れませんが、この辺りには無いですよね、ゆっくりでいいですから歩いてくれないですか」
再び歩く出し暫く歩くと僕は疲れてきたのだが、後にいる彼女達は平然と歩いているように思える。
何が起こっているんだ。僕は見た目よりも体力があるはずなのにどうしてあっちは平然としてられるんだ。彼女達は魔法でも使っているのだろうか。
「君さぁ大丈夫なの、無理しないで休憩したらいいじゃないか」
「僕は大丈夫ですが、あなた達こそ平気ですか」
どう考えても僕の方が体力を失っているがこんな所で弱みを見せたくない。そして、その時に気が付いてしまったのだけど、僕はもっと進んでいる様に感じていたが実際はそうでは無かった。
「君は口だけは達者なのだな、どうせあのスケルトンにでも担がれて来たんじゃないのか、そんな事だから歳の割に体力が無いんだ」
「お嬢様にそんな情けない姿を見せるなんて恥だと思いなさい」
二人してここぞとばかり攻めてくるが、自分の身体に異変が起こったとしか思えない。体力が無ければ闇魔法は使えないはずなのに使えると言う事はどういう事なんだ。
歩きながら身体の中に魔力を流して異常が無いか調べるが、特に異常が無いように思えるのだけども本当にそうなのか自信がない。
んっ僕の魔力の底は何処なんだ……。
僕の魔力がどの程度あるのか図ろうとしたが、いくら探っても魔力の元に辿り着かない。
どこかに漏れているのか……それにしてはちゃんと魔力は残っているし……こんな事は戦っている最中に調べる事は出来ないぞ。そうなるといつ魔力切れを起こすか分からない。
……まさか自分でも分からない位に魔力が上がっているのか。
「すみませんがちょっと考えがあるので、先に進んでくれますか」
先頭を歩くとなると今以上に歩きにくくなるので、彼女達は文句を言いたそうにしていたが、セシリアは文句を言わず進みだした。
「何か考えがあるんだろうね」
「ええ、ちょっと協力して下さい」
魔法に頼り過ぎだと言われてしまうかも知れないが、このままだととてもでは無いけど陽があるうちに街道には出れ無いだろう。




